大菩薩連嶺南部からの退却を強いられ、masuturi氏の率いるReconquistaは更に南へ進軍。
 
$オイカワだっていいじゃない


 べ、別にmasuturiってタイプするのが面倒な訳じゃないけど、今日は彼をアニキと呼ぼう。ホントは僕の方が少し年上なんだけど、この辺の渓流釣りの大先輩ってこともあるし、そもそもアニキは全くの偶然だけど、カミさんの中学時代の元カレもとい同級生。

 桂での今年の釣りに、悔いはないけれど、心残りがあるとすれば、今年は殆どイワナを釣っていないこと。そんな僕への親切心からか、

 ”イワナをバカバカ釣らせてやるぜ~!”

 と、言うので、ついて来たのがまだ禁漁前のこの川。


 少し小雨が降るけれど、入系直後から、イワナが底から毛鉤めがけて垂直に突き上げてくる。コレでしょ、コレ!


 ところが、次第に雨脚が強まり、反応はその後芳しくない。なんとか底を意識して探ってみるけれど、次に出たのは良型のヤマメ。ただし、軟弱な竿を選んだのが失敗だった様で(あえて竿のせいにする)、抜ききれずにポロリ。こういう源流域では固めの竿の方が良いな~なんて思ってたら次は4寸ヤマメ。


 ア、アニキ...........今日はイワナを釣らせてくれるんじゃ???


 この日はアニキもテンカラでスタートしたのだけど、時折チビが見に来る程度らしい。

 本降りになる雨。こういう時はそれが魚の問題か、人間の問題か良く解らんが、あまり釣れた覚えが無い。

 もう少し深いレンジを探る為?、アニキはルアーに持替えるがそれでもダメな様だ。

 今日はこのまま終わっちまうのか???



 流れの中から拾い出したのは、飛行に失敗したのか、ムササビの亡骸

$オイカワだっていいじゃない


 お前らも帰れ!ってこと?

 帰らないよ。



 早朝から入り、そろそろこの沢も終点に近づいた昼頃、天気は次第に回復。

 僕にもアニキにも明るい兆しが。お互いなんとかレギュラーサイズのイワナを釣った後には...

$オイカワだっていいじゃない


 尺近くあるか~?ま、サイズなんてどうでもいいぜ~!なんていいながらもちょっと気になったのでメジャーを借りて計測。9寸だった。

 直後にアニキは...

 $オイカワだっていいじゃない

 これは計ってみたら、尺上。


 普段はメジャーなんて使わないけれど、アニキとの勝負は中学時代から始まっていた訳で?ここはキッチリとカタをつけなければいけなかったのだ。

 あの頃、僕らは全く別の地にいたけれど、でも、中学生男子なら一度は計測したことのあるアレの代りに今日はイワナを計測するのだ。

 勝負には負けたけど、アニキの釣ったイワナは間違いなく僕が今までに見たイワナの中でも、最も美しいイワナの一尾だと思う。一般的にニッコウイワナと呼ばれるごく普通のイワナだけど、このイワナは体高もある流線型で、この沢の色を反映した白っぽい色も含め、まるでヤマメだ。

 一時はどうなるかと思ったけど、なんだかんだで最高の幕引き!


 とは、ならないのが釣師の性。


 まだ時間はある。途中で枝分かれしたもう一本の沢に行く事に。


 尺上を釣ったアニキに遠慮は無用。終始先行させてもらう。

 9月までの他の河川の渇水がウソの様に、この日のこの沢は増水気味。

 それでもテンカラ的に普通のポイントに着いて居る魚はポツポツだけど、先行する僕が拾い、後追いのアニキは流れの速い泡の真下からルアーで釣る。

 もしかしたら、先行するテンカラと後追いのルアーと言うのは、一本の沢を攻める最高のコンビネーションなのかもしれない。腕の立つアニキはこの沢で僕の倍以上釣ったけどね。

 $オイカワだっていいじゃない


 朝から滝に打たれ、その後も雨に打たれ続けて冷えきった体を暖める為、帰り道にアニキとラーメン屋に。ただ単に、アニキ自身が喰いたかったのか、それとも僕への気遣いなのか、そのラーメンは僕の育った街の味。

 除夜の鐘は聞こえないけれど、これは僕らの年越ソバ。正月はまだまだ先だけど。


 アニキに、なんで自作ルアーの名前が”レコンキスタ”なのか聞こうと思ったけど、血なまぐさい話が始まるとイヤなのでヤメた。

 自分のごくありふれた逆さ毛鉤にも、その毛鉤を育ててくれた山にちなんで”大菩薩”なんて名前をつけて見ようか?

$オイカワだっていいじゃない

 やっぱヤメとこ


 でも、僕はこの毛鉤を信じている。来年も、イワナはこの毛鉤に飛びついて来る....





 ハズだ。