昔々、あるところに竹取翁………………とは、とても呼べない美丈夫がいました。
大層美しい青年の名は敦賀蓮。
過去になにやらあったらしい彼は世の美姫から寄せられる秋波にも応えずに似非紳士的な態度で内なる闇を隠しながら、そこそこ平穏にひとり暮らしておったとさ。


ある日、蓮が竹を取りに行くと1本だけピカピカと光輝く竹を見つけました。

「どーでもいいけど、俺なんで竹なんか取りに来てるの?………そもそも竹が光るってどうなってるんだ?ケーブランプ?でも、竹って高温で炭化させないと通電性がなかったよな。」

いや、そんなことは深く考えなくていいんで竹切ってください。

「はぁ……………まぁ、いいか。」

蓮が、その光輝く竹を切ってみると中からそれはそれはかわいらしい女の子が出てきました。
女の子の名は、かぐや、ではなくキョーコ。かわいらしくにっこりと笑うキョーコを見て、蓮は無表情でかたまるのでした。


そう、そのかわいい女の子と出逢った時、人嫌いなように誰にでも浅く均等にしか付き合いのなかった蓮の初恋がはじまったのです。


蓮はキョーコを家に連れ帰りそれはそれは大事にしました。

「キョーコ、駄目だよ。一人で家から出るなんて危ない。キョーコはかわいいんだから人さらいとかに会ったりしたらどうするの?」

「大丈夫ですよ?こんな地味な女、誘拐しませんよ。それより、なんで家にまともな食糧がないんですか!買い物に行かないとごはん作れないじゃないですか!!」


そんなこんなで、すっかり礼儀正しく謙虚で気配りの出来る料理上手で優しく美しい女性へと成長したキョーコは、たくさんの求婚を受けるのでしたが
「お嫁さんになってほしかったら蓬莱の玉の枝か龍の珠か火鼠の皮衣か燕の子安貝を持って来てください。」
と無理難題ではねのけ、その上
「例え、蓬莱の玉の枝と龍の珠と火鼠の皮衣と燕の子安貝のすべてを持って来たとしてもキョーコはわたさない!!」
と、蓮が闇の国の蓮さんになって馬の骨を撃退していたのでした。




そして、ある晩のこと。
キョーコが月を見ながら泣いていました。蓮が心配して涙の訳を訪ねると
「次の満月の晩、月からの迎えが来るので月に帰らなくてはいけません。……………でも、敦賀さんをおひとりにしておくとお酒ばっかりでちっともお食事を取ってくださらないので心配で。」

なんと、キョーコは月の住人だったのです。月に帰るために純潔を守らねばならず求婚も断り続けていたのです。
そこまで話したキョーコは怨キョが歓喜して踊り出るのを感じ、青ざめてガクガクと震え出しました。

「ふーん……………キョーコは、俺を置き去りにしてひとりにして月に帰るつもりなの?」

隣の蓮がいつの間にやら大魔王と化していたのです。

「そんなこと……………許せるわけないだろ?」

にっこりと笑いながら告げると、怯えるキョーコをひょいっと姫抱きに抱き上げました。


「純潔を守ってなければ月に帰れないんでしょ?だったら、俺が今すぐに…………どうにかしてあげる。」

蓮がキョーコの耳もとで妖艶に囁くと、キョーコが真っ赤になってわたわたと暴れだします。
そんな抵抗など物ともせずに蓮はすたすたと寝室にむかいます。


「キョーコ、月には帰らせないけど、一緒に天に昇ぼるような心地にしてあげるからね?」

「いーやぁーーー!!こんなお話じゃなーーーーい!!」





終わっとけ。