開幕いきなり婚約破棄なてんぷれを少々……な、つもりだった筈がどうしてこうなったのやら?
魔法にドラゴンなんでもござれなファンタジーパラレルなあのお話の続きらしいですのよ?
よろしくて?



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「あぁぁぁっ、私のっ!もも肉っ!」
 
 
 
 
ざわざわと、いっそ鬱蒼と言ってもいいくらいに好き放題に生い茂る枝葉がさわめく森に、程よく通りの良い高い声と十分なボリュームを伴ったその悲鳴は酷く良く響き……
パチパチと起こされた火で炙られ見るからに食べ頃で美味しそうに仕上げられていた子ウサギの丸焼き。
そして、それにたった今しがたはむりと口を付けたばかりと言った所な森には似つかわしくないような目を見張るような美貌の男は、その悲鳴にびくぅっと肩を震わせ、翠色の瞳を大きく丸くさせたのだった。
 
 
 
 
 
心に、さざ波がたったようだった。
今まで揺らぐ事もなく淡々と平安が続いていた筈なのに……
自分の感情の揺らぎ、その理由さえわからなくてなんだか落ち着かない。
何かに呼ばれたかのようにねぐらから外へ、そして自分でも意識しないまま空へと。
気が付けばいつの間にやら完全に竜化してしまっていた。
どうしてこんな事を?
自分の取ってしまった行動が理解出来ずに、何かに引き寄せられるかのように飛んだ。
風を切る音が嫌に耳につく。
長く飛ばない内に見えて来た緑の森。
そこに、彼女はいた。
細い……と言うよりも痩せ過ぎな身体にボサボサの髪とくたびれた質素なワンピース。その癖に、丸く大きな瞳には生命力が溢れているみたいで。
ただただ、目を奪われていたのに……長い睫毛の縁取る瞼に隠されてしまった紅茶色の瞳。
それを、何故かどうしようもなく残念に思っていると、ふらりと傾く細い彼女の身体。
人間は弱い。
それこそ、ほんの少し頭をぶつけたくらいで死んでしまうと聞くほどに脆弱なのだと。
そんな思いに慌てたのだろうか?
土の上へ倒れ落ちようとする小さな頭を受け止めていた。
柔らかな人の手のひらで。
帰り道の事もあって、竜化を解くつもりはなかった。その筈が……
思うようにならない自分に心にた僅かに落ち着かないような苛立ちを覚え、腕の中にあった少女の体を地面の上へと横たえた。
そのまま……そのまま、ねぐらへと帰るつもりだったのだ。
平穏な水面のようだった心にさざ波を立てる、その元凶なのだろう彼女を遠ざけて。
なのに、後ろ髪を引かれ影を縫いつけられたみたいに動かない足。
すやりと、眠るような愛らしい寝顔をまじまじと見つめてしまっている自分に気が付いて、故意に視線を森の木々へと剥がす。
名も知らぬ人間などほっておきたいのにどうしても気になる……そんな自分に苛立つ感情を持て余す。
そんな時だった。
グゥゥ〜っと、盛大に腹が鳴った。
いつもならば空腹をろくに感じやしない筈の男の腹から。
完全竜化に伴う強い空腹。
ふと目をやれば狐色にこんがりと焼かれた子ウサギの丸焼き。
タレ付けで焼かれたテリっと香ばしい色合いに肉と焼ける食欲をダイレクトにそそる香り。
グゥグゥと派手に空腹を訴える腹を言い訳に。そう、何故かこの場を離れがたいような気がしてしまっている理由を空腹が故と自分への弁明とするかのように、男は子ウサギの丸焼きへと手を伸ばしたのだった。
もぎり安い。そんな理由で持って取り分けた子ウサギのもも肉。
齧り付けば、それは素直に美味しくて……つい、ついともう一本のもも肉へと手を伸ばし齧り付いた、その時のことだった。
ぱちりとその目を覚ました彼女が、非難の悲鳴を上げたのは。
 
 
 
 
 
 
 
ほんのついさっきに、ドラゴンを前に生命の危機を感じ怯え震えていたなんてまるで嘘のように、えぐえぐと涙ながらにレンを睨みつける強い瞳。
ぎちぎちぎゅうぎゅうに詰められた仕事に追い立てられながら冷め切った食事を時間を惜しみながらほんの少し詰め込むのではない。あの城を逃げ出した今だからこそありつける筈だった、出来たてあったか食べ頃な子ウサギの丸焼き。
柔らかでいてぎゅっと旨味の詰まったそのもも肉を、特に!そうとりわけて楽しみにしていたのにと立板に水の勢いでもって嘆き訴えるのは、レンにとっては未知の生き物。
その勢いに押され、つい謝罪の言葉を口にすると、それと同時にまたレンの腹がグーっと良い音を響かせてしまった。
かなりまの抜けた数秒間の沈黙の後
「……どうせ、1匹まるまるなんて食べきれませんでしたから、良かったら……あの、その、どうぞ。」
大の大人の男の飢えたさまを哀れと思ったのか、彼女はレンへ子ウサギの丸焼きのご相伴を進めてくれた。
このままでは、この小さき生き物から一方的に食べ物を取り上げる事になってしまうではないか!?と今更に慌てだすレン。
何かないか?と常日頃適当に何かしらと放り込んでいた魔法で作った空間の中を探るのだけれど……悲しいかな、食事に興味のなさ過ぎた日常が祟ってか食べ物のひとつも入ってやしない。
「う……ウサギ肉に合うワインなんてどうだろうか?」
苦し紛れに取り出しせたのは、ワインの瓶。
意外なことにそれは、少女の紅茶色の瞳をキラキラと輝かせる事が出来るしろものであったらしい。
程よいサイズな丸太を椅子がわりにして腰掛け、はむはむと子ウサギの肉をつまみに美味しい美味しいと楽しげに杯を重ねる姿が、妙にレンの気持ちを高揚させる。
一本もう一本とワイン瓶を取り出し杯を重ね……
そうして気が付くと子ウサギの丸焼きは最早骨へ。そして、キョーコと名乗った少女はすっかりと酔っ払いへと。
ゆらゆらと揺れる身体に真っ赤な頬。何がおかしいのかケタケタと笑い続けながら語る彼女のこれまでの人生は……余りにも不遇で不憫。
いっその事、その心内を洗いざらいに吐き出してしまった方が少しくらい楽になれるのか?なんて考えながら強請られるがままワインを注いでやるレン。
やがて、腹も満たされアルコールの酩酊も相まってかうとうとと重たげに睫毛を瞬かせ出すキョーコ。
人の気配もない森。獣や魔物が出るかもしれない。
この娘は不思議と見ていて飽きない。眠ってしまったならば起きるまで……そばで守って居てやろうか。人の身は暑さや寒さに弱いと聞く、魔法空間の中に毛布の一枚でも入れてなかったか?なんて考えながら、ちびりちびりと杯を傾けキョーコを見守るレンの瞳にはいつの間にやら庇護の色が浮かんでいた。
 
 
 
そんな時だった。
レンと比ぶれば余りに脆く小さく弱い人間の娘。
その愛らしい唇がざまぁとの言葉と一緒に嬉しげに紡いだ男の名前に、腑の底から滾るような強い不快感を感じると共に……
 
 
 
 
ほにゃりとしたその娘が浮かべた笑顔に、これまでの長い長い生で感じた事のない強い衝動がレンの心を撃ち抜いたのだった。
 
 
 
 
 
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まだフワの国から出れやしなかったとですよ!話がおっそいね!
腹ペコ蓮くんとかパラレル人外ならではって感じで良きかと☆←?
 
 
 
現時点、まだ自分の恋心に自覚なっしんぐなドラゴン蓮くんですけど、原作の拗らせ敦賀さんよりかは恋心自覚してからの行動が、獣(モンスター?)の本能ではやい!!とかだと、ちょっぴりと萌えるとは思いませぬか?
ァ,、'`( ꒪Д꒪),、'`'`,、
 

 
↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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