昨年9月に

うっかり(?)手を出してしまった

トルストイ『戦争と平和』。

 

 

物理的に(岩波文庫で全6巻)

相当な文章量があることは覚悟していましたが

読み終わるまでに相当な体力と集中力が必要でした。

フルマラソン並みにきつい道のりでした。

(走ったことないけど笑)

 

 

そのため予定していた読書会を

何度も何度も延期にし・・

2023年末に差し掛かる今、

やっとこさ全巻読み終わり読書会を

することができました!!

 

 

1巻と2巻の感想はブログにまとめていますが

3巻以降・・心が折れて書いてません笑

 

 

3巻以降も、物語の中心人物は

世間知らずの大富豪ピエール、

理想に燃える冷静沈着なアンドレイ、

若くて勢いのある青年士官ニコライの3人です。

 

 

1巻、2巻はそれぞれの

貴族社会の生々しい駆け引きと

戦場での活躍と挫折が

描かれていましたが、

3巻以降はそれぞれの内面が

より深く描き出されていきます。

 

 

その鍵となるのが

ニコライの妹にあたる

ロストフ家の次女・ナターシャです。

 

 

ナターシャは無邪気な

貴族の小娘でしたが

物語が進むにつれ、美しい女性に

成長していきます。

 

 

しかし誰かを愛すること、

結婚するといったことについては

いまだピンと来ていないようで、

女性の美しさと少女の無邪気さを併せ持つ

不思議な魅力のある女性として

描かれています。

 

 

そんなナターシャに救われたのが

戦場で負傷し、妻も亡くしたことで

挫折と自責の念に駆られて

ふさぎ込んでいたアンドレイです。

 

 

ナターシャの綺麗な心に

浄化されたアンドレイは彼女に

結婚を申し込みたいと思いますが

 

 

頑固な実父に大反対を受け、

婚約状態で一年離れ離れで

生活できたら結婚を許すという

厳しい条件を突きつけられます。

 

 

アンドレイは父の条件を受け入れ

ナターシャと離れ離れの生活を送りますが

人生初の恋愛となるナターシャには

それはそれは耐え難い日々になります・・。

 

 

結局、ナターシャはアンドレイに

会えない寂しさを紛らわすことができず、

放蕩者の誘惑に乗せられ

婚約は破談になってしまいます・・。

 

 

そしてアンドレイだけではなく

ニコライ、ピエールも

それぞれの理想を追い求めて挫折し、

自分はどう生きていくか迷走します。

 

 

ピエールはエレンの美しい誘惑(?)に

そそのかされて彼女と結婚しましたが

打算的な付き合いのために

2人の関係は消滅寸前で、

 

 

ニコライは幼馴染のソーニャと

親しい関係にありましたが

厳しい財政状況のロストフ家は

ソーニャとの結婚を良く思わず、

さらにニコライがギャンブルで大負けして

破産寸前まで落ちぶれたことで

ふたりの関係は徐々に遠のいていきます。

 

 

現実にぶつかり、悩み続ける彼らに

戦争というさらなる試練がおとずれ

三者三様の悲劇に見舞われるのです・・。

 

 

このあたりの展開が非常にドラマ的で

1、2巻と比べて超スピードで

3巻以降を読み終えることができました!笑

 

 

壮大な物語世界の中にいると

激動の展開・・!!と

思わされてしまうのですが、

 

 

ナターシャの無邪気さや

恋愛を知らなかったからこそ

突如求愛されたことによって高揚し

情緒不安定になってしまう感じは

誰もが身に覚えがあるのではないでしょうか?

 

 

そりゃあ貴族ではないし

ドラマな展開こそなかったものの・・笑

 

 

そこを抜きにすれば

誰かを好きになる、愛する、

ということをまだ知らない男女の

ちょっとした茶番劇だと思えてきます・・。

 

 

ですがこういう茶番こそが

人生の醍醐味とも言えるかもしれません。

 

 

人間の悩みのほとんどは人間関係といいますし

恋愛・失恋を経て内省を深めたり

相手の立場を想像するようになったりして

人間的に成長するきっかけにもなりますしね。

 

 

物語を読み進めていくうちに、

人間関係に悩み、自分の生きがいは何かと迷い、

葛藤し、試練をくぐり抜けながら生き抜く

ピエール、アンドレイ、ニコライの

3人の貴族たちに少しずつ

感情移入できるようになっていきました。

 

 

もちろん『戦争と平和』は

彼ら3人の人生模様を描くだけに

とどまりません。

 

 

ナポレオン戦争の経過を

ロシア貴族の社交場から

総司令部、軍隊、戦地の住民たちまで

多方面から俯瞰的・網羅的に描き、

 

 

物語後半部からは

戦争とは、軍とは、権力とは何なのかといった

戦争・歴史論の記述が多くなされていきます。

 

 

トルストイは

「権力者が戦争・歴史の主役ではない」

という持論があり、

 

 

大勢の個人の意識と

自然環境など偶発的な要素によって

産まれたエネルギーが

戦況を左右しているのであり、

権力者はむしろ大衆の動きを

コントロールし得なかったと論じています。

 

 

作中でも

ナポレオンの命令が伝言ゲームのように

うまく軍隊に届かなかったり、

ロシア軍総司令官のクトゥーゾフが

ひたすら戦闘を「止めさせる」ことに

徹底したことでロシア軍が優勢になっていく

描写があったり

 

 

そもそも物語のはじまりが

ロシア貴族の社交場で

戦場とかけ離れた場所から

戦争に対する多数の個人の思惑を

描き続けていた姿勢からも

彼の持論がうかがえます。

 

 

例え戦場に赴いていなかったとしても、

戦時下で生活する全ての人々が

「歴史の主役」なのだということを

描きたかったのだろうか?と思いました。

 

 

物語後半、特にエピローグでは

歴史論・戦争論の記述が多く

きちんと理解できているか

不安なところではありますが😅

 

 

わたし自身、上記のような理解でよければ

『戦争は女の顔をしていない』を読んで

「生活者の戦争」に触れていたことから

同じようなことを感じていました。

 

 

 

歴史に触れる、学ぶということは

教科書通りの「史実」を追うことだけではなく

その時代に生きた人の思いに触れることも大切で、

 

 

そして彼らの思いを教訓的に受け取ったり

「いつの時代も人はこうして悩むのだな」と

学んで開き直ったりしながら笑、それでも

これからの悲劇を少しでも減らすために

とても必要な学びなんだと改めて思いました。

 

 

この本を手に取って読み終わるまでの間も

いまだに戦争は終わらないし

何なら別のところで始まってしまっているし

人間は学べないのか・・と

ガッカリすることもありますが

 

 

だからと言って自分自身の学びを

止めてはいけないよな、とも思い、

引き続き偉大な本を手に取りながら

学びを深めていきたいと思いました。

 

 

学びをやめない姿勢を

我が子にも示していきたいですしね。

 

 

読書会では文学部らしく

「歴史小説だけじゃなくて

さまざまな視点で語れるよね」

という話で盛り上がりました。

 

 

自己顕示欲、ギャンブル欲、性欲など

「欲望」という視点で多くの人間ドラマがありますし

軍隊の統率、貴族の農地経営などの

マネジメント論でも語れそうですし

 

 

ロシア貴族のきらびやかな文化背景を語るだけでも

一冊の本になりそうなぐらいの情報量があります。

(当時のロシア貴族はフランス語で会話をするのが

ステータスで、フランス風のあだ名で呼び合うくらいなのに

フランスと戦わなくてはいけない複雑さなども興味深いです)

 

 

長い長いフルマラソン的読書にはなりますが

読み終わった先にはとてつもない達成感と

別の世界に入り込んだ充実感に浸れる作品なので、

ぜひ時間ができた時に読む本として

ストックしておいて損はないと思います!

 

 

▼読み始めるなら岩波文庫版がおすすめです

 

 

 

 

 

 

 

▼物語のさらなる理解に、こちらおすすめです!

薄いのに、めちゃくちゃまとまっていて

本当にありがたい参考書でした・・

 

 

 

 

今日もお忙しいのに最後まで読んでくれてありがとうございました!

また更新します!!