∞イケメン・ジョニーはスーパースター? #23 | ワールズエンド・ツアー

ワールズエンド・ツアー

田中ビリー、完全自作自演。

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「ジョニー・バンドは余計なことに全力疾走。」


 男たちは今日も練習を重ねていた、一週間後に迫ったライヴ・イベント、dirty stars orchestra主催による「early summer loud party」への前座の前座、おまけのような扱いだが、それでも彼らにすれば新生・THE CIGARETTES初のライヴであり、脱退を決めたヒラサワくんにはラストライヴ、バンド未経験のジョニーにとっては初めてのステージである。
 持ち時間は15分。
 1曲を3分としても登場と退場を考えれば3曲が限界だろう、ついでに素人同然のジョニーがギター/ヴォーカルなのだ、それ以上の演奏は不可だろう。

 それでいい、ヒラサワくんはそう思う。最後に決めたライヴだ、潔く自らのバンド人生に終止符を打つのだ、ボロが出ないくらいでいい。
 音量だけは凄まじい、だが、やや安定感には欠けるリズムを叩きながら天野くん(ジャック)は思う。
……本当にヒラサワくんが脱退してしまうと……またベーシストを探さないと……うまくいかねぇなぁもう……。

 金髪に痩身、くわえタバコでギターを掻きむしるように鳴らすジョニーは思う。
……登場のときはきっと……俺が挨拶をするんだろう……フロントマンなんだから……フロントマン……つまり、前にいるヒト……。
「ね、天野くん?」
 演奏を止めてジョニーは話しかけた、ベースが、そしてドラムが鳴りやんでゆく。
「ん? メシはまだだぞ、ジョニー。我慢しろ」
「じゃなくて。ライヴのとき、挨拶しなきゃなんないじゃん? なにを言おうか迷ってんだよね」
「ハローでもなんでもいいんだよ、漫才やるわけじゃないんだしさ」
 ヒラサワくんが応えた、経験豊富な彼にすれば、持ち時間をいかにプレイするか、その大切さはすでに学んでいる。素人であるジョニーの素朴さは初々しく微笑ましいことだった。思わず目を細め、自分が音楽を始めたころを思い出す。

「でも……ハローって……。日本人なのに? こんにちは、じゃないの? あ、夜だから、こんばんは、かな。初めまして、も言うほうが好印象かもしれないよ」
 ジョニーが考えるのは本当にきちんとした挨拶だった、そんな律儀なパンク・バンドはいない。
「……いや……面接じゃないから……好印象持たれなくていいの、パンクなんだしさ」
 相変わらず正直なのか不遜なのか、あるいは単なるとんちんかんなのか、その全ての要素を縦横無尽に飛躍するジョニーの思考回路。
「うーん。好印象を持たれないほうがいいのか。じゃあいきなり、このシロウト共とか言おうかな」
 そりゃお前だよ、天野くんもヒラサワくんも声にせず思った。
「で、それから自己紹介かな。こちらは天野くん、納屋にお住まいの25歳です。それからこちらはヒラサワくん、もーすぐパパになる43歳ですって」
「……余計なことは言わなくていいんだよ……」
「そんな……お見合いじゃないんだから……」
「で、最後に……こんばんは、ジョニーです。パンク始めました!!」
「冷し中華始めました、みたいだ……」
「ジョニー……好きにしていいよ、もう任せる……」
 ジョニーはフロントマンを司会進行役のように勘違いしていた。


<不敵に不定期に続く>


前回まではこちら♪

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