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昨日、パピヨン笑君が2月に亡くなっていたことを、遅ればせながら報告させていただきましたが、その他にはとりたてて大きな変化もなく、平和な日常が過ぎて行っています。

 

ただ少し思うところがあって、2頭の犬を紹介させてください。

 

1頭目は銀ちゃんです。

銀ちゃんは、母犬の金ちゃんと共に、カラーボックスのような小さな箱を唯一の寝床として与えられ、繋がれっぱなしの暮らしを続けていました。

 

真夏の直射日光の下でも、真冬の雪の中でも、それらをしのぐ術はなく、徐々に衰弱していました。

 

見かねて、何度となく飼い主さんを説得しましたが、飼育環境を改める気もなさそうで、また本人的には「可愛がっている」「大事にしている」と言い張り、「犬がいないと寂しいから」と、なかなか私たちに引き渡してもくれませんでした。

 

やむなく、夏場には我々がよしずを持っていって、日陰を作ってやるなどの対応していましたが、いよいよこのままでは危険だと感じるようなり、また飼い主さんも高齢であることから、根気よく説得してようやく譲り受けた経緯があります。

 

2017年7月。6年前のことでした。

 

そして2頭目はタッチです。

タッチはさらに複雑な生い立ちを持っていて、しかもなぜかその生い立ちを後になってから、明確に知ることができた不思議な犬です。

 

タッチの最初の飼い主は若い夫婦で、住居は賃貸アパートだったそうですが、仔犬時代は室内で大切に可愛がられて育ったそうです。

 

ところがその後、夫婦は離婚。アパートも引き払うこととなり、両者ともにタッチを引き取る気は無かったようで、そのままタッチは捨てられました。

路頭に迷っていたタッチを気の毒に思って引き取ったのが2番目の飼い主です。

 

しばらくは平和に暮らしていたようなのですが、ある時タッチはその飼い主の元を脱走してしまいます。

 

放浪していたところを保健所に収容されました。

 

大事にされている犬なら、飼い主も必死に探しているはずですので、公示期限が過ぎる前に飼い主が現れて、そのまま戻されて一件落着です。

 

が、そうでない犬も多く、このまま公示期限が過ぎれば殺処分になるため、やむなく保護団体が引き出して、保護をしながら里親を探すことになります。

ところがタッチの場合、なんと公示期限の前に飼い主が現れたのです。

にも関わらず、なぜか現れた飼い主はタッチの引き取りを拒否しました。

 

「もういらない」と言います。

 

さらには「もともと捨てられて可哀想だったから世話してやっていただけで、飼いたかったわけじゃない」と言い放ちました。

 

2017年1月のことでした。

 

銀ちゃんタッチもそれから2年間ポーズハンズで暮らすことになります。

 

2頭とも、サイズは15キロ〜20キロほどもある中型犬ですので、なかなか里親希望者が現れませんでしたが、というのは不思議なもので、2頭共よく似たタイミングで「ぜひ」と言ってくれる希望者さんが現れて、無事に卒業することになりました。

 

ご存知の方も多いとは思いますが、保護犬の里親になるのは簡単ではありません。

 

希望者さんの年齢や家族状況、家庭環境など厳しい条件をつけた審査を行いますので「何様のつもりだ!」とお叱りを受けることも少なくありません。

 

憤るお気持ちはわかりますが、不幸な生い立ちを持つ保護犬たちを、二度と不幸な目に遭わせたくないと思うからこそ慎重になってしまいます。

 

そして私たちの審査が必ずしも正しいわけではありません。

お断りした方の多くは、本当に優しく素晴らしく、終生大切にしてくれたであろう人だったかもしれません。いや、その可能性はすごく高かったと思います。

 

また、その逆もあります。

 

私たちの見る目がなかったと言われればそれまでですが、希望者さんの年齢も収入も家庭事情も申し分なく、何より熱意が素晴らしく、「この人なら」と思わせられたパターンもあります。しかも少なからずです。

 

その犠牲者銀ちゃんタッチになります。

 

ある日突然、

 

両者ともに。さしたる理由も言わず、それどころか後ろめたいそぶりもなく、

 

ただ「もういらなくなったから返す」と。

 

「今後は絶対に辛い思いはさせたくない」と固く誓って、保護をして、里親に送り出したのに、タッチからすれば、私たちが保護をしていた期間を合わせれば、合計4度捨てられたことになります。

今度こそ、不幸にはしたくないと反省し、タッチの里親募集はもうしないことにしました。

生涯ポーズハンズのマスコット犬として暮らしてもらうことになりました。

 

ここまで長々と書いて、何が言いたいかと申しますと、里親になりたいと申し出てくださる方々は、いや、動物を飼おうとする方は、どうか一過性の衝動や同情や熱意で、愛情や正義を語らないでください。

 

我々はついついそんな熱意に打たれて信じてしまいます。

 

「ウソついたわけじゃない。その時はそう思っていただけで、誰だって気が変わることはあるだろ?」

 

なんて軽い気持ちが、どれほど犬を気持ちを踏みにじり裏切ることになるのかよく考えて欲しいと思います。