猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。から派生する続きのひとつとなっております。

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「駄目だよ。もうこれはふたりだけの事じゃないんだから……解ってるだろう?」



笑みの消えた真剣な強い瞳と、言い聞かすように諭す低い硬い声。
甘さなんて少しもない、誤魔化しを許さぬ……
まるで事務的に処理を下すかのような、頑ななひと。
しかたがないのかもしれない……だって……





朝、私のベッドの隣にいたのはこと慣れた遊び人。
「おはよう。身体、大丈夫?」
なんて背中がぞくりとするような掠れた声で囁いて、優しく髪を撫でて労わるみたいにふわりとその裸の胸に抱き寄せようとする腕。
甘やかに、でも少し照れたみたいなやわらかな笑顔で。
頬が焼けたみたいに熱くなるのが自分でもはっきりと解ってしまった。
その目に毒な程のひとの腕に囚われてしまうのが恐くて、シーツの上を後ずさるように逃げようとした私へと
「どうしたの?あぁ、お風呂入りたい?抱いて運んであげようか?」
などと、軽く軽〜く言って仕舞える場慣れた悪い男。
「い……いいえっ!!まさかっ!?敦賀さんにそんな介護みたいな事をさせる訳には……きゃっ!?」
悲しくなるみたいな貧相な身体を掴んだシーツで隠すようにして、朝から妖しいような気配を漂わせる敦賀さんのいるベッドから床に足を降ろして、逃亡を図ろうとした筈だったのに……
身体の内側からぬるりとなにかがふとももへと伝い降りるあらぬ感覚に、驚いて思わずに小さく悲鳴をあげてしまった。
何事かと目をやると、脚をつたう……
驚きにカクンと足が折れて、ペタンと床のラグの上へと崩れ落ちた。
咄嗟に敦賀さんの目から隠すように、シーツを伸ばすようにして足を覆ったのだけれど、恐る恐るに見上げた彼は……見逃してくれてはいないと物語るような真剣な表情をしていた。
まるで蛇に睨まれたカエルみたいに、血の気が一斉に引いたようで背中にじったりと嫌な冷や汗を感じる。
そんな私の前に、向かい合うようにベッドから降りて来たのは……甘さのカケラもない、すっかりと冷え切ったように豹変した彼だった。




私たちだけの問題ではないと……そう言って、大丈夫です!敦賀さんにご迷惑を掛けたりなんてしませんと、そう訴えようとする私の言葉を断ち切るように遮った厳格な声。
「…………もちろん、出来る限り最上さんの意向に沿うよう尽力するし、書類や手続きの手配や費用なんかも全部俺が持つよ。必要なら専門家の立ち会いも入れて……だから」
彼は、真摯に私へと望んだのだ……彼の言う然るべき書類への署名捺印を。
ついこの前まで敦賀さんと共演していたドラマ、弁護士事務所を舞台とするそのドラマの為に叩き込んだ法律関係の知識が頭を巡る。
そうね……『敦賀蓮』だもの。
事務所の稼ぎ頭で看板俳優、スケジュールや契約なんかにぎっちりに縛られたお人。スキャンダルなんて真っ先に芽を潰してしまわないといけないし、もってのほかだ。
彼につきまとったり責任を押し付けたりして、迷惑を掛けたりなんてしないと……そう誓約する念書に一筆をと、敦賀さんが求めるのももっともな事だろう。
頷くより他の選択肢などない……だって、彼は言った、私の意向を出来る限りは汲んでくれると。




私の足を伝った、白濁。
その意味を、もたらすかもしれない可能性を知らずにいれるほど幼くもない私。
本当は、解ってる。
母からの愛を知らずにいた私が……
ひとりで母親になれる筈もひとりで育てる自信なんて、持てるはずもないって。
でも、まだ確約もなく……それでも、私のなかにこのひととの小さな命が芽生えている可能性が否定できない今……
狡いと解っていながらも。
どうしても、それを消してしまう事を赦せなかったのだから。
だから…………どうか。
コクリと頷いて、認知も養育費も要らない……必要なら芸能界から離れてもいいだからと、願ってしまおうとした私に彼は言った。
お願いがあると





「……DNA鑑定をさせて欲しい。」





一瞬、何を言われているのかわからなかった。
だって、そんな心あたりなんて昨夜の一晩にしかなくって……そんなお子様なままでいた私を優しく心遣うようにしてくださったのだから、きっと敦賀さんも気色取ってくれているのだろう感じ取れていたから……
意味を図るように見上げた先には、私をまっすぐに見るその場しのぎを赦さぬようなどこまでも真剣な、黒い瞳。




あぁ、そうか。
このひとは…………私がこれから他の男と夜を過ごして……その因果を、敦賀さんとの子だと偽わるかもしれないと危惧しているのか…………
心臓が小さく縮んでしまったようで苦しくって、シーツを縋るように掴んだ手のひらに爪が食い込むのを感じる。





私も、だけれど……
貴方も、充分に…………冷徹なひとですね。






無意識に強く噛んでしまった唇が痛くって
なんだか無性に、嗤ってしまいたくなった。






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思い出したよーに、久しぶりに書いたいろんな敦賀さんシリーズがこのありさま。
ヘタれがかっこよくに口説くのが書けなくって、逃避した結果がコレだよ!



| 壁 |д・)
キョーコさんのなかで、冷たい男まっしぐら爆走中の蓮さん。
一応、こっから挽回するつもりだったらしいんだけど……どーするつもりなんだろう?
結構自分でも謎です。
(°Д°;≡°Д°;)



さて、これ、ちゃんと次がある……と、いいですねぇ?



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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