前夜は20年来の仕事仲間が集まり久しぶりの酒宴

当然、翌朝は早起きなんて考えていなかったけど

禁漁を目前にして

やり残した夏休みの宿題をギリギリになって片付ける小学生の様に

思い入れがある小さな沢に午後から来てみる。




盛夏に比べれば、明らかに衰弱した陽の光りだけれども、

もともと暗いこの沢ではありがたく、そして心地よい。


下流の方に居る筈のヤマメは出ず

最初からイワナ。

イワナを釣りに来ているのだからそれで良いのだけど、

珍しく出てくれた良い型は掛けられず

小さなイワナばかり。





この沢はそれでも良いと思って来ているのだけど、

今年の雪で倒木が多く、竿をだせるポイントが激減しているだけでなく 

只でさえ傾斜がキツい沢なのに、溯行が更に大変だ。






この山がまだ裸の赤子だったのが、いったい何億年前の事なのか知らないけれど

それに比べれば僅か一瞬にして出来上がったこの植林も

人の手が入らなくなればいずれ絶える事だろう。


その跡にはきっと小さな草が生え

もう少し大きな草木が地表を耕し

落ちて来る大きな木の実が育つ土壌を作るだろう。


大きな木は、広い範囲にしっかりとした根を張り、

複雑に張り巡らされた根は、岩山の上に張られた表土をしっかりと押さえつつも

土壌に小さな隙間を無数に作り

山に降った雨をたっぷりと蓄え

少しずつ沢へと流すから

沢の水は増え

溜まった土砂は押し流され

小さな砂利のベットが沢山出来て

イワナは其処で子を増やし

少し大きな淵ではイワナの遊泳が沢山見られる様になるだろう。



その姿を、自分が生きている内に見る事が出来ないだろうという事は残念だけれども

その姿を再び見ずして種ごと絶えてしまった生き物の無念に比べればたいした事ではないのかも知れない。







いつもなら、大滝を巻くか巻かぬかで悩むのだけど

今日はその前の小滝のポイントで一尾も出ず、

それは、多分くっきりとした足跡のせいだとは思うけれど、

なんだか変な疲労を感じて

大滝を見ずにして、引き返す事にした。








少し退屈な登山道歩きだけれども、猿の顔をした岩が面白かった。