婚約破棄されたご令嬢キョコさんとまっくろドラゴンな蓮さんなお話の続きにございますのよ?
だらだらと長くってごめんなさい。
_(:3 」∠)_←計画性なっしんぐ
 
 
 
✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄
 
 
 
遥かなる彼方の過去、創造の男神はこの世界に大地と海、そして獣や人などのすべての生き物の糧となる緑の恵みを齎す世界樹をお創り賜うた。
時は経ち、人は村を街をやがて国を作り、恵みを齎す世界樹を巡って争いを繰り返すようになった。
大地を血で汚す程なその長い長い争いに心を痛めた女神は、一雫の涙を落とした涙。
その涙は……竜と成った。
人の長き争いを止める為か、その身に強大なる力を秘めし獣は人の世から世界樹を護るかのように縄張りを切り取った。
人の知恵や数をもっても足元にも及ばぬような強大なる力を前に人は大地の恵みから遠去けられた。
けれど、女神の涙から産まれし強きもの。
人の国ひとつにひとつ。神の力で作られた白き門を潜り、年に一度きり、許された者のみが世界樹より恵みを戴きにその地へと赴く許しが結ばれ、この世に竜と人の間の新たなることわりとなった。
そうやって、大陸の中央に大陸の中央に座すその白き門により切り取らしは、竜の禁域区。
長き長き揺蕩う水の流れのような歴史の中、いつしか人は世界樹を抱くその土地を竜の国と呼ぶようになったという。
この大地に産まれし子らは、等しく誰もが、ひとりで立てるようになるとまずは親などより強く強く教えられるという。
 
 
 
白き門より先に足を踏み入れてはならないと。
もし。もし、それを破ってしまったならば、決して。
いいかい?決して…………ては、いけないよ?
 
 
 
 
 
幾重にもなる砦も、堅牢なる塀や堀も、頑強なる守りを誇る城門も、全てが圧倒たるその力を前には悲しいまでに無力に等しく。
建国のその時より、敵国の兵の侵入を許した事のなきフワの国の王城。
その眼前の庭園。城に住まう王族や訪れる貴族や傅く者達の目を潤わせる為に隅々まで美しく整えられたその庭はその日
酷くあっさりと、踏み荒らされる事となった。 
薔薇園の中に遊歩道を描き敷き詰められた大理石のタイルを踏み砕き降り立った黒き竜。
余りにも唐突な、まるで悪夢のような強大たる存在のその降臨にフワの国は揺れに揺れた。
人の背丈を優に4倍にもなる背丈のその深い黒き鱗を持つドラゴンは、ただひとつ告げた。
 
 
 
この国の長たる王とその子らとの面会を望む、と。
 
 
 
先ぶれも何も無い型破りにも程があるだろう王族との謁見。通常であらば叶うはずもないそれ。
だが、願ったものはその気になれば騎士や魔導士などを軽く蹴散らしこの国を更地なまでに蹂躙出来うるのだろう弱肉強食の生態系の頂点に君臨する絶対的な強者。
「さて、竜の国よりの方よ。何が望みでこの国へ?」
一国のあるじたる王。だが、相対するは圧倒的な超越種たる竜。
その声にはいつもの醸すような威厳もなく、微かな震えさえ隠せずにいる。
王城の庭園へ居並ぶは、王とその妻達。そしてその子ら。
護衛の騎士や魔術師らはいつでもその身を呈し王族を護る為に瞬座に剣や杖を取れるよう、竜への畏怖に震えそうになる手に力を込め気を張り詰めさせていた。
針を落とす音さえ響きそうな緊張をはらんだ空気。
「今日の用向きは、この国とこの娘について。」
白い牙の並ぶ竜の口から発せられたとは思えぬような知性を滲ませた落ち着いた低い声でそう告げた黒龍は片腕をかざす。
ほんの数秒間、ぐにゃりと、蜃気楼のようにその腕の上にある空間が歪んだ。
そんな次の瞬間、黒き竜はその腕に乙女を抱いていた。
刺繍やフリルや宝石などひとつもないシンプルなドレス。当たり前のようにドラゴンの腕に縦抱きにされているその少女の顔を見て、フワの国の者らは驚きに息を飲んだ。
「っ!!……竜の国の方よ、その者は我が国で裁かれるべき罪人だ。どうか、お引き渡し願おう。」
横柄に王はそう黒竜へと、罪人であるとキョーコのその身柄を願った。
王とその一族、そしてその家臣らが竜の腕にあるキョーコを見る目に浮かぶは、苛立ちと安堵。
対価のひとつも求めず文句のひとつも許されず、ただただ諾々と婚約者の為国の為と、言いなりにその身を粉にするかのように責務をこなしていたキョーコ。
その優秀な働き手を、都合よく仕事を押し付けられる先を、王太子の婚約破棄騒動にて唐突に失っていたフワの国。
奴隷のように従順だと思っていた者の逃亡への苛立ちと、当然のようにキョーコがフワの国へと戻り、この先も以前と同じように……いや、今や王太子の婚約者どころか貴族令嬢でなくなったのだから前よりも更にキョーコを支配下に置きいいように利用出来るのだと思い浮かべているのだろう安堵。
そんな思惑を裏切るように、竜はその口を開く。
「これは異な事を……この娘は国外追放を言い渡されこの国を出た筈だが?」
キョーコの身を渡すつもりなど微塵もないとばかりにその腕にしかりと乙女を抱いたままで。
追放の責はもう果たし、そしてその後はこの国の地へ足を踏み入れてはいないのだから、今さら捕らえる必要はない筈だと。
そう口にした者がレン以外の存在であったならば、虚偽だペテンだと言って武力で威圧してでもキョーコの身を捕縛する事だって出来ただろう。
だが、ドラゴンである。
女神が創り賜うた超越種。その竜が召喚し、フワの国の土地へキョーコの足は踏み入れてないと言い張られてはと、思わず王は口をつぐんでしまう。
当の本人たるキョーコはといえば、淑女の薄い微笑を浮かべたまま一言の声も身動ぎさえないまま、王たちを竜の腕から見下ろしている。
マナーこそ完璧なれど、その容姿は華のない何処にでもいるような地味な少女だった筈だ……なのに、どうしてなのだろうか?
絡め取られたかのように視線が奪われる。
まるで魅せられたかのように。
ぞわりと、背中を震わせるは竜への畏怖か……それとも、その腕の中のキョーコへ向けてのものか?
「……嘘だっ!キョーコはまだこの国から出てなかった筈だ!!」
都合の良い自分の所有物のように思っていたキョーコに睥睨されている。その現状に苛立ちを隠せない元婚約者は声を上げる。
キョーコが国の関を越えたとの報告はなかったのだからまだ国外追放は果たされてなく、罰を終えていないキョーコを捕縛する権利がある筈なのだと。
次代の王となるに相応しき美麗なる王太子と謳われた筈が、その姿は取り上げられた玩具を返せと地団駄を踏む幼な子のようで。
「いや、この娘は確かにこの国から出たよ。」
ドラゴンは少しの嘘も滲まぬ口調にて断言する。余りにも、淡々と堂々とそれが真実であると突きつけるかのように。
「まさかっ……そんな…………何故……」
うめくように王がこぼした声はもはや震えも隠せてやいなかった。
国境を越えるに必ず通らざるを得ない関。けれど、ただひとつ。
どの国であろうがそんな関を有さないもの、それこそが、この世界の禁域区。
世界樹を抱く竜の国。
年に一度、王よりの名を受けた者たちが世界樹の恵みを得る為に訪れるを許されるが世界のことわりであった筈で……
それ以外でかの国へ足を踏み入れるを許された。
それすなわち、キョーコが竜によって竜国へと招かれたという事となる。
ざわりと、動揺を隠せぬどよめき声が王城の庭園にさざ波のように広がる。
 
 
 
 
 
 
 
誰もが、幼き頃から言い聞かせられた事だろう。
竜の国からは世界樹の恵み以外、何ひとつとして持ち帰ってはいけないよ。
ドラゴンのものを奪うなどとてもとても恐ろしい。
もし、其れがドラゴンの宝だった場合…………
 
 
 
 
 
国を、いや世界をも壊しなねない
竜の怒りを買う事になってしまうのだから、と。
 
 
 
 
 
✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄
 
 
 
かわいいあの娘の元婚約者なライバルとのご対面!!の筈が、ドラゴンのお姿。
絵面的にはドラゴンに囚われた乙女に立ち向かう王族と城の騎士たち的なものになっているかと。笑
 
 
 
なかなか終わんなくってどうしようかしら?
次回→キョコさん〇〇持ち発覚☆
 
 
 
↓拍手ボタンの御礼ページなぽえむを新しく『若い子がお好き?』と入れ替えました。
コロナワクチン2回目の副反応発熱な中で作ったので、なんだかぼんやりふわふわした上に甘さも余りないものですが、よろしければのぞいてみてくださいませ。
↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


web拍手 by FC2