仔犬陛下と年上王妃なお話の要らないオマケ第2弾☆
鮫さんなお話〜
(๑╹ω╹๑ )
 
 
 
 
✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄
 
 
 
 
 
目に入れても痛くない。
まさに、溺愛。
まさか自分が、こんなにも制御出来ない感情に溺れ振り回されるだなんて思ってもいなかった。
かわいいかわいい愛し子が、どうしてもと願ったのだから…………
 
 
 
叶えてやりたい。
彼の願いは、ただそれだけだったのだ。
 
 
 
賜った領地から離れた華やかな王都。
とある目的を持って、彼はここへと来ていた。
キラキラとした瞳で自分を見上げ、愛らしい声でそう強請られたのだ。
かわいいかわいい愛し子に。
鍛え上げられた肉体に厳しい顔には額から頬へと刀傷が走る。傍目にも歴戦の強者だとわかる見た目をした彼。
一代限りの貴族籍。そんなしがない男爵系の5男として生を受けた。
長男以外の男手などスペアのスペアな働き手。
そんな彼が生きる為の糧として選んだのは傭兵という職業だった。
小難しく戦略を張り巡らせるよりか、敵へ突っ込み叩きのめす。そんな泥臭いような戦い方で。
けれども、誰よりも先に先陣を駆ける勇姿と一度身内へと受け入れた相手なら死んでも裏切らない真っ直ぐな性根により多くの兵どもに慕われた彼。
数々の戰場を渡り歩き戦功を積み上げ成り上がってゆき、名のある傭兵団をまとめ上げる長となった頃には、爵位を賜り軍属し子爵令嬢を妻とした。そして返り血で赤く染まるその姿から『赤い鮫』との二つ名でもって恐れられる将軍へと昇り詰めた。
年老い、第一線は退いたものの、国防の要たる西部の砦を要する領地をいただく辺境伯へと封じられた男。
そんなムラサメ・タイラと妻との間には4人の子を授かったが、その全てが男児で。後継の長男はもとより、それ以外の子も皆成長とともに伴侶を迎え、孫の数も片手では足りない程。
満ち足りた人生。その終焉に近付くこの年になって、長男夫婦に末の子が誕生した。
それは 、タイラへ衝撃を齎す者であった。
タイラは知らなかったのだ。
自分と血の繋がる女孫のその余りの愛らしさを。
孫は数あれど、そのどれもがやんちゃくれな男の子だった。そんな中、ぽつんと産まれたたったひとりきりの孫娘。
マナカと名付けたその孫娘をタイラはたいそう溺愛した。
強請られるがままに何でも買い与え願いは全て叶え甘やかした。
すくすくと健やかに美しく成長したそんな孫姫が、デビュタントで美しい王に一目で恋に落ちたのだと言う。
『お爺さま、私、クオン様の妃になりたいの!』
許されてもないままで王名を呼び、そう願った孫娘。
その願いを叶えてどこが悪い。と、そうタイラは考えた。
侯爵家を後ろ盾とする王妃。だが、辺境伯はその侯爵家と同等の力を持つ家柄だ。それにマナカは整った愛らしい顔に見事な榛色の髪と成長途中とはいえ身体つきも悪くなどない。
王妃を廃し、正妃として迎えろと迫るは難しくとも……年上の、それもどこか印象に残りづらいあの王妃だけを妻に持つ年若い王のことだ。第二妃としてでも送り込めば、たちまちに恋に落ちてその寵愛はうら若く愛らしいマナカへと傾く筈に違いないと。
そうでなくとも、かわいい孫娘の為だ。辺境伯の地位と将軍の強面でもってちょいとばかり圧を掛けるように凄めば……戦経験も少なき年若い王のことだ。
きっと孫娘を妃へ迎えるだろう。
そう信じたタイラ。王へと孫娘を妃にと信書を送った。色良い返答がなくとも、繰り返し繰り返し何度も。
名高い画伯を招き描かせたマナカの姿絵を送っても、妃どころか孫娘に逢おうとさえしない王。
それでも、かわいい孫娘はまだ王の妃として城へ上がれないのかとせっついてくる。
ただでさえ、思慮深く考えるなどが苦手でせっかちなタイラである。
王に直接物申してやる!と、愛馬に跨り王都へと乗り込んだのだった。
 
 
 

 
ヤバいッ!!!
久方ぶりのこの感覚。まるで、敵陣の真っ只中にひとり取り残された時のような……いや、それより酷い。
何度顔を合わせ孫娘を妃に進めようが、のらりくらりとかわし茶会の誘いにさえ乗らない王。
その余りに釣れない態度に腹を据えかねたタイラが、つい……王妃も同席のこの席にて
「王よ、新たな花を愛でらではいかがか?常におそばにある花もよろしいでしょうが、また違った新たなる若き花も、王のためと美しく咲き誇っておりますゆえ……」
貴族的な例えを用いて。王妃以外の姫にも目を向けろと。
その瞬間だった。
ぶわっと全身の毛穴が逆立ち冷や汗が滲む。首筋に冷たく鋭利な刃が当てられているかのような、そんな感覚。
硬直するタイラを睥睨する翠の瞳。
「わたしの花はただひとつ、それだけでいい。」
小さく平坦な冷えた声。だが、断言するかのような強さを孕んでいた。
いくら賢王と讃えられていようと……息子より年若い若王と、どこかであなどっていた。
いくつもの激戦を渡り歩いて来たタイラの本能が撤退を訴えていた。ここて引かねば命が危ういと。
気がつけば、口を閉し王へと首を垂れていた。
すごすごと尻尾を巻くように領地へと戻った赤い鮫。
 
 
 
 
彼は、孫娘かわゆさ故に強く言い聞かせる。
王の妃となるのは諦めなさいと。
目に入れても痛くないまでの愛しい孫娘。あの恐ろしい王の隣へなどやらせるものか!!と。必死なまでに。
あぁ、だが、けれど……
彼の溺愛する孫娘もまた、思い込んだら一直線なムラサメの血を引く娘。
「お爺さまには頼りませんわ!!」
と、なんと自ら王都へと向かってしまったのだ。
今から追いかけるか?いや、だが、確実に王の不興を買った自分がおめおめとまた顔を出す方が火に油を注ぎかねない。
どうにも手が打てぬまま、手をこまねいている内に、かわいい孫娘は領地へと戻って来た。
 
 
 
 
そして、彼は困惑する。
 
 
 
 
邸宅を飛び出した時より随分と高いテンションで戻ってきたマナカ。
クオン王にすげなくされた筈な孫娘。なのだけれど……
「漆黒の王妃さまぁ〜❤︎」
ふにゃふにゃと、すっかりと骨抜きにされた様子なマナカ。
王を慕っていた過去など何処へやら?「キョーコお姉さまのおそばに参りたい」だとか「わたくしは王妃さまの子ネズミ。どうぞ可愛がってくださいませ〜」と、その恋慕の対象はすっかりと熱烈なまでに、あの年上の王妃へともぎとられたようで。
 
 
 
 
あの王が王なら、その妻の王妃も王妃なのか?
孫娘の様子から見れば、どちらかと言えばあの大人しく見えた王妃の方がタチが悪いのかもしれない……!?
 
 
 
 
恐れるものなしと鳴らした筈の老将。
 
 
 
 
 
 
今の今ないまさらのこの歳になってまで、戸惑いを覚えたのだった。
 
 
 
 
 
✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄
 
 
 
クオン王に纏わりつくのへのジェラシーから怨キョちゃん出してちょっと脅したてもりが、すっかりとキョコさんな虜になっちゃった愛華ちゃんと、そんな孫娘の変貌ぶりに頭を抱えるお爺さまな村雨くんとか、いかがでしょ?←なにがだろう?
きっとキョコちゃんに構ってもらおうとするマナカちゃんをクオンくんはこっそり目の敵にして、お爺ちゃんなムラサメくんにその八つ当たりが飛んでったりするんだろうなぁ、と。
壁|д')
 
 
 
次回→おまけ話ラスト、仔犬さんなお話。かな?
 年内には終わらせたいなと。
 
 
 
↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


web拍手 by FC2