この前の開幕いきなり婚約破棄なテンプレものがやってみたかっただけなお話、続きが気になるとのお声をいただいて、つい。
けど、あんまり話進んでやいないんですけど……←無駄設定にょきにょきゆえに
 
 
猫木のところでは、パラレルになると途端に性格が悪く酷いやつ設定にさせられがちな松くん。
このお話に松くんも酷いです。
それでもなんでも大丈夫なお方さまは、どうぞお付き合いをばー!
゛♪(o´・ω・)人(・ω・`o)♪゛
 
 
 
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「あぁ、私、死ぬのね。どうせなら…………この国から出て死にたかったな」
 
 
 
 
緊迫した空気の中、ゆったりと、諦観さえも乗せた呟きを口にしたひとりの少女。
そして、彼女の前には大きな……そう、ゆうに彼女の数倍程の背丈もあるだろう黒いドラゴン。
世にほんの数匹と数は少ないが、強靭な爪と牙を持ち頑強な鱗を纏い甚大な魔力を持ち、この世の生態系の頂点に君臨すると謳われる生き物。
ほんの仔牛ほどな大きさの雛だろうが、その怒りを買えば小さな村など軽く滅ぼされると言われた強大な力を持つそれは、唐突に彼女の元へと舞い降りてきたのだった。
商い道もないうっそうとした森の中。当然のこと、助けを呼べる人影も何もなく。
たったひとり、この森に居たキョーコはドラゴンを前に、本能的に自分は死ぬのだと悟った。
逃げるどころか後ずさる事さえ不可能なまでに指の先まで硬く凍り付いたように硬直してしまっているキョーコの身体。
仄暗い死への恐怖。けれど……同時に、キョーコは頭から爪先や尻尾まで深く黒いそのドラゴンに唯一浮かんだ色に目を奪われてしまっていた。
冷たく澄んだ深い水底を思わせるような翠色。けれど、森の木々の葉を縫って差し込む陽の光を受けたその瞬間にだけ柔らかく溶ける不思議な色合いの瞳。
自分を見下ろす恐ろしい黒いドラゴンの瞳を、綺麗だな……と、キョーコはすとんとそう思ってしまった。その瞬間、この美しい瞳を持つドラゴンに食い殺されるのならば、それも良いかもしれないと、安らかにそう自分の死を受け入れた。
ひとつ心残りがあるとするならば……そう、キョーコを縛り付けるあの男から、この国から逃れて死にたかったなと、ただそれだけの望みを口にして。
 
 
 
 
 
キョーコとフワの王太子との婚約が結ばれたのはふたりがまだ7つの幼き頃のことだった。
次代の王の伴侶となり、権力と富と耀き未来の約束されたも同然な筈の少女は……その実、酷く孤独であった。
両親は貴族に有りがちな政略結婚で結ばれ、間にキョーコをもうけるとさも役目は済んだとばかりにお互いが家の外へ愛人を囲いキョーコの居る本宅には寄り付きもしない。
本来ならば、乳母や侍女の手で手厚く守られて育つ筈の令嬢なのだが、両親から放置されたそのままをまるで鏡に写すかのように必要最低限な世話を淡々とするだけな使用人に囲まれそれでも貴族令嬢として知識とマナーは強制的に詰め込まれ、ろくにぬくもりを知らず育ったキョーコ。
やがて、後ろ盾となる家の力や国内での貴族達の権力闘争のバランス、そしてキョーコがその身に宿し持って生まれた魔力の強さなどなどより、あくまでも大人達の政略と駆け引きによってだけ結ばれた婚約。
顔合わせにと引き合わされた幼い婚約者は、世界の中心が自分なのだと疑わぬ傲慢なお子ちゃまだった。
けれどそれでも、キョーコは未来の家族となるその彼に夢を見た。酷く、盲目的なまでに。
必要とされていたい。ただその一心で、辛い王太子妃教育をこなし、遊び回るショーの分を補うかのように数多の語学やマナーや交渉力を身につけ……気が付くと、キョーコは我が強く時折り問題を起こすショーの後始末などから押し付けられた政務に外交に雑務と山のような仕事を抱えるようになっていった。
削られてゆくキョーコの時間。やがて食事や睡眠が疎かになり、細身の身体は更に細くなり顔色は常に青白く目の下にはうっすらとクマが消える事はなくなっていた。
それでもなお、キョーコは婚約者を信じていた。縋るように。
 
 
 
 
けれど、キョーコを待っていたのは、残酷なまでにあっさりとした裏切りだった。
 
 
 
 
その日、どうしても王太子の印が必要な書類を手にキョーコはショーの私室へと向かっていた。
扉を守る騎士もなく薄らと開かれたままのドア。
そこから漏れ聞こえてきたのは……秘事の気配が滲む男女の声。
キョーコと、そう自分の名を口にした婚約者の声に……いけないと思いつつ耳をそばだててしまったキョーコ。
「キョーコなんてあんな地味で色気のない女が俺の妃だなんてあり得ないだろ。」
「でも……王命で結ばれた婚約でしょう?見た目が気に入らない!なんて理由では破棄など出来ないでしょう?」
「あぁ、だからな。あいつを罪人にすればいい。」
甘えと媚をふんだんに乗せた女の声とそれと戯れるような軽薄な男の声。
全身の血がすうっと冷え、目の前が暗く暗く染まるようなキョーコを置き去りに、幼馴染みとも言える婚約者はのうのうと続けたのだった。
キョーコに冤罪を被せ皆の前で断罪し、婚約の破棄と国外追放を言い渡す。
そして、その上でキョーコが悔い改めるならば王太子付きの侍女として置いてやるとさも慈悲深い王太子を演じ、これから先もキョーコをまるで便利な道具のように使ってやるのだと、そう得意げに語った婚約者。
グッと強く、血の滲むほどに握りしめられたキョーコの手。
そっと、自分がそこに居たという痕跡を残さぬように、それでいて速く足音を立てぬようにその場を離れるキョーコ。
そして、彼女は断罪される祝宴を迎えるべく逃亡の用意をしたのだった。
あらかじめ飛翔の魔法を封じた踵のない柔らかな革の靴や動きの妨げとなるボリュームのあるドレスは取り外せるように設えて。
国外追放を言い渡されたその瞬間に、見せかけの慈悲を差し伸べられ逃げ道を塞がれるその前に、この国を婚約者を家を、その全てを捨てて逃亡を果たすその為だけに。
そして、あの断罪の夜、計画通りにショーを出し抜きダンスホールを王宮を抜け出したキョーコ。
けれど……キョーコが国境の関を越えるその前に、王太子からの知らせが届いてしまったようで。
顔や髪色なんかはある程度誤魔化せようが、キョーコの魔力は遠い昔、婚約が結ばれたその時に国に記録されてしまっている。関を通る全ての者の魔力検査を施すよう命令されていれば……キョーコにフワの国から出る術はない。
押し付けられた仕事に追われ交友関係など築く暇ないままに王宮の中捕らえられるように育ってしまったキョーコ。逃亡や潜伏先のあてもないまま……。
探索の追っ手を逃れる為に、人気のない深い森へと入ったキョーコ。
いざとなった時に王家の者を護る為、なんて理由で身につけさせられていたサバイバル術。
火を起こし飲み水と食料を確保して……
そんな絶賛潜伏中だった逃亡者キョーコのもとへと、余りにも唐突にその黒きドラゴンは舞い降りて来たのだった。
 
 
 
命を諦めるように瞼を閉ざしたキョーコを前に、まるで興味深い物でも見るかのようにまじまじとキョーコを見下ろしていた黒いドラゴン。
やがてゆっくりとその首を下ろしキョーコへと鼻先を近付けてゆく。
ドラゴンが人を食すかどうかは知らないけれど、近く近く接近する強靭なその気配に、遁走に精神を張り詰めさせ疲れ果てていたキョーコの意識はふつりと暗く落ちていった。
 
 
 
 
次にキョーコがその瞼を開けた時、彼女は思わず高く大きく悲鳴を上げたのだとか。
 
 
 
 
 
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さーて、まっくろに翠おめめなドラゴンくんの正体やいかにっ!?
ァ,、'`( ꒪Д꒪),、'`'`,、
 
 
 
キョコさんは国を出れるのか?こっから何があって呑んだくれキョコさんになるのか?ざまぁってどれくらいなまでに書いたものやら?それよりも甘さは?な続きがあるかは、謎☆
(・ω<)
 
 
↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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