梅雨も明け、子どもたちは夏休みへ突入と、夏本番を迎えた今日この頃。7月末からは全国各地で花火大会が開催されるようだが、近年の野球界でも“花火”は、夏のナイターイベントの定番となっている。

 野球場での花火観賞というのはなかなかにいいものだ。打ち上げ数こそ少ないが、花火の距離は近いし、ゆったり座れるし、ビールも売りに来てくれる。さらに、花火が上がっている時のあの空気。その試合が首位攻防戦だろうと、ライバルチーム同士の対戦だろうと、敵も味方も、ファンも選手も関係なく夜空に見惚れているあの瞬間の空気は、クリスマス休戦ならぬ花火休戦ともいうべき、実に平和な雰囲気に包まれる。

 考えてみれば花火大会へ行っても、渋滞と人混みとお好み焼きのソースに巻き込まれて、純粋に花火を楽しめたためしがない。ビール片手にのんびり花火を観るなんて贅沢は、いつだって野球場でのことだ。

 しかし、この花火。野球メインで観ていると、いつどこの球場でやっているのかよくわからずに、楽しみにしていると肩透かしを喰らうことも少なくない。事前に調べておけばいいのだが、一旦野球頭になってしまうと、花火が何発かより、誰が先発かの方へ頭が行ってしまうので大体忘れるのがオチだ。

 というわけで、今回は「野球場花火情報」をお届けしてみる。

【セ・リーグ】

●東京ヤクルトスワローズ
<神宮球場>
7月27日~29日 広島戦
8月3日~5日 中日戦
8月10日~12日 巨人戦
8月24日~26日 横浜戦
8月27日~29日 阪神戦
※ 5回裏終了時に300発の打ち上げ花火。

【パ・リーグ】

●埼玉西武ライオンズ
<西武ドーム>
※ 近隣の西武園ゆうえんちにて8月13日(金)と8月中の毎週土・日に花火大会を開催。

●福岡ソフトバンクホークス
<ヤフード―ム>
※ ソフトバンク勝利時の試合終了後に“勝利の花火”を8発。
ドーム球場で唯一の花火は珍しい屋根からの“打ち下げ花火”。

●千葉ロッテマリーンズ
<千葉マリンスタジアム>
7月30日~8月1日 福岡ソフトバンク戦
8月10日~12日 北海道日本ハム戦
8月13日~15日 東北楽天戦
8月20日~22日 オリックス戦
8月24日~26日 埼玉西武戦
8月31日 東北楽天戦
※ 5回裏終了時に300発。
中学生以下を対象にグラウンドから花火を鑑賞できる「花火ツアー」を開催(約100人)。

●オリックス・バファローズ
<スカイマークスタジアム>
7月21日 東北楽天戦
7月27日 北海道日本ハム戦
8月7日~8日千葉ロッテ戦
8月18日 東北楽天戦
※ 8月8日はいつもより豪勢な「スーパー花火ナイト」。

●東北楽天ゴールデンイーグルス
<クリネックススタジアム宮城>
7月30日~8月1日 オリックス戦
8月3日~5日 千葉ロッテ戦
8月10日~12日 埼玉西武戦
8月20日~22日 福岡ソフトバンク戦
※ 5回裏終了後に160発。
グラウンドで花火を観戦できる「フィールド花火観覧2010」を開催(抽選で親子20名)。

 さて、野球の話である。

 野球場での花火は何も火薬で打ち上げるものに限ったことではない。

 野球においてよく花火に喩えられるのが、ホームランである。甲子園でホームランが乱れ飛べば“甲子園花火大会”、ホームランを打たれるピッチャーを“花火師”、“花火職人”などと喩えることもある。

 夏といえば、ピッチャーはバテバテ、打者は意気軒昂に調子を上げてくる、ホームランが量産される季節。職人たちが己の力と技の粋を集めて、夜空に放つ白い球。野球場に打ち上がるホームランこそ、東高西低、打高投低、日本の夏の醍醐味なのである。

 というわけで、今夏、各球場での観測が期待される「打ち上げ花火」の見所を紹介しよう

とにかく火薬量が半端ではない東京ドーム花火大会!!

 セ・リーグでは、チーム本塁打141と、2位の阪神に40本差をつけている巨人がダントツの火薬量(7月19日現在。以下同様)。最もホームランが出やすいと言われる東京ドームは野球界の大曲といったところか。ホームラン争いの1、2位であるラミレスと阿部は10打数に1本の割合で本塁打を量産。小笠原、坂本、長野、高橋由伸など大玉揃いで今夏も勢いは止まらない。

 これに加えて、絶不調の投手陣は7月だけで19被本塁打。中継ぎのオビスポ、星野、山口の被本塁打率が1試合当たり1.5本以上と、今夏のドームはさらに花火が乱れ飛ぶ予感を漂わす。

 巨人を追う阪神は、ブラゼルが阿部と並んで30発、本塁打一本あたりの打数=本塁打率は10.56とダントツの成績。金本、城島も調子を上げているが、西の花火大会のメッカといえばPL(名物の花火大会)。一時は4番を期待されながらも二軍落ちしたPLのOB桜井広大の奮起に期待したい。

 中日はドラゴン花火の両輪、柔の和田、剛のブランコという常連組。一方で新戦力が出てきたのがチーム本塁打数12球団ワーストの広島。'08年ドラフト1位の岩本が17試合で3発と今夏の期待を一身に背負う。

セの下位チームでは“花火職人”投手が勢揃い。

「き~み~が~いた夏は~」というチャンステーマが、淋しく聞こえていたヤクルトでは途中加入のホワイトセルが15試合で4発。12球団イチ球場が狭い横浜でも、これまた新加入のハーパーが12試合で5発と、55本を打った年の王貞治に迫るペースで花火を連発。両外国人の活躍が真夏の夜の夢とならないことを祈るのみだ。

 ちなみに、下位チームではピッチャーの被本塁打の多さが顕著だ。広島では6月29日の巨人戦で5発を打ち上げたスタルツほか、ソリアーノ、ジオなどの外国人の打ち上げ活動が著しい。ここまで103発を打ち上げた職人揃いの横浜では、ロッテから移籍してきた清水直行が横浜投手陣の伝統を踏襲するべく、セ最多の16発を打ち上げ、名実ともに“横浜の人”となってしまった。

セに比べてイマイチ湿りがちのパの打者だが……。

 今季これまでのセ・リーグ全体の500本に比べて464本と本塁打数が少ないパ・リーグ。球場の広さか、ピッチャーがいいからかはわからないが、本塁打トップのソフトバンク・オーティズの21本でも巨人のラミレスと10本差。規定打席到達者の本塁打率では、T-岡田の14.65打数に一発の割合を最高に、10点台がオーティズ(15.57)、カブレラ(16.38)、金泰均、ブラウン(共に17.72)の5人と、全体的な火力不足は否めない。

注目の新型花火「左のおかわり」こと西武の坂田遼!

 そんな中、現れた注目の新型花火が「左のおかわり」こと西武の坂田遼。13試合で40打数11安打。そのうち6本が本塁打という火力は本家にも負けていない。本塁打を打てば好物の「ぺヤングソースやきそば超大盛」を食べるという新星は、この夏、どこまでぺヤング数を伸ばせるかに注目が集まる。

 同じ西武では先日、フェルナンデスが出戻り復帰し、6試合で2本と往年の火力を彷彿とさせる順調な出足。オリックスでもセギノールが出戻り復帰。BCリーグから獲得し、選手登録後にいきなり一発打ち上げたカラバイヨなど、未知の外国産花火の力も楽しみだ。

 球場別では海からの強風が名物のマリンスタジアムが、打ち上げが最も楽しめる球場だろう。チームトップの打ち上げ数を誇る、韓国製の大玉・金泰均の花火が上がれば、ハンバーガーが安くなるオマケつき。投手陣では両リーグ最多の被本塁打24本と、パの2位であるオリックスの山本省吾に10本差をつけて独走するエース成瀬、28イニングで7発を上げたコーリー、“職人の街”横浜から来た吉見の仕事ぶりにも注目したい。

花火とホームランにみる“諸行無常”を味わうべし。

 以上、ざっと駆け足でお送りした2010年度の野球場花火情報。

 決してホームラン至上主義というわけではないのだが、振り返ってみれば、子供時代に観たプロ野球の思い出は、ほとんどが夏休みに観たホームランだったりする。

 花火もホームランも、一発で散る儚さ、侘しさ、美しさは、同じ。その一瞬に集約されたゴージャスで暴力的で諸行無常な感情がいつまでも心に残ってしまうのだろう。

 とどのつまり、そんな花火が乱れ飛ぶこの季節の野球場はサイコーなのである。夏の花火を観に球場へ出かけてみては如何か。