池島ゆたか監督最新作
『こけしと花嫁』

スタッフ
監督…池島ゆたか
脚本…五代暁子
撮影監督…清水正二
撮影…海津真也
音楽…大場一魅
編集…山内大輔

(感想)
自動車修理工の本間宏(那波隆史)は、独身の中年男性。思いきって参加したお見合いパーティーで知りあった20代のOL・ゆりえ(めぐり)とデートを重ねているうちにトントン拍子に婚約することになる。

降って湧いたような幸せに、本間はすっかり舞い上がっていた。ゆりえに料理学校に行きたいので学費を援助して欲しいと頼まれると2つ返事で了解。そんな時、本間は道端に転がっていたコケシを発見。汚れをとり花壇の脇にそっと置く。その夜、見知らぬ若い女性(川越ゆい)が本間の家にやってきた…。そして…。

池島監督130本目の本作品は、先の読めないサイコサスペンス。
男と女の愛憎の糸が、複雑に絡み合いさらに
収拾のつかない方向へ。
仕事一筋に真面目に生きてきた男が、いきなり落ちる罠…。

予想を越えた展開と身の毛もよだつ怖さがいりまじり、まさに池島マジック…。

登場するのは3人の女性。最初は3年間、本間が契約していたテリヘル嬢・マオ(沢村麻耶)。いきなり本間から、婚約したから契約を解除したいと言われて、その場は『おめでとう』と答えたが、内心は複雑な感情が押し寄せてきたのが手に取るように伝わってきて切なかった。

そして男を手玉にとる、若いOLのゆりえ(めぐり)。若さとはちきれんばかりの肉感的な体を十二分に利用して二人の男を操る。またコロリと騙される男の人の良さが痛々しい。

そして謎の若い女性(川越ゆい)。本間に頼まれるまま、ゆりえの素行を調査してありのままに報告する。痛みつけられ、傷をおっても健気に本間に尽くす。しかし…。

ラストの残忍さに呆然に…。

エロもたっぷり、そして強欲な人間の生々しさをこれでもかとつきつけられる。

それでも街は、そして日常はなにもなかったように過ぎていく…。

街を歩く人は、道端のコケシに気づく人もいない…。

安易な内容の映画ばかり見て、すっかりなまくらになった脳ミソにいきなり、冷たい水を浴びせられたようだった。

9月1日まで。上野オークラと横浜光音座で上映中。
女性は決して一人ではいかないで下さい。