Zoom-NIKKOR C Auto 43-86mm f3.5 撮影編 その2 | nico nicoのブログ

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昭和の時代に製造されたカメラの中で特に一眼レフを中心に取上げます。

国産初の標準ズームレンズ...かつて..これを目指し...そして乗り越えようとした事....。

だが、そのズームレンズ.....21世紀の現代の基準では...........。


今回も引き続きテーマは Nikon Zoom-NIKKOR C Auto 43-86mm f3.5 です.....。

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この Zoom-NIKKOR・C Auto 1:3.5 f=43-86mm ですが、1963年1月に発売された 初代ヨンサン・ハチロク のレンズをマルチコート化したもので、第二世代に相当します.....。


様々な収差のオンパレードと揶揄される ヨンサン・ハチロクであるが、マルチコート化された結果、その実力は如何程に......前回同様テーマに取り上げて、様々な場面で撮影し評価する その2 です....。



< ポートレート >

Nikon Zoom-NIKKOR C Auto 43-86mm f3.5 のテレ端は86mm.....と中望遠である.....。

この86mmという数字は ポートレート に持ってこい!では無いのか?


早速、子供をモデルに撮影して確認してみます......。


被写体 : 子供

場所 : 玄関先

撮影メモ : 86mm f3.5


コメント 

被写界深度を狭くする為にテレ端一杯の86mmでf3.5と絞りを一杯に開いて撮影しました。

通常ポートレートは絞りを f2.0 や f2.8 あたりで丁度、狙った顔全体にピントが合い、遠くなるに従いトロける様なボケにより、人物が浮き出て......この辺りの説明は省略させて頂きます。


人物の顔に自然光を当て背景は暗くなるように、あちらこちらと移動し、ようやく納得出来る場所で撮影準備に入る......。

そもそも、ヨンサン・ハチロクは f3.5 より絞りが開けず、やむなく絞り気味...を承知の上 ポートレート に挑む.....。


が....撮影結果は、非常にピントが甘く肌の質感は色合いが潰れていて、ベタっとした感じ....。

ん.....被写界深度が極端に浅すぎるのか?いや、どこにも合っていない。

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若干、子供に動いてもらい向きを変え......もう一枚撮影......。


あかん.....f3.5とは若干絞り過ぎか?なんて思っていたが、その様なレベルではない。

ピントがどこにも合わず、色合いも全然ダメ......背景のラインがぶれる.....瑞々しい人肌をこれ程苦手とするレンズは ヨンサン・ハチロク 以外に私は知らない......。

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< ポートレート? 続き >

もはや ポートレート は全く向かない  Zoom-NIKKOR C Auto 43-86mm f3.5 ではあるが、人肌はダメだとしても、意外に人肌以外ならば いける ....のではないのか?..........


という訳で人以外を撮影して確認してみます......。


被写体 : お稲荷さん

場所 :  神社

撮影メモ : 86mm f5.6


コメント

ヨンサン・ハチロク テレ端86mmとし、絞りを f5.6 と開放の f3.5 より絞っての撮影を試みる.........。


光線の辺り具合が若干複雑?かと思いつつ、ピントを合わせ撮影結果に思いを巡らせつつ、シャッタを切る.....。


おおっつ!石の質感は上々ではないか.....他にも耳元の赤色もほぼほぼな感じで再現されており、背景は......いや...上出来ではないか.......。

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そしてもう一枚......。

同条件で撮影したが、光線のあたり方の違いか?明暗の差が大きいと色合いが潰れてしまい、それがブレた様にも思えてしまう.....。


背景は複雑に、しかもデロデロに溶けていて、綺麗なボケとは言えず.....この様な、被写体を浮かせて背景を綺麗にぼかす.....この用途には全く向かない...こう評価するしかない.....ヨンサン・ハチロクである............。
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< お花の撮影 >

Nikon Zoom-NIKKOR C Auto 43-86mm f3.5 で お花 の撮影はどうなのか?


せめて美しく咲き乱れる お花 が、マルチコートのレンズにより、その美しい姿を留めておけるならば......と言う事で お花が どの程度の質感で撮影出来るのか?確認してみます。


被写体 : お花

場所 :  玄関先

撮影メモ : 43mm f5.6


コメント

お花 を撮影して、このレンズが花撮りに生かせるか....撮影してみましょう。

花びらは?雌しべは?そして葉は? ヨンサン・ハチロク は、その質感を再現出来るのか.......。


今までの経験上....直接日差しが当る場所を撮影すると、色が潰れてしまう特性がある....このレンズ....日陰に入り、ファインダを覗きながらピントを合わせて撮影に入ります......。


が、ここで最短1.2mという長大さにより お花 に近づけず......。

1.2m....近い様で遠いこの1.2m......。


それでも最短1.2m位置でピントを合わせシャッタを切る........。

f5.6ならば、おおよそ中央部分はそれなりに写った?いや、花びらも雌しべもベタッと潰れている.....。


葉もぶれる様に形を失っており、奥の背景は何が写ったのかさえ分らない.....。

........全く残念な限りであるものの、一つだけ褒めるならば、その色合い位か......。

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被写体 : お花

場所 :  玄関先

撮影メモ : 86mm f5.6


コメント

広角端43mmでは、不要な物までも写りこむ....ならば望遠端である86mmで、中央の お花 にピントを合わせ、絞りをf5.6として被写界深度をやや浅めに撮影です....。


やはり....花びらの一枚一枚がくっついてしまっており、雌しべも黄色くベタっと.........。

おまけに奥のボケ具合というか お花 や 葉 がデロデロです.......。
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< 総評 >


非常に残念な結果ですが、全体的な評価として ヨンサン・ハチロク というレンズは、例えマルチコートであっても写りはかなり悪い.......これが私の出した答えです.....。


露出をしっかり合わせも明るい場所では、写真自体が白っぽく写る事が多々あり又、絞っても絞っても像がはっきりしない.....。

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しかし、36枚撮影して、フレアやゴースト等が映りこむ事は無く、ここはレンズコーティングの進歩.....であり、一応カラーフィルムの時代のレンズなので、シングルコートの ヨンサン・ハチロク と比較して色のりは上々ではあった.....。

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この悪い部分ばかりが目立ってしまう ヨンサン・ハチロク というレンズは、現代のいかなるレンズであっても、決して比較してはいけなかった......。


そう勝ち目が無いのは当然である.......製造元のニコンでさえ、性能は追求していないと残している訳で、これを比べてしまう事自体がナンセンスであった...。


だが、ズームレンズという便利なレンズの原点に立ち、ここから全てが始まった事.....画質、機能性、倍率......ズームレンズの進歩の歴史を学ぶには、これ程最高な教材は他に無い....。



ヨンサン・ハチロク というレンズで写した世界は、再現性としては語れる部分が少ないものの、代わりに遥か過去の昭和の雰囲気を感じさせてくれる.......。

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つまり、このレンズは、今を生きる我々が過去の世界を現代に居ながら楽しむ事が出来るレンズ.... ヨンサン・ハチロク への敬意を込めて、こう締めくくりましょう.........。



おしまい........。