私は友人が少ない。
それは定量的な意味でいないのももちろんあるが、自分の中でぼんやりとまとまっている、私なりの「友人とは」という定義が非常に狭義だからだ。
そんな話をしたら、うちのオーナーが
「ワシは友達多いけえ」
というので、心底驚いた。
島の同級生以外に友達おったっけと尋ねたら、
「お前が知らんだけでめっちゃおる」
と若干ドヤ顔で畳み掛けてくる。
具体的に誰がおるん?と問い詰めたら、スーパーのレジのおばちゃんに始まって、行きつけの喫茶店のママ、問屋と仲卸のお兄ちゃんに大家のおかあちゃんが続いて、挙げ句の果てはご近所で毎日犬の散歩をしている私のママ友・リカちゃんの名前まで連ねてきた。
いやいや。
他の人はともかく、近所のリカちゃんはどう考えても私の方が距離感近いし、リカちゃんだって私とオーナーのどっちがより友達に近いかといえば絶対私やろ。
どうやら彼の「友達」の定義をまとめると「週に2回以上おしゃべりして、その会話が不快じゃない人」のようなのだ。
なので前述の皆さんはオーナーにとって全員「友達」というわけである。
私は、それは極めて友好的な経済的利害関係者、もしくはただのご近所さんなのでは?思ったが、まあそれは人それぞれだ。
本人がそれでハッピーなら何も悪くない。
とはいえ、やっぱこの人変わってるなと思いながら、会話を切り上げて席を立とうとする私に、オーナーがこう言った。
彼に似合わない温厚な、そして少し憐憫の混じった眼差しを私に向けて。
「友達ってええぞ」
……やかましわ。