先日行われた日本水泳・水中運動学会の2日目に、
練習用具をピックアップしたセッションを行いました。
これまでの水泳トレーニングの歴史を駆け抜けた様々なパドルとフィンを並べ、
多くの先生方にも道具を体感していただきながら、
トップスイマーがどのような意図で、どのようにその道具を使いこなしていたかを、
実体験を基に紹介していただき、
練習用具の未来を語りました。
普段はスーツ姿の先生方もこうやって水着になって、
二人のデモンストレーター(原英晃 氏、今井亮介 氏)の指導に従い、
様々な道具を使いました。
会場は、プールサイドと2階ギャラリーにマイクとスピーカーを置き、
双方向で論議できるようにして、
紹介された道具の使い心地やについて私が実施者にインタビユーしたり、
2階席から質問を受けたりしながら、
会を進行しました。
(右が今井氏、真ん中が原氏、左が筆者)
話を総合すると、現代の練習用具の特徴としては、
・ 手なら手、足なら足を、そのままサイズアップしたようなパドルやフィンができていて、
選手の感覚を出来る限り損なわずに泳ぐことができる。
・ 1990年代あたりから、道具によって理想的な動きを身に着けさせようとか、
普段意識しにくい筋を意図的に使わせようという目的が入ってきている。
(たとえば、ストロークメーカーのようにキャッチの際の筋感覚を養うために、
パドルの小指側の面積が大きくなっていたり、
ズーマーズフィンのように、股関節を鍛えるためにわざと重くなっていたりする)
・ アンチパドルに見られるような、逆転の発想(手で水をとらえさせないでストロークを矯正する)も現れている。
今後の練習用具開発の行方についての見解としては、
・ トレーニング目的によって、アイテムの使い合わせのアイデアがどんどん出てくるだろう。
例えば原氏は、DMCフィンとメンターパドルを用いたスプリントトレーニングをよく行っているらしい。
また、原氏、今井氏ともに、DMCフィンとアンチパドルを用いたドリルやエンデュランストレーニングを行い、
ストロークの際のプルの感覚良化に貢献させているという。
また、原氏からは「アンチパドルとチューブアシステッドの組み合わせ」が経験的に良かったという紹介もあった。
・ フィンの場合は、よく進む感覚と足首の故障防止のための指導が必要である。
・ 選手の側からは、足や手がそのままサイズアップしたような道具の開発を望んでいる。
とのことであった。
今回は時間がなく、ビート板などの紹介はできなかったが、
これも、最近は様々な形のビート板が生まれている。
また、ストローク数をカウントできる時計や、
一定のリズムを刻める機会なども開発されている。
更には、水中のビデオ撮影についても、
最近は水中でハイスピード画像が撮れるデジカメも市販された。
このように、選手のパフォーマンス向上に貢献しそうなトレーニングに関するアイテムは、
どんどん開発されてきていますが、
この二人のスイマーが、「なぜこれらの道具を使いこなせるようになったか?」という疑問については、
きっと、昔からそんな道具がない時代にも、一生懸命工夫して、
「ビート板の持ち方」一つとっても、様々なやり方を試したりした、
そんな姿勢が、様々な道具の使い方の発想に繋がっているのではないか?などと感じました。
また、これだけ道具も豊富になって、トレーニングの取り組みも多角化できたら、
練習も少しは楽しくなったり、競技寿命も長くなったりするのではないか?
とも思えます。
ビギナーにしても、様々な道具があった方が、
水泳の楽しみ方も広がりますね。
ただ、指導者側は、それらの道具が何の目的でつくられ、
どのような効果が期待されているのかという情報には、常にアンテナを張っていないと、
道具に埋もれて、目的としたコーチングに繋がらないようにも感じられます。
また、色々と使った効果を検証する術を持っていないと、
使い方の工夫にまで手が届かなくなりそうです。
さて、かく言う筆者も、
最近は今井氏推奨の平泳ぎドリルにハマっていて、
ストローク数が面白いように減って喜んでいます(笑)。
あとは、この学会で筑波大の角川さんから発表のあった、
足の裏の水圧感覚を研ぎ澄ませるための方法をつくり、
来年はどこかのマスターズで平泳ぎデビューしようかなどと、
密かに企んでいます(笑)。