$オイカワだっていいじゃない
 黒い影に再会した。
 
 その釜は高さ2m程の滝下にあり、泳いで取り付けば登れる滝だけど、源流チックな渓相と相反して、集落も道路もすぐそこにある里川、ちょっと気が引ける。

 巻き道もなさそうで、言わば通ラズだ。

 ならば、滝の上から釣っちゃえばいいんじゃないの?


 とは言っても全く釣れる気なんかしないし、今日はそもそもキャス練だ。




 ルアーの。


$オイカワだっていいじゃない


 masuturiさんにリールを貸してもらったばかりでなく、ハンドメイドミノーの作り手でもあるので既製品お古のルアーをたくさん頂いてしまったのだ。

 この釜に来る前に、ルアー童貞を喪失してしまった。

 6寸に満たないかわいいイワナだったけど、この川でテンカラではほとんどイワナは釣れないので嬉しい一尾だった。

 写真撮影は拒否されちゃったけど、テンカラ的にも美味しいポイントで出てくれた。

$オイカワだっていいじゃない

 テンカラ師の多くがルアーを経験しているみたいだけど、自分にとっては全てが新鮮。

 正直に言えば、スプーンやスピナーの面白さは良く解らなかった。釣れなかったし。

 スプーンなんかは熟練すれば、そのシンプルさ故の面白さがテンカラ同様あるのかもしれないけど....

 でも、ミノーは面白い。

 大きな淵を泳がせてみる分には、ただクネクネ泳ぐだけで、それはそれで可愛いのだけど、面白いのは瀬を通す時。

 イワナが出そうな石の廻りをスイスイと泳いでくれる。

 そして、その辺で出るだろう!って石の付近で巻くのをやめてテンカラばりに誘ったり、そんなに都合良くは出てくれないのだけど、なんだか楽しいのだ。

 前回、どうにもならなかったキャスティングもちょっとだけ進歩。

 良い所にミノーが入れば、タダ巻きするだけで、必ずと言って良い程魚の追いがある。

 チビが殆どだけど、時にはかなり良いサイズも。



 そして、この釜


 前回は渕尻の方からスーと落ち込みに消えて行った40cmはあろうかと思われた黒い影。


 ソイツが着いていた辺よりちょっと下流にミノーを投げて、巻いてみれば....

 ウッ 根掛かり?マズイ 回収できないジャン!!

 イヤイヤ 魚? 落ち込みに逃げ込んだゾ!!


 なんせ、ちゃんとルアーで釣りをするのは今日が初めてだ。

 心臓バクバク。判断を誤った。というか、冷静な判断なんか出来る訳がない。


 リールが着いているのだからもっとギリギリまで寄せれば良かったのか?

 それとも誰かさんみたいに釜に飛び込めばよかったのか?


 自分は強引に抜き上げようとして、結果あと1Mのところでポロリ。


 テニスボールが入りそうな大きな口にはしっかりミノーが掛かっていた様に見えたのに。


 イワナではなかった。

 上流には管釣りもあるのでニジマスの可能性は否定できない。

 でも、あれはヤマメだ。

 この小渓流では多分最大クラスのヤマメだ。


 そう、信じよう.......



 その後も、ヤマメは釣れた。


$オイカワだっていいじゃない


 渕尻の後ろから、落ち込みの泡に直接ミノーを投げ込んで、中にいる魚を引っ張りだすなんてテンカラでは出来ない芸当だ。

$オイカワだっていいじゃない


 嬉しいけれど...........




 ちょっと複雑な気分。