まだ堀江さんが元気だった頃、多分正月だったと思う。

釣り始めにTTC(東京トラウトカントリー)を一人で訪れた事があった。

厳冬期と言う事もあり、なかなか釣れなかったと思うけど、堀江さんが自分の為にその場でミッジフライを巻いてくれて

これでやってごらん

と、優しくしてもらい

それでニジマスを釣った事は

心に残る思い出。




数年後、車イスの堀江さんに

どう話かけて良いのか解らず

今思えばミッジフライのお礼だけでも良かったのでは無いかとか

挨拶だけでも良かったのでは無いのかとか

結局それが私の見た最後の堀江さんだった事は

ずっと心残りだった。



そんな心残りも

TTCで行われた三回忌イベントで

釣りバカのみなさん達と

バカっ話で盛り上がり

釣りをしたりして

やっと

"に"

がついて

心に残る思い出に昇華させることが出来たのかもしれない。







翌日、日曜日のM君との釣りも

一緒に行きましょうなんて言いながら

去年は行けずじまいで

心残りの一つだったけど

今年は大好きな沢の初釣行に

付き合ってもらう事になり

水が冷たかったり

先行者が居たりしたけれど


核心部ではソコソコ魚も出てくれて

流心のど真ん中から気持ち良くヤマメが出てくれたり



お互いに綺麗な魚を釣って

心に残る釣りとなった。




やりたい事を全部出来るわけじゃない。

でも心に残る思い出を誰かと作る事は

心残りを1つずつ消してくれて

記憶の総重量は変わらないハズなのに

筋肉痛で身は重くとも、

ココロはズット軽やかに。



深い谷の沢床に身を置いて

遊ぶ事の喜びは


今は亡き大先輩の釣師達とも

世代を超えて

共有出来る想いなのだと思う。



心残りのない

心に残る釣りをしたいと思う。





でも、たとえヤマメが釣れたって

もしあの時

M君が水汲みの時に流してしまったコッヘルを

ギリギリセーフで回収出来てなかったら

肌寒い谷底で

熱いコーヒーにありつけず


それはきっと

いや間違いなく


心残りだったハズ。






街路樹のハナミズキが咲いていた。

藤の花はもう少し先だ。