開幕唐突婚約破棄ぶっ放し☆なテンプレートに乗りたかっただったのに……どうしてこんな無駄に長くなってしまっているのやら?
そんな婚約破棄された悪役令嬢?とドラゴンなお話の続きみたいですぞー?
よろしくて?
 
 
 
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「君さ……キスしたこ事……ある?」
 
 
 
 
洞窟を利用しただけなねぐらだと、キョーコの手を引きここまで連れて来た男からはそう言った。
けれど、そこはねぐらなんて無骨な響きのそれが持つイメージとはかけ離れた場所だった。
キョーコが身を潜め黒いドラゴンと遭遇したフワ国の森から街や村を幾つかと超えた先。徒歩や荷馬車での移動ならば数日はかかるだろうその距離をふたりはほんの数時間程で辿り着いた。
飛翔と疾風の魔法を封じた靴と生まれ持った強力な魔力でのゴリ押し。そんなキョーコだからこそ可能な異常な移動速度。
なのに、そんなキョーコだからこそ可能な速度がまるで分かり切っているかのように……それでいて、自分は魔法の使用の気配もないままその身ひとつでもってキョーコの手を引いてみせた男。
フワの国で唯一、関のない……いや、必要としていない国端の境。
ただひとつぽつんとある石門はその先の異質さを知らせるかのように苔ひとつないどこまでもましろな白石。
石門を前に、キョーコは一瞬たじろぐように足を止め躊躇を滲ませたのだけれど……結局、男に手を引かれるがまま、フワの国を出たのだった。
そして、辿り着いたのがここだった。
見上げるくらいな高さの透き通る天然の水晶柱が彩るそれは、息を飲む程に美しい自然が作り上げたクリスタル宮。
ごろごろと無造作に山積み転がされている宝石の原石。
嫌に手触りのよい真っ白な毛皮で覆われたソファーのようなそれに誘われるがまま、ちょこんと座らされているキョーコ。
 
 
 
 
 
「ここは?」
椅子として職人に作られた訳でもないだろうくせに、高位貴族のキョーコの家にあったソファーよりも余程座り心地の良いかもしれないソファーもどきの上、キョーコをここへと連れ込んだだけでなんの説明もしようともしない男へだっただろうか?キョーコの唇が小さくつぶやく。
形として疑問系ではあれど、その響きは質問を投げると言うよりも、とりあえず気不味いような沈黙を埋める為にといった感じのしろもので。
キョーコの隣に居る男はその問いに答えを返すつもりはないらしく、解ってるんだろう?と言わんがばかりににっこりとした笑みのみをキョーコへと向ける。
「…………竜国」
この大陸の中心部。他のどの国からの支配も干渉もなく、許された者がいっときのみ足を踏み入れるを許可されるのみの閉ざされた禁域。ドラゴンの国。その名を口にしたキョーコ。
「自ら国を名乗った覚えはない筈なんだけどね、王様なんてのもいないし……ただの縄張りだよ。」
さらりと黒い髪を揺らしながら翠の瞳を持つ男は言った。
薄々そうではないかと感じ取り疑ってはいたものの……目の前の美貌の男とあの大きな黒いドラゴンは同じ人ならざる強大な存在なのだと、そう突き付けられたキョーコ。
なのに、何故だろう?麻痺したかのように恐怖も畏怖も感じない。いや、それどころが妙にこのドラゴンのそばはキョーコの心を安らげ心地良くさえあるような……なんて事を他人事のようにキョーコが考えていた、そんな次の瞬間。
くるりと、キョーコの視界が反転した。
ふかりと毛足の長い毛皮にキョーコの背中が沈む。
キョーコの目に映るは、自分の身体の上に覗き込むような前髪の一筋の流れさえ完璧に絵になるかのような美を誇るかのような男の顔。
そして、いつの間にやら夜を統べる帝王かのように妖艶な雰囲気を纏わせていた男の滲ませる滴るかのような色香たるや!!
目を見開きぴきょりっ!と硬直するキョーコの唇を指のはらでなぞりながら低い声が問うた。
くちづけをした事があるのかと。
「……え……い、え……ありません……けど?」
押し倒されたあげくにそんなチャラいようなセリフまで囁かれているのにも関わらず、硬直したまんまバカ正直に答えを返したキョーコ。
なにせ、彼女は男女の触れ合いといえば幼き頃に決められた政略結婚の相手にはほんの少しの時間イヤそうにエスコートされるのみな純粋培養純情乙女。夜の帝王を前に動揺するなと言う方が無理と言うものだ。
そんなキョーコを置き去りに、男はにっと企んだような……それでいて満足気に唇を吊り上げて浮みせた。
秀麗なかんばせが魅せる笑みに、キョーコが目を奪われているとふとその視界に影が掛かった。
ふたりの距離が縮み、ふと香る良い香りにキョーコの気が取られたそんな時だった。
唇を塞がれた。
それはキョーコが絵本で読んでこっそり憧れ夢見た王子さまとお姫さまの愛を誓うふんわりメルヘンなものなどではなく、まるで噛みつきむさぼるようなやつを
「っ……む……んんー!?」
唇を重ね角度を変え何度も擦り合わせるように触れては喰み。やがてぬるりと唇をわけ口内に入り込む其れが何であるかも理解出来ないまま、キョーコの腕は咄嗟に男の胸を押しやろうともがく。
「抵抗しないで……我慢ができなくなりそうだから」
吐息さえ感じる程の至近距離で形の良い唇はそんな言葉を紡ぎ、大きな手がキョーコの指を毛皮の上へと絡め取る。
キョーコを見つめる水底のような翠色の目はまるで飢えた獣のようで。
言ってる事もやってる事もめちゃくちゃだ。
だって、そうであろう?
合意どころか何の言葉もなく突然に押し倒され唇を奪われているのだ。
キョーコにとってみれば襲われている真っ只中。
それを抵抗するなとは無茶な事を……と、まぁ、普通であれば陵辱の恐怖に泣き震えるか抵抗を激しくするか、そんなところだろう。
なのに……
指を絡められた大きな手のひらから伝わる体温。包み込むような良い香り。見つめる不思議な色合いの翠色の瞳。重ねられた唇の柔らかさも。
それら全てが、何故かキョーコにはどうしようもなく、心地良くて。
キョーコの頭が何かを考えるその前に、身体が勝手に反応していた。
すんなりと、まるで身を任せるように力を抜いてみせたのだ。
「……いい子だね。」
幼い子を褒めるようなその低い声は極々甘くとろりと響く。
嬉し気に浮かべた笑顔は神々しくさえあり、なんだかとっても目に眩しい。と、キョーコがきゅっと瞼を閉じると、再び重ねられた唇。
「……っ……んっ……」
鼻から抜ける声。
抵抗のなくなった獲物を貪る黒い竜。
いつの間にやら絡み付くような腕と溶け合うみたいなぬくもりも。まるで唾液を絡めるように口内を好き勝手に舐め回す熱い舌も、くちゅっと耳に届く酷く生々しい水音も……キョーコの知らないもので。
どれくらいの時が経ったのだろうか。
不慣れなキョーコの唇が薄く開放される何度目かの息継ぎの後、当たり前のように重ねられた唇から何かが口移しに差し入れられる。
カチリと、キョーコの白い歯にあたり軽く硬い音をさせたつるりとした何かの欠片のようなそれは、不可思議なことに瞬く間にとろりと溶けた。
甘い……蜜のようにふわりと甘いそれを、唇を塞がれ訳もわからぬままキョーコはこくりと嚥下し飲み込んでしまう。
にぃと、細められる人ならぬ翠色の瞳。
 
 
 



 
長い毛並みの毛皮は柔らかく横たえられたキョーコの身体を包み込む。
どうしてなのかさっぱりと理解出来ないのだけれど、キョーコを包むのはここに居る限り誰にも害される事だないと強く感じる安心感で。
キスって…………疲れるものなのね。なんてちょっとまぬけた事を他人事のように薄らと考えながら、逃亡生活の疲労と神経を張り詰めていたキョーコの瞼はとろとろと微睡みへと落ちていった
 
 
 
 
 
「確か、ざまぁってヤツをしたいんだったよね?なら……君の元婚約者に会いに行かないと、だね。」
 
 
 
 
妙にくっきりはっきりと、元の言葉に強調のアクセントを置いたどこか楽し気にそんな事を嘯いてみせた低い声など、耳に入らぬままに。
 
 
 
 
 
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獣の棲家へ連れ込まれ押し倒された挙げ句に味見までされちゃってんのに寝ちゃったキョコさん。
危うし、乙女の操??
((((;゚Д゚)))))))
 


 
需要があるのかさっぱりポン!なそんな
次回→突撃☆隣国の王様んちー!?!?
 
 
 
↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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