雨台風が去り

梅雨が明けて

土用入り。



強い陽射しは

生い茂った木々の葉が作る影を

いちだんと黒くして


一方で増水した川面を

覆い尽くした泡の白を輝かせる。





谷底には

生温かい南風と

沢水に冷やされた空気が

交互に行き交う。



雷鳴も

突如降り出した激しい雨も



それら全てが気持ち良い。



増水時の釣りは楽しい。

それが釣れるか釣れないかは

たいした問題じゃなくて

難しいゲームはより一層と熱中させる。




強い流れを跨いだ

岩盤沿いの僅かな緩い反転流に

差し込んで揺らした逆さ毛針には

少し金色を帯びたヤマメ。






こんな色の賞を貰った

遠い夏の日も

何かに熱中していたと思う。


それはもちろん記憶の片隅にはあるけれど

こんな日に蘇るのは

寧ろ体が記憶している

夏の日の、

このなんとも言えない気持ち良さ



そのなんともが何なのかを

言葉にしたくて本の中を探すけど

見つからない。


だからとりあえず

決まりきった挨拶で、

ごまかそうと思うけれども


暑中お見舞いなんてやめといて


暑中お祝い、申し上げます。