同業者で同じゲームが好き、仕事としてはほぼ絡みが無いのですが、

不思議なご縁で超不定期に、思い出したら食事している佐々木さんが

本を出されました。

 

手元に届いてから、読了までかなり時間がかかったのですが、

丁寧に読まないといけない本だなと感じたので、

出張中のホテルで、静かな環境で集中して読了しました。

 

理由なんですが、手にとると分かるんですが、装丁が気合が入ってるんです。

 

アクリル加工された表紙が一番目を引くと思うのですが、

それだけでなく裏表紙もしっかりとした材質で本自体が守られ、

そして、なんといっても「綴じ方」が良いです。

 

何というのか知らないのですが、糸綴じされたものが何束か糊付けされている

ような綴じ方で、それによって「本のどのページを読んでいても手で抑えずに

開きっぱなしになる」のです。

 

これ、本当に本が好きな人だったり、読書が習慣になっている人でないと、

こういう綴じにしないし、ありがたみが分からないと思います。

 

そういうところから佐々木さんの気合を感じて、

「これは移動時間とか隙間時間に読むのではなく、

落ち着いて静かに読むべき本だな」と感じました。

 

そして内容ですが、、、

 

途中から「ええええ!」っていう展開に突入し、それはそれで

面白いのですが、ネタバレになるので避けます。

 

ちょっと未来の日本を舞台にした物語なのですが、

僕がこの小説を読んでいて満足感を感じたのは、佐々木さんが描き出す世界に、

手触りがあるからです。

 

我々の未来像は、多分に手塚治虫ナイズされていたり、ハリウッドナイズされている

と思うのですが僕らのネクロマンシーに出てくる課題や、未来像は、

「確かに今この通りに技術が発展するとやってくる未来」なのです。

 

例えばお祭りのシーンで実行委員会がUUやARPUを振り返る下りが出てきます。

「いやー、そう。カメラデバイスとかそういうのの発展で、きっと僕らは性懲りもなく、

そういう振り返りをするんだろうよ!」という未来なのです。

 

また、近未来のネット接続の在り方を、佐々木さんはカームネットとしてこの小説

で描いています。

 

技術の発展でAIもデバイスも大きく発展した未来、映画ではロボットが闊歩して、

ホログラムと会話するようなものを想像しますが、カームネットは、

自然と身につけたパーソナルデバイスに囁く、というUIになっています。

 

ネットとつながっているのですが、ネットの存在を意識しない。

 

発展は、足し算ではなく、むしろ街からものがなくなっていく引き算であろう

という描写はとても腹落ちするものがあります。

 

実際、例えば未来の駅からは改札がなくなるでしょう。

未来の家からは鍵がなくなるかもしれません。

 

個人と、その行動を正確に特定できるようになる未来は、

想像するに確かにいろいろなくなり、静かになるのです。

 

あとは、マジックザ・ギャザリングが好きだったり、

ネット業界に詳しいとニヤリとできる描写が随所に出てきます。

 

というわけで、良い本でした。

 

僕らのネクロマンシー
僕らのネクロマンシー
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佐々木大輔
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