「昼顔～平日午後３時の恋人たち」
第９話
崩れていく日常・・・夫の涙
乃里子） ふ～ん。それがあなたの本当の顔なんだ。
あなた。私がこの人の妻だと知って近づいて
きたんでしょ？ 最低ね。
紗和） 誤解よ。
乃里子） しらじらしい。影で笑ってたんでしょう？
北野） 違う。
紗和さんはホントに何も知らなかったんだ。
乃里子） 何が紗和さんよ。かばうわけ！？
北野） 行こう。
乃里子） ちょっ…。放して！
北野） 帰って話そう。
乃里子） ちょっと。やめてってば。
これを修羅場というのでしょうか？
私にはとうてい実際に起こっている
出来事とは思えませんでした。
乃里子） 泥棒猫。
（本棚から落ちて来た本から紗和を庇う北野）
ただ、
かばってくれた彼の手のぬくもりが、
現実だと教えてくれました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
三島） そういえば、あの事件の前日にあった火事、
覚えてますか？
紗和） はい。うちのバルコニーから見えました。
三島） 一部では、既に報道されましたが。あれ、あ
そこの奥さんが、不倫の果てに、放火したも
のだったんです。昼顔妻っていうんですか？
本気になっちゃってね。家を出ていくために、
自分の家に火を付けたそうです。人間、ひと
たび道を踏み外すと、自分がどこにいるか
分からなくなる。１日も早く考え直したほうが
いいですよ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
利佳子） 紗和ちゃんと乃里子さんが、
あわや乱闘とはね。
紗和） 笑い事じゃありません。
利佳子） だっておかしいじゃない。
不倫なんてあり得ないって言ってた紗和ちゃ
んが、不倫相手の奥さんと、図書館でつかみ
合い。不倫なんて遊びだって言ってた私が、
何もかも捨てて、男の家に転がり込んでる。
こんなおかしなことないわ。
紗和） ３か月前は、今の私、想像もしてなかった。
利佳子） あなたはここで踏みとどまりなさい。
変化のない生活にも、貴さがあるわ。
失わなきゃ分からないけど。
紗和） 私も、ずっとそう思ってました。激しい幸せは
望んじゃいけない。ささやかな幸せこそ、大切
なもの。だから、ご飯作って、お弁当作って、
パート行って。つまらないけど、それが幸せな
んだって、思い込もうとしてた。でも…。
利佳子） ご主人と別れて、北野先生と一緒になりた
いのね？ 紗和ちゃん。
紗和） ひどいですよね、私。でも、とっくにうちは壊れ
ていたのかもしれません。それをただ、気づか
ないふりをしていただけ。何かを手に入れたい
って、強烈に願うだけの自信がなかったから。
利佳子） 分かるわ。痛いくらい分かるわよ。でも、無
理よ。彼は奥さんと別れない。女は、自分の
好きになった人を、特別だって思いたがるけ
ど、特別な男なんていない。女には、遊びの
恋ができないのと同じよ。主人の雑誌にね、
昼顔妻は、家庭を壊さず、器用に情事を楽し
むって書いてあったけど。私がなって分かっ
たわ。そんな余裕ない。深い関係になって、
「ああ。この人好きかも」って思った時には、
本気になってる。所詮、昼顔妻なんてどこに
もいないのよ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
夫は私が告白するのを封じました。
私との生活を守りたいのでしょうか？
それとも聞きたくない事に
耳を塞ぎたいのでしょうか？
心の中はこんなに変わってしまったのに。
いつもと全く同じように夜は更けました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
博美） さっき、北野乃里子さんから電話がありまし
た。あなたに、夫を誘惑されたと。はぁ～。
幸い、今は公にする気はないと仰っていまし
たが。店長もどう対応すべきか、頭を抱えて
おられます。
紗和） 首、ということでしょうか？
博美） 解雇はしたくてもできません。労基法があり
ますからね。泥棒猫でも飼うしかないんです。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
恋する女は美しいなんて嘘です。
恋は女を嫉妬に狂わせ、
人のものを奪えと唆し、
人を傷つける痛みまで麻痺させます。
私はこの年まで知りませんでした。
醜くなれない女に、
恋をする資格はないのです。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
美鈴） 前略。ご主人を私に下さい。
お姑さんからお聞きになってますよね？
私、課長が好きなんです。
紗和） ちょっと待って下さい。
美鈴） 課長は意気地なしだし、私も最初は暇つぶし
だったんです。男として自信をなくしかけてる
年代って、振り回すと面白いから。でも、いっ
つも真に受けておたおたする課長が、本気で
かわいく見えてきたんです。
それに、奥様不倫してますよね？
紗和） 何よ。それ？
美鈴） 課長気づいてますよ。すごく悩んでました。
紗和） やめて下さい、。
美鈴） やめてほしいのはそっちですよ。
失礼しました。とにかく早く課長と別れて下さい
ね。私は奥様と違って、結婚したら不倫なんて
しません。それじゃあ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
一つずつ、確実に、
私の世界は壊れていきました。
全てから逃げ出したくて、
家に火を付けたという奥さんの気持ちが、
分かるような気がしました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
紗和） 待って。誤解じゃないの。
気づいてたんでしょう？
私、他の男の人を好きになってしまっ…。
俊介） やめろ！
くだらない冗談やめようよ。なっ？ ハハハ。
紗和） 冗談じゃないの。
俊介） ♪ある日、森の中、くまさんに出会った～
花咲く森の道～くまさんに出会った～
はい、ママ。はい、ママ！
♪くまさんの…
紗和） パパ…。
俊介） はむすけたちも一緒に。はい！
♪くまさんの～言うことにゃ～
お嬢さん、お逃げなさい～
スタコラ、サッサッサノサ～
スタコラサッサッサノ…
…何で言うんだよ？
せっかく見ないようにしてんのに。
紗和） ごめんなさい。私、もう…。
俊介） 黙れ！
ママはさ、平凡だけど、可愛い奥さんじゃない
か。ちゃんと家事もやってくれるし。毎日、パー
トで、一生懸命働いてくれてる。子供はいない
けど、一緒に買いもんだって行くし、一緒にテ
レビ見て笑うし。誰がどう見ても仲いい夫婦だ。
このまま、はむすけたちと一緒に、穏やかに
年取ってくんだよ。
紗和） 嘘よ、そんなの。そんなの私じゃない。
ごめんなさい。
どこへ行ったらいいか分からなかったけど、
私はもう、あの家へ帰ることはない。
そんな気がしました。
思い出の場所は、
変わらずそこにありました。
神様が私に与えた罰の中で、
一番、大きな罰でした。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
加藤） どうした？
利佳子） 好き。
加藤） 行ってくる。
利佳子） 気を付けてね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
昼顔という花は、
地下に伸ばした茎でどんどん増え、
刈り取っても、刈り取っても
なかなかなくなりません。
そのため、昼顔は昔から雑草として
嫌われていたこともあるそうです。
まるで、別れようとしても、
別れられない不倫の恋のように。
誰か教えて下さい。
私たちは、
どこへ向かっているのでしょう？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
不倫相手の妻に「泥棒猫」と呼ばれ、勤め先でも「泥
棒猫でも飼うしかない」とまで言われてしまう紗和…。
泥棒猫なんてベタなセリフを自分が言われたら、妙に
感心してしまいそうで怖い。ホントに言うんだ～って。
不倫された妻のセリフとしては陳腐だけれど、勤め先
の女性が言った「泥棒猫でも飼うしかない」ってのは、
なかなかパンチのあるセリフだなぁと。グサッとくるね、
こっちのほうが。泥棒猫でも、ノラならまだしも、家猫
だっていうのは、なんだか心底情けない感じがして。
乃里子の行動は、先手を打つという意味で正しいし、
そうされて仕方ない事を夫はしたわけだけど。どうも
日本人ってのは、どんなに正義でも、強者の匂いが
してくると、弱者（に見える方）を応援したくなるところ
があって。やり過ぎじゃない？って目で見ちゃうのよ
ね。乃里子のようなやり方に対しては。いや、やられ
て当然だと思ってはいるんだけど。とはいえ、ドラマ
上、紗和に思い入れしてもらうため、妻側もちょっと
可愛げがないんじゃない？的演出にしたのだと思う。
激しい幸せを望んでしまう紗和。でも、激しい恋の後
に来るものは、やっぱり、平凡でささやかな日常で。
燃え上がる恋よりも、ずっとずっと長く続く、つまらな
い日常が、その先に待っているわけで…。恋の色眼
鏡がなくなっても、結婚相手として相性がいい場合も
あるだろうし、そうじゃない場合もあるだろうなあと思
ってしまう。紗和の場合は、俊介より北野とのほうが
幸せになれそうだし、俊介も、たぶん紗和より美鈴と
のほうが相性がいいように見える。北野は…子供が
できてしまったら、案外、乃里子といい夫婦になって
いきそうな気もするのよね。利佳子が言ったとおり、
男性は、あまり変化を望まないというか（一時的な、
ちょっとした浮気という刺激なら欲しいけど）、一度作
りあげた家庭を壊してまでの変化は望まないのかも。
その点、女性の方は、腹が決まると、あっさり全てを
捨てて、新しい道を選ぶような潔さがあるというか…。
中学生のように恋してる自分たちに酔っている紗和
と北野。死んでもいいなんて、煽る予告を流すところ
にケッ！と思ってしまって興ざめ。だってそんなに愛
しあってないじゃん！と思わずツッコミたくなって…ｗ
紗和＆北野より、利佳子＆加藤のゆくえが俄然気に
なるのですよ！ こっちのカップルのほうが真剣という
か、色気があるもので。そう！ 紗和＆北野カップル
に圧倒的に足りないのが色気、色気だと思うわけ！
でもまあ、そこが中坊カップルらしくもあり、それはそ
れでいいのだけれど…。ただ、元々は紗和の役は長
澤まさみにオファーされたものらしいので（彼女は断
ったｗ）、そうなると、上戸になったことでキャラ変した
ような気が。もし長澤まさみだったら、違うニュアンス
のカップルになっていたと思うから…。私的には、上
戸彩の紗和でよかったんじゃないのって思いますｗ
第１話～恋する妻たちの怖く痛く愛おしいラブストーリー
第２話～濡れたキス・・・妻たちの共謀
第３話～妻の失恋・・・本音語る七夕の夜
第４話～妻を強くする恋・・・覚悟のキス
第５話～悪女誕生。妻が一線を越えた日
第６話～秘密の恋がバレる時・・・夫の罠
第７話～恋の終わり・・・日常に戻る辛さ
第８話～妻の追求・・・修羅場はじまる
第９話～崩れていく日常・・・夫の涙
第10話～逃避行・・・試される愛の強さ
第11話～罪から始まった恋完結・・・妻が選ぶのは夫か恋人か
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