かわいらしい表紙と
簡単なことばで綴られる優しい世界に
すっかり油断。
思い返せば
骨太な社会派の小説や
文学的な示唆に富む小説よりも
こんな本に
ぐらぐらっと心を動かされることの方が
多いかも
命のこと、夢見ること、
誰かや何かを愛すること
思い出を振り返ること。
そしていま、叶わない思いを抱いたまま、
愛するものたちと別れていかなくてはいけない
その過酷な運命を受け入れることの苦さ。
一瞬の中に永遠がある。
もし、世界に魔法や神様が存在せずに
肉体の終わりとともに
魂も消えてしまうのだとしても
記憶や思い出は無にならない。
死によってしてもぬぐい去ることができないのだと。
いま生きているすべてのひとびとに
例外なく
いつか命の終りが訪れるのだ。
つまりこれは
命の終わりの時を見据えて
人は何を考えるのか
そういう物語なのだった。
『桜風堂ものがたり』
村山早紀/PHP研究所
物語の登場人物と同じように
心を動かされ
はらはらと
涙が落ちる。
わたしの中にも
心の隅で
泣いている子どもがいる。