例年、1月成人式前に行われていた本学体育学科のスケート実習ですが、
毎年1月のこの時期は卒論提出期限にあたるため、
指導教官が大変多忙な状況に陥ったりすることや、
学生も成人式帰省のため1月開催だと参加が難しい…などの理由により、
やや試行的ではありますが、今年は12月開催になりました。
氷の上に立った経験がある方はわかると思いますが、
氷上は非常によく滑ります。
普通の靴でも結構よく滑るので、スケート靴を履けばなおさらその滑り具合に誰もが驚きます。
また、スケート靴についているブレード(刃)は片一方の足に一本しかありません
これがまた、立っているだけでバランスがとりづらく、初心者の恐怖感を煽るわけです。
http://www.youtube.com/watch?v=4axxiVTPsEA
最初はこのような感じで、
滑れている人も、上半身が明らかにぎこちないのですが、
それはまだマシな方で、大概はこのようによちよち歩きが精一杯です。
更に、身動きが取れず、立ち尽くす人が出てくるのも、初日の特徴です。
そして、転倒による外傷の発症も、氷に慣れていない初日が最も多いのです。
そこで、まず初心者にはリンク外の場所で、
立つ練習、そのまま屈伸など脚を動かす運動、
リンクに入る際の横歩きの練習、転び方の練習、
ブレードで逆ハの字を作る基本姿勢などを習得させてから、
リンクに入って行きます。
一般的にはあまり転ぶ練習などはさせませんが、
私たちの学科では柔道で受け身なども学習していますので、
いざというとき、背中から倒れたり、
手をついたりする癖の出る学生も現れます。
ですので、バランスを崩しそうになったらすぐに重心を低くし、
片方の臀部から氷に着くことを指導しました。
立ち上がる際にも指導マニュアルにあるように、
ブレードの先端を氷に着けないで立ち上がるように指導しました。
実はこの立ち上がり動作で腰から氷に踏ん張る感覚を養うことができます。
ですので、転倒~起き上がりの練習で氷に慣らすことは、
初心者にとっては大変重要なのです。
そして、氷の上に立てたら、
あとは徐々に歩行や自然滑走へと移行していき、
「スネーク」、「ひょうたん」や「ストッピング」「ターン」の練習で、
ブレードへの体重の乗せ方、氷の削り方などを学習します。
そんな練習まで進められると、次のようなことができてきます。
http://www.youtube.com/watch?v=dMImZSjYXXo&feature=related
本年の実習では、自らもシンクロナイズドスケーティングの選手であった
小牧久見子先生を講師としてお招きし、
受講生たちへのシンクロスケーティングの演技・技術指導をお願いしました。
本学の学生たちは、実習体育祭のマスゲームなどで集団としての演技には慣れていますが、
さすがに最初は氷上での動きに慣れず、身体的にも練習の反復がきつかったようです。
しかし、逆に他人と手をつないで滑ることで姿勢保持という点で安心感があったり、
また、スケーティングそのものに不安がある者は
隣の人のけん引力に頼って移動することができるため(笑)、
なんとなく最終的には演技の形が出来上がったのです。
本来はもっと難しい隊形移動やジャンプなどの技術も入ってきます。
しかし、「今日滑り始めた人でもできそうな内容で」と小牧先生にリクエストしたため、
若干単純な内容となりました。
それでも最初の映像と比較したら、
学生たちの進歩の幅が凄いということはご理解いただけると思います。
この後、私が担当した初心者班は、
「キャリング」「バック滑走」「スカリング」「クロッシング」「二の字ターン」
などを学習し、最終日の朝には技術テストを行いました。
技術テストの課題は、
「直線滑走」「スネーク」「スカリング」「クロシング」「ターン~バック滑走~ターン」「ストップ」
です。
私がリンク上にこれらの課題に従いマーカーを置き、
そのマーカーを目印に上記の課題をこなしていき、課題ごとに採点していきます。
基本的な動きの完成度で得点を与え、その合計点が基準点に満たない場合は、
その課題のみ追加練習させる…という感じですが、
昨年、本年は非常に出来がよく、
全員、上記課題を1発合格することができました。
そして、それらが終わった後に、
実際に防具やスティックを持ち、アイスホッケーを楽しみました。
http://www.youtube.com/watch?v=-nXrzhNen6o&feature=related
特に、日ごろサッカーやラグビー、バスケット、アメフトなどの集団球技をやっている学生は、
こういったゲームになると俄然張り切ります。
特にラグビー、アメフトの人たちは、体当たりも辞さないため、
この画像のようなプレーがあちこちで見られます(笑)。
我々はただ、大きな事故が起こらないように…と見守っているしかないのですが、
さすがに鍛えられた若者たちのやることですから、
今までのところ、このゲームによる事故はありません。
こういった形の実習ですが、最初は氷に立ち尽くしていた学生が、
たった3泊4日でここまでできるようになります。
「シューズに慣れなくて足が痛い」などの試練はありますが、
彼らの口からは「浅田真央って本当に凄いんだなってことが良くわかりました」といった感想も発せられました。
今まで知らない環境で行うスポーツ活動は、生活に新たな知見をもたらし、
また、そういった視点から競技を見ることで、
いままで気づかなかったことに気づくことができるというのが、
こういった体験型の実習の良いところとも言えるでしょう。
しかしながら、今回のシンクロとホッケーで利用した「富士山アリーナ」というリンク。
残念ながら、今年度いっぱいで閉鎖となるようです。
http://www.sannichi.co.jp/local/news/2011/10/13/2.html
年間9億(?)の赤字が原因だそうですので、このご時世、仕方ないといえばそれまでですが、
数少ない、スケートが楽しめる施設がこのようになくなって行くのは、非常に残念です。
水泳とスケートは、非常によく似たスポーツです。
水泳は水の上を滑りますし、スケートは氷の上を滑ります。
水泳もスケートも、水や氷に対する恐怖感、普段の環境と異なる場所での不安感などを
いかにうまく克服できるかどうかが、その上達に大きくかかわります。
そして、経済状態が悪くなると施設の存続を検討されるということも、
大変よく似ています。
水泳は、元来小学校教育で全国的に導入され、
1965年以降のスイミングクラブ(以下SC)普及以降、青少年教育の一環という側面が強いため、
バブル崩壊以降の不景気による民間SCの閉鎖の連鎖という事態に見舞われたこともありましたが、
その後北島選手の台頭から、都市部ではまだ元気な状態でいられます。
しかし、スケートは冬場にグラウンドで氷が張れるような地域に居ない限りは、
ほとんど一般の人がやるチャンスがありません。
以前、スピードスケートの選手のトレーニング指導をしていたときに、
色々な地域のスケート場を見る機会がありましたが、
やはりジュニアやマスターズの競技者数は水泳に比べると圧倒的に少ない割に、
リンクの維持に相当なコストがかかるというのが、
このスポーツの振興に大きな壁となって立ちはだかっています。
近年、六本木などで小型リンクができた…などという話を聞きますが、
今後多くの場所でスケートができるよう、
関係者の皆様には頑張っていただきたいと思います。
浅田真央選手がなぜ凄いのか?
一人でも多くの人が、氷に乗ったことがある体験者として、
彼女らの凄さを一層深く共感できるようになって欲しい…。
そんなことを、実習が終わって改めて感じた次第です。
毎年1月のこの時期は卒論提出期限にあたるため、
指導教官が大変多忙な状況に陥ったりすることや、
学生も成人式帰省のため1月開催だと参加が難しい…などの理由により、
やや試行的ではありますが、今年は12月開催になりました。
氷の上に立った経験がある方はわかると思いますが、
氷上は非常によく滑ります。
普通の靴でも結構よく滑るので、スケート靴を履けばなおさらその滑り具合に誰もが驚きます。
また、スケート靴についているブレード(刃)は片一方の足に一本しかありません
これがまた、立っているだけでバランスがとりづらく、初心者の恐怖感を煽るわけです。
http://www.youtube.com/watch?v=4axxiVTPsEA
最初はこのような感じで、
滑れている人も、上半身が明らかにぎこちないのですが、
それはまだマシな方で、大概はこのようによちよち歩きが精一杯です。
更に、身動きが取れず、立ち尽くす人が出てくるのも、初日の特徴です。
そして、転倒による外傷の発症も、氷に慣れていない初日が最も多いのです。
そこで、まず初心者にはリンク外の場所で、
立つ練習、そのまま屈伸など脚を動かす運動、
リンクに入る際の横歩きの練習、転び方の練習、
ブレードで逆ハの字を作る基本姿勢などを習得させてから、
リンクに入って行きます。
一般的にはあまり転ぶ練習などはさせませんが、
私たちの学科では柔道で受け身なども学習していますので、
いざというとき、背中から倒れたり、
手をついたりする癖の出る学生も現れます。
ですので、バランスを崩しそうになったらすぐに重心を低くし、
片方の臀部から氷に着くことを指導しました。
立ち上がる際にも指導マニュアルにあるように、
ブレードの先端を氷に着けないで立ち上がるように指導しました。
実はこの立ち上がり動作で腰から氷に踏ん張る感覚を養うことができます。
ですので、転倒~起き上がりの練習で氷に慣らすことは、
初心者にとっては大変重要なのです。
そして、氷の上に立てたら、
あとは徐々に歩行や自然滑走へと移行していき、
「スネーク」、「ひょうたん」や「ストッピング」「ターン」の練習で、
ブレードへの体重の乗せ方、氷の削り方などを学習します。
そんな練習まで進められると、次のようなことができてきます。
http://www.youtube.com/watch?v=dMImZSjYXXo&feature=related
本年の実習では、自らもシンクロナイズドスケーティングの選手であった
小牧久見子先生を講師としてお招きし、
受講生たちへのシンクロスケーティングの演技・技術指導をお願いしました。
本学の学生たちは、実習体育祭のマスゲームなどで集団としての演技には慣れていますが、
さすがに最初は氷上での動きに慣れず、身体的にも練習の反復がきつかったようです。
しかし、逆に他人と手をつないで滑ることで姿勢保持という点で安心感があったり、
また、スケーティングそのものに不安がある者は
隣の人のけん引力に頼って移動することができるため(笑)、
なんとなく最終的には演技の形が出来上がったのです。
本来はもっと難しい隊形移動やジャンプなどの技術も入ってきます。
しかし、「今日滑り始めた人でもできそうな内容で」と小牧先生にリクエストしたため、
若干単純な内容となりました。
それでも最初の映像と比較したら、
学生たちの進歩の幅が凄いということはご理解いただけると思います。
この後、私が担当した初心者班は、
「キャリング」「バック滑走」「スカリング」「クロッシング」「二の字ターン」
などを学習し、最終日の朝には技術テストを行いました。
技術テストの課題は、
「直線滑走」「スネーク」「スカリング」「クロシング」「ターン~バック滑走~ターン」「ストップ」
です。
私がリンク上にこれらの課題に従いマーカーを置き、
そのマーカーを目印に上記の課題をこなしていき、課題ごとに採点していきます。
基本的な動きの完成度で得点を与え、その合計点が基準点に満たない場合は、
その課題のみ追加練習させる…という感じですが、
昨年、本年は非常に出来がよく、
全員、上記課題を1発合格することができました。
そして、それらが終わった後に、
実際に防具やスティックを持ち、アイスホッケーを楽しみました。
http://www.youtube.com/watch?v=-nXrzhNen6o&feature=related
特に、日ごろサッカーやラグビー、バスケット、アメフトなどの集団球技をやっている学生は、
こういったゲームになると俄然張り切ります。
特にラグビー、アメフトの人たちは、体当たりも辞さないため、
この画像のようなプレーがあちこちで見られます(笑)。
我々はただ、大きな事故が起こらないように…と見守っているしかないのですが、
さすがに鍛えられた若者たちのやることですから、
今までのところ、このゲームによる事故はありません。
こういった形の実習ですが、最初は氷に立ち尽くしていた学生が、
たった3泊4日でここまでできるようになります。
「シューズに慣れなくて足が痛い」などの試練はありますが、
彼らの口からは「浅田真央って本当に凄いんだなってことが良くわかりました」といった感想も発せられました。
今まで知らない環境で行うスポーツ活動は、生活に新たな知見をもたらし、
また、そういった視点から競技を見ることで、
いままで気づかなかったことに気づくことができるというのが、
こういった体験型の実習の良いところとも言えるでしょう。
しかしながら、今回のシンクロとホッケーで利用した「富士山アリーナ」というリンク。
残念ながら、今年度いっぱいで閉鎖となるようです。
http://www.sannichi.co.jp/local/news/2011/10/13/2.html
年間9億(?)の赤字が原因だそうですので、このご時世、仕方ないといえばそれまでですが、
数少ない、スケートが楽しめる施設がこのようになくなって行くのは、非常に残念です。
水泳とスケートは、非常によく似たスポーツです。
水泳は水の上を滑りますし、スケートは氷の上を滑ります。
水泳もスケートも、水や氷に対する恐怖感、普段の環境と異なる場所での不安感などを
いかにうまく克服できるかどうかが、その上達に大きくかかわります。
そして、経済状態が悪くなると施設の存続を検討されるということも、
大変よく似ています。
水泳は、元来小学校教育で全国的に導入され、
1965年以降のスイミングクラブ(以下SC)普及以降、青少年教育の一環という側面が強いため、
バブル崩壊以降の不景気による民間SCの閉鎖の連鎖という事態に見舞われたこともありましたが、
その後北島選手の台頭から、都市部ではまだ元気な状態でいられます。
しかし、スケートは冬場にグラウンドで氷が張れるような地域に居ない限りは、
ほとんど一般の人がやるチャンスがありません。
以前、スピードスケートの選手のトレーニング指導をしていたときに、
色々な地域のスケート場を見る機会がありましたが、
やはりジュニアやマスターズの競技者数は水泳に比べると圧倒的に少ない割に、
リンクの維持に相当なコストがかかるというのが、
このスポーツの振興に大きな壁となって立ちはだかっています。
近年、六本木などで小型リンクができた…などという話を聞きますが、
今後多くの場所でスケートができるよう、
関係者の皆様には頑張っていただきたいと思います。
浅田真央選手がなぜ凄いのか?
一人でも多くの人が、氷に乗ったことがある体験者として、
彼女らの凄さを一層深く共感できるようになって欲しい…。
そんなことを、実習が終わって改めて感じた次第です。