仔犬な要らないオマケ編第三弾☆
未成年飲酒な表現が出て来ますが、法で飲酒年齢を定められてないお酒=腐らない水的な文化だと設定しております故、どうぞなまぬるーぅく読み流していただければと。
 
 
 
 
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夜、寝る前に一杯の紅茶とちょっとした語らい。
それが習慣になったのはいつからだっただろう?
豊かに富めるヒズリの国。その頂に君臨する輝ける太陽。
誰からも傅かれてる国王。王宮の一室にて、手慣れた手付きでもって、紅茶をたてていた。
はじめは王がなさる事ではないと嗜めていたキョーコも、二人きりのこの部屋でキョーコへだけなのだからとわがままをこねて納得させた。
ふくふくとした茶葉の良い香り。
椅子に座るキョーコの視界から隠すように背を向けて、クオンはカップへ琥珀色の液体を数的程垂らす。
 
 
 
ごめんね?と、いつも通りにそう心の中でひとり嘯きながら。
 
 
 
王族高位貴族としての教育として毒殺対策に毒に身を慣らすと言うものがあるけれど、それと同様、いやそれ以上に嗜むかのように慣らすものがある。アルコールだ。
王侯貴族ともなれば、一度口にしたものの取り返しは付かない。
よって、自分を保っていられる酒量を身体に叩き込むように学ばされる。
…………その筈が。
ゆらゆらと、猫足の長椅子で紅茶を飲んでいた王妃の頭が揺らぐ。
しゃきりと伸びた背筋の綺麗な座り姿勢もふにゃりと、いつもより力が抜けてしまっている。
眠たげに伏せられてゆく睫毛。
「もう寝ようか?」
椅子から立ち上がり、そう言って手を差し出すとうつらうつらとしながらも白い手が素直に乗せられる。
寝台までほんの少しの移動。半分くらい眠りの中に誘われていそうな様子でありながらも、エスコートするクオンの隣を歩く王妃。
少し見上げれば綺麗なフェイスラインとほんのりと赤く染まった頬。
シーツの上へと身体を横たえたキョーコ。すぐにすぅすぅと健やかな寝息を立て、深い深い眠りへと落ちてゆく。
いつものように。
 
 
 
 
 
それに気付いたのは、ほんの偶然。
底のない桶だなんて言われていた前王の血のおかげか酒にめっぽう強いクオンと違い、キョーコはアルコールに弱くもないが強くもない。
けれど、相性が極端に悪かったのだろうか。
葡萄酒やエールを好むヒズリの国では滅多にお目にもかからぬ貿易ものな酒精のきつい蒸留酒。
その芳醇な香りを寝酒がわりなつもりで、就寝前の習慣になっていた紅茶へと、ほんの少し加えた。寛いだプライベートな私室の雰囲気に気が緩んでいたのか、蒸留酒入りの紅茶のカップを自分ではなくキョーコの前に置いてしまったのは、ほんのそんな偶然の手違いからだった。
そして、クオンは気付いてしまった。
葡萄酒の10倍も強い度数のせいか、ほんの数滴の蒸留酒入りの紅茶を飲んだキョーコは、敵襲を危ぶむいつもの浅い眠りと違って、深く深く眠りの中へ囚われてしまうのだと。
そう。朝まで、何をしようと決して目醒めることなく一晩中。
 
 
 
 
ギィッと、寝台が軋みを上げる小さな音。
年上の妻のかわいい寝顔を愛でるように眺めていたクオン。
シーツの上に流れる艶やかな髪を撫で指に絡め、そして、眠る王妃の花のような唇へとくちづけた。
慣れた様子で。
触れ合わせ柔らかく食むと、その先を求めるようにキョーコの唇が薄く開く。そんな愛らしさにクオンは触れ合わせたままの唇を満足気に緩ませると、くちづけを深くしてゆく。
「っ……んぅ…………」
差し入れた舌を厭うことなく、それどころか鼻に抜けた甘い声と応えるように舌を絡ませて来る甘さが男をますます調子づかせる。
夜着の裾を掻い潜った手が滑らかな肌を暴いてなぞる。
「んっ……っやぁ」
肌を這い上がる指の感覚にだろうか、それとも深く塞がれたままの唇の息苦しさにだろうか、深い眠りの中、むずがるように身を捩り触れ合う唇の僅かな隙間にそう声を上げるキョーコ。
「大丈夫。最後までしたりしないよ?……まだ」
囁くような声があやすように優しげに告げる。
さらりと、首の後ろでひとつに束ね背中へと流していたクオンの髪が重力に従い肩から流れ落ちる。婚姻を結び王座につくと同時期から伸ばし続けた金糸の髪。
 
 
 
 
その髪に願掛けたクオンの願いは、まだ叶ってはいない。
 
 
 
 
あれはいつの日だったか……
遠い遠い昔。まだ、彼女へと向ける感情が親愛や友愛なのか、どろどろとした執着を孕む恋慕なのかもわからないような幼い子どもの頃。
タカラダ邸へとおしのびで連れて来てもらっていたクオンへ、お爺さまからいただいたのと買ってもらったばかりの絵本をお姉さんぶって読み聞かせてくれていた。
お姫様と王子様が苦難を乗り越え、手と手を取り愛を告げるお約束なハッピーエンド。
そんなありふれた物語り。
『いいなぁ。キョーコも王子さまとけっこんできるかしら?』
羨むように彼女が零した幼い願い。
夢見るようにキョーコが熱心に見つめていた絵本のページ。
ガツンと、頭を叩かれたみたいな衝撃がクオンを襲った。
クオンはこの国の太陽たる王の子。紛れも無く正真正銘な王子さまだ。
けれど、きっとお姫様に自分を投影しているのだろうキョーコが見つめていた王子様はクオンとは別人で。
むぅっと、唇を尖らせたクオン。仔犬のようにまっすぐな幼さでもって絵本の中の王子さまを指差して問うた。
この王子のどこがいいの?と。
『王子さまはやさしくて背が高くてかっこいいの!』
キラキラと輝く瞳ととびきりの笑顔での答え。それを肯定するように、絵本の中の王子さまはお姫さまが見上げる程の背丈で。
王子なのに、キョーコよりも小さなクオン。
いつか……いつか、絶対にキョーコの背を追い越して彼女の『王子さま』になりたいと、そう願ったのだった。
けれど、そんな幼いクオンの願いを嘲笑うように悲劇は起こった。
唐突に舞い込んだ両親の訃報。そして、畳み掛けるように決められた唐突な政略結婚。
まだまだ、キョーコの背に並べもしないままで。
心の整理も追い付かぬまま、追い立てられるように挙げられた戴冠と婚姻の式典。
その夜に、護るように抱き締めてくれたキョーコの腕の中でクオンは涙を流し、そして謝罪した。
両親を失った悲しみと背負わされた責任の重さ。
理想の王子さまと結婚したいのだと願っていた彼女。
無理矢理に摘み取られただろうその夢と、それでも、キョーコを逃してあげれないのだと嘆いて。
 
 
 
 
 
 
王の務めとして学ばされた閨事。
まだキョーコの王子さまの条件も満たせてやいないのに、身体の成長とともにどうしようもない欲望も芽生えて。
けれど、他の女など触れたいとも思えなくて……
そんな時、気が付いてしまったキョーコを深い眠りへと搦めとる異国の酒。
かけがいのない特別な愛しい獲物。婚姻を結び自分の妻となった彼女。
男として見てもらえるまで全てを奪ったりなどしないから、少しだけ触れさせてもらうくらい、我慢に我慢を重ねているのだから許してやもらえないだろうか?
まだ、彼女より少し小さな、けれど仔犬とは言えないような少年の域を脱し始めたクオン。
悪い狼のような表情でもって、今宵も愛しい眠り姫を腕に捕らえながら嘯くのだった。
 
 
 
 
「ごめんね?逃してあげるつもりは……ないんだ。」
 
 
 
 
 
 
彼女の王子さまになれるその日を願って。
 
 
 
 
 
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かわいい仔犬だと思っていた男の子。実は結構仔犬サイズなちんまい頃からやばい執着をばりばり持った危ない狼だった的な?
 
 
 
いや、リスト片手にキョコさん追い詰めるクオンくんの落ち着きっぷりやら色香やらを考えると……真っさら童貞くんにはちと難しいのではないかと。
あと、かわいいキョコちゃんと毎日おんなじベッドにいてずっと我慢できるものか?と。
撫でるくらいすんじゃね?なーんてね。
かわいい話はどこへやら?まぁ、もとがぇろ系まんがから故に。
 
 

 
年内になんとかむりくりにねじ込みましたっ!
皆さま、良いお年を☆
゛♪(o´・ω・)人(・ω・`o)♪゛
 
 
 
↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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