こんにちは、研究開発室の増田です。
今回は、以下の文献を紹介したいと思います。
“Providing social support may be more
beneficial than receiving it: Results From a Prospective Study of Mortality”
本論文は、「ソーシャルサポートを提供すること」(簡単に言うと、他者の手助けをすること)と「死亡率」の相関を調べたものです。
まず、「ソーシャルサポート」の概念についてご説明します。
ソーシャルサポートとは、周囲の人々(家族、友人、同僚など)から受ける物質的・心理的支援の総称であり、House JS の定義によると、以下の4つに分類されます。
(1)情報的サポート・・・問題の解決に必要なアドバイスや情報を受ける/与える
(2)道具的サポート・・・形のある物やサービスを受ける/与える
(3)情緒的サポート・・・共感や愛情を受ける/与える
(4)評価的サポート・・・自分の意見や行動に対し、肯定的な評価を受ける/与える
今回紹介する文献の結論を言いますと、「身近な人に提供した道具的・情緒的サポートと、死亡率の間に負の相関が見られた」ことが示されています。
すごく単純化すると、「継続的に身近な人を支えたら死亡する確率が下がる」かもしれない、ということです。
手法としては、65歳以上の846名の被験者に対して、いくつかの項目から成る点数形式のアンケート調査を行い、「最近の1年間で身近な人に物質的・精神的な支えをしたか」をスコア化しました。
その後、彼らに対し追跡調査を行い、5年間の死亡率を見ています。得られたデータを回帰分析した結果、支えを提供した指標が高いほど、5年間の死亡率が低いという結論が得られました。
もちろん、比較の際に健康状態、精神状態、収入など、非特異的な要素は相違がないように配慮されています。
ソーシャルサポートに関するこれまでの研究は、主にサポートを「受ける」側に焦点を当てたものがほとんどでした。近年は、サポートを「与える」側にも焦点が当てられつつありますが、まだまだ発展途上の分野です。今後の研究に期待したいと思います。
誰しもが、他者の支えになれた時は清々しい気持ちになることでしょう。それが死亡率の低下にも繋がる可能性があるのは驚きですね。
何か質問・意見等ありましたら、是非積極的にコメントをください。