見通し甘々計画性ナッシング猫木ですとも!
はい、ごめんなさい。
この通り前中後編でまとめきれなくって、なナンバリングですとも。
_:(´ཀ`」 ∠):
 
 
無駄に伸びたわりに甘さもときめきもなく、なんだか暗い展開と成り果てましたが……
それでとOK大丈夫☆なお方は、どうぞお付き合いをばー。
 
 
 
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精緻な飾り彫刻の施された物書き用のビューローの美しい木目の磨き上げられた天板の上、ことりと羽根ペンが投げ出される。
「はぁぁ……」
吐き出されたのは、確かなるため息。
寝室へと続く扉と反対方向の壁にある背の高いアンティークな時計へと目をやれば、もうすぐこの部屋のもうひとりの主が帰ってくるだろう時間。
眉を顰めながらため息を吐くだなんてわかりやすくも悩ましげだった様子の彼女は、はっとそれに気付くと今の今まで羽根ペンを滑らせていたそのリストをそっとビューローの引き出しの最奥へと仕舞い込む。
まるで、後ろめたいものでも隠すかのように。
 
 
 
 
 
豊かなるヒズリの国、この国に新しき若き王と王妃が誕生してより8年の月日が流れた。
気品ある微笑と煌びやかな装飾の下、どろどろした欲望にざまざまな策略、そして噂に嘘や罠が渦巻く伏魔殿のような王宮にて、ふたりは育った。
それは、決して平坦でも平穏でもなく酷く崩れ易い砂の道を歩むような、一瞬の油断が時には命の危険さえ近くあるような張り詰めた生活。
けれど、幼きながらもふたりは学び、信頼のおける臣を集め、時には挫けそうになりながらも力を蓄え自らの足場を作り上げた。
幼いと侮られる事も多かった若王。だが、今では確かなる外交力に統治、そして亡き先代王譲りのカリスマ性を持つ文武両道の賢王と讃えられる程。国は富み、家臣や民からの信望も厚く、国外からも一目を置かれている。
そう。もはや、ヒズリの太陽たる王の座を揺るがすものなどないと、そう思えた。
その証拠に、余りにも若すぎた継承をした王と王妃を導く為にと王宮に留まっていたタカラダ翁も、一年ほど前に王の側を降り、自らの役割は終わったと領地へと戻り楽しげに人騒がせ過ぎる隠居を果たしてしまっている。
王はタカラダの後ろ盾を必要としなくなった……その筈なのに、未だに王の隣の席にキョーコは座ったまま。
時の流れとは、平民だろうが王様だろうと残酷なまでに平等なもので。
当然、キョーコとクオンとの歳の差が縮まったりなどする筈もなく。
貴族令嬢としても歳若い王家の花嫁となったキョーコも二十歳となった。
花盛りのうら若き女性ではあれど嫁入りしてより8年の月日が流れ、厄介な権力を持つ保護者の目も遠く離れたとなれば…………耳に聞こえくる声も多い。
『はやく世嗣を』『次代を繋ぐ太子を』
さも国家の為と、そしてお約束のように忠臣の顔でもって続けるのだ。
『我が家の娘がデビュタントを迎えまして。親の欲目ながらも美しく健やか娘で……』
娘を第二妃に、もしくは愛妾としてでも、良いのだろう。娘を王の側へ引き合わせろと、貴族らしい遠回りな物言いと何よりもその眼が語る。
王の子を産めば国母となり、形だけの年上王妃よりも権力を持てる、いや、子の産めないままな年上の王妃など容易く追い落とせようと。
あぁ、それとも。
役目を果たしたのだから逸早く自ら王妃の座を降りろと、そしてせめてその前に自分の娘を王の側へ推薦し推し上げろと、そう言いたいのだろうか?
「……ふぅ」
ヒズリの太陽の対である王国の月たる若き王妃は、再度その唇から悩まし気にため息を吐いた。
ガラス格子の窓の外には薄曇りに疎らな星の浮かぶ夜の空。
王と王妃の為の私室の重厚なる扉の外、微かな足音にキョーコは今一度ビューローの引き出しがしっかりと閉ざされている事をチラリと確かめてから、立ち上がった。
政務を終えて部屋へと帰って来たる、彼女の夫を出迎える為に。
 
 
 
 
 
従事達によって開かれていた扉が閉ざされ、再びこの空間がプライベートなものへと切り取られた、その瞬間。
酷く美しいが冷たく硬い宝石のようだった翠色の瞳がふわっと柔らかく解ける。
その瞬間が、キョーコはとても好きだった。
「おかえりなさいませ、陛下」
新婚当初、目を合わせるには屈むか視線をだいぶと下げなければいけなかったけれど、今では少し見上げるようになっていた。
15歳となったクオンは愛らしい少年の域を超えようとするかのごとくしなやかに成長し、キョーコとの身長差もはや逆転していた。
後ろでひとつに括られ背中へと流れる金色の髪。剣を取るようになり引き締まった鍛えられた身体に両親譲りの端正な顔立ち。
透き通るようだった声も低く甘くなった。
賢く麗しい国王と、クオンへと熱い恋の眼差しを向ける令嬢はヒズリの国内だけに留まらず、周辺国の令嬢や姫からも彼の側へ侍りたいとの声も多い。
…………もう、キョーコだけのかわいいわんこで弟だったクオンは遠い過去の事。
きっと、キョーコの耳に入るよりずっとずっと多数のキョーコ以外の、クオンに相応しい妃をと彼に直に望む声がある筈で。
なのに。
幼かったクオンを安全に玉座へと据える後ろ盾を得る為に、国の為民の為にと結ばれた政略結婚。それも、王としての地位を安定させた今のクオンには必要なくなった。
そう、キョーコには思えるのに。
彼が望むならば、王妃の座から身を引きタカラダの祖父の元へと戻り、王宮から離れようとも臣としてクオンの為に身を尽くそうと。キョーコは、密かに心を決めてはいるのだけれど……
未だクオンから離縁を求められないまま。
わんぱくな仔犬のように、弟のように、キョーコに懐き後を追っていたクオン。
まだ……まだ、女性として愛しいと想える相手を見つけていないだけだろうか?
それとも、決して低くはないキョーコの王妃としての能力を惜しんでだろうか?
けれど、いつか……そう遠くない未来にクオンは彼に相応しい恋する相手と出会うのだろう。
 
 
 
 
何があろうとも……姉のように、家族のように、クオンの隣で護り支えようと、ふたりきりのあの夜にそう誓った筈なのに。
 
 
 
 
どうしてだろう?
クオンが心から愛しいと想う女性と手を取り合い共に幸福を紡ぐ、そんな未来を頭に思い描くと……
 
 
 
 
 
 
 
キョーコの胸は酷く酷く、きしりと痛むのだった。
 
 
 
 
 
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やっとキョコちゃんの身長に追いついて、ほんのちょっぴりとだけ追い越したわんこ王さまですよ。
あと、髪も長かったりします。
( ´艸`)


次で終わると思いますのですよ!
 ((((;゚Д゚)))))))
 

 
次回、夜の寝台にて。←のーぷらん
 


↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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