イワナという魚は不思議な魚だ。
そもそも、なんであんな山奥に棲んでいるの?
海から来たのなら、どうやってこんな滝、登ったの?
どうしていろんな色や模様のイワナが居るの?
答えは色々と用意されているけれど、でも本当の事は解らないことも多いハズ。
何万年も前の世界を見た事ある人なんてイナイ。
山だって、川だって、今とは違う姿だったハズ。
外見的な特徴は、必ずしもDNA分析の結果とは一致しない事もあるらしい。
秩父で何十年も釣をしてきた人が、
『コレがチチブイワナだ!』
と言えば、DNAが何を言おうと、それはチチブイワナで良いのだと思う。
どんな学者にも、昨日釣りを始めた様な自分にも、それを否定する根拠も理由も見つけられない様に思う。ニッコウイワナにしろ、ヤマトイワナにしろ、それを生物学的なアプローチから定義しようなんてのは、それはそれで面白い研究なのかもしれないけど、ちょっとムリがある様な気がする。
だけど面白いと思えるのは、イワナには常に人の生活と関わって来た歴史があるから。
ヒトとイワナの歴史になにがあったのか?
これはちょっと興味をくすぐるワケで........
だから尾根の向こうに行って見た。
と、言うのも、この辺の沢にも、大昔からのネイティブなんじゃないかと疑わしきイワナがいる。
だけど、勿論、人の手によって運ばれたという可能性は否定できない。
もっとも怪しいのが、尾根を越えた向こうの沢。そんなヤツがいいかにも居そうな、人の手があまり入ってなさそうな沢。しかも、山道を使えば数時間で行き来出来そうな距離。
そして肝心な事は海との出入り口が違う、全く別の水系であると言う事。つまり、仮に同じく北の海から来たイワナであったとしても、狭い流域の中で長期間の近親交配を続ければ、当然、外見的特徴にも差異が出るハズなのだ。
外見的特徴の差異は遺伝的要素だけでなく環境による要素もあるのだろうけど、それでも、そんな二つの沢で、ソックリな特徴を持ったイワナが居たとすれば、それはイワナが何らかの方法で自力移動したのでなければ、人が運んだかのだろう。
とにもかくも、どうせ渇水の沢だけど、ボウズ覚悟で行って見た。
やっぱりチビが多いけど、こんな小さなポイントで意外に良いサイズが出たりしてビックリ。
うーん、ちょっとあの沢とは違うなァ....
別の沢にも行って見たけれど、その沢は源流部に林道や堰堤があり、予想通り放流魚の子孫と思われる、この辺でよく見るイワナ。
水少なく、細くて荒れた沢だけど、ボサと倒木に守られているのか、こちらの方が大きなイワナが多かったりするから不思議。
イワナの謎は益々深まる。
でも......
また一つ、初めての沢を登り
また一つ、イワナの釣り方を覚え
また一つ、帰りの山道を見つける
そんな冒険ごっこが、やっぱり楽しい。