第６週 「笑顔をもう一度」
働きたい、働けない、君枝ちゃんものがたり
仕事の事を、
ご主人に言いだせずにいた
君枝ちゃんでしたが
昭一） どういう事や？
どういう事や？ 説明してくれ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
昭一） 働きたいって、どういう事や？
そんな…あかんやないか。
無理して体壊したらどないする気や？
君枝） 最近、調子ええのよ。
昭一） 過信が一番ようないて、今までさんざん、
お医者様にも言われてきたはずやろ。
君枝） 分かってます。
昭一） いや、分かってない。
君枝） お願いします…。やらせて下さい。
昭一） 君枝…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
麻田） へぇ～そないな事が。
明美） 抑えとったけど、相当怒っとったわ。
（ノックと戸が開く音）
君枝） おはよう。
すみれ） 君ちゃん。
君枝） 昭一さんに話をしたの。これまでの事も。
ここで、働いてもええって！
すみれ） ほんまに？
君枝） ええ。
明美） へぇ…。
君枝） ええかな？
今度は、ちゃんと責任持って、働きます。
明美） え…ええんちゃう？
君枝） ありがとう！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
すみれ） そう、ご主人、銀行に戻れたの。
ほんまによかったねぇ。
君枝） ありがとう。
すみれ） 健ちゃんもよかったなぁ。
お父さんに会えて。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
喜代） お母様に、行ってらっしゃいしましょ。
フフフ…。
すみれ） 行ってきます。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
すみれ） おはようございます。
麗子） ああ、来た来た。
すみれ） 麗子さん、いらっしゃいませ。
お早いですね。
麗子） せやねん。友達に赤ちゃんが生まれて
な、会いに行くねん。もういろいろ持って
いってやりたい思て。朝からドンドンして
開けてもろたんや。
すみれ） ありがとうございます。
明美） お待たせしました。商品です。
麗子） おおきに。朝早うから堪忍な。
ほな、またな～！
すみれ・明美） ありがとうございました。
麗子） ああ。
君枝） ありがとうございました。
麗子） うん！
すみれ） おはよう。
君枝） おはよう。早いね。
明美） フフッ。びっくりしたわ。
慌てて起きて開けたんや。
君枝） たくさん買うてくれたのね。
すみれ） あ…補充しないと。
君枝） そうね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
君枝） えっと…ずっと、テーブルクロスに取り
かかってて、こっちを作る暇なかったで
しょ？ 私は、時間があったから…。
すみれ） ありがとう、君ちゃん。
君枝） 並べよう。
麻田） ご主人、よう許してくれましたね。
君枝） はい。
すみれ） 君ちゃんのとこは、恋愛結婚
なんです。すごいでしょう？
麻田） 恋愛結婚？
どこで、知り合うたんですか？
君枝） 病院です。私、ずっと体が弱くて、
子どもの頃は長く入院してたの。
その病院に、昭一さんも入院してきて…。
と言っても、木から落ちてケガでね。
すみれ） フフッ。
明美） やんちゃやな。
麻田） ハッハッハ…。
君枝） そうね。退院してからも、
よう遊びに来てくれて。
それはそれは待ち遠しくて…。
明美） そうやろねぇ。
君枝） 優しくて、楽しくて、いつの間にか、好き
になってたの。昭一さんのお母様にも、
親戚にも、さんざん反対されたけど、全
部昭一さんが説得してくれて、守ってく
れたの。昭一さんのおかげで、信じられ
ないほど、幸せです。
明美） 羨ましいわ…。
すみれ） えっ？
麻田） ああ…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
すみれ） 君ちゃんがいてくれて、
ほんまによかったわぁ。
君枝） 何でよ…。
明美） 悪かったな、役立たずで。
すみれ） いや…そういう…そういう訳やない
んやけど…。はっ…ひと休みしよか？
明美） あ…賛成。
すみれ） おさ湯でも飲む？
君枝） あっ、うん。いいね。
すみれ） じゃあ、入れるね。
（よろける君枝）
すみれ） 君ちゃん…君ちゃん！
（倒れる君枝）
明美） 君ちゃん！
すみれ） 君ちゃん…。
明美） 君ちゃん！ 君ちゃん！
すみれ） 君ちゃん…。
明美） 聞こえる？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
医師） こんな体の弱い人が働くなんて、
とんでもない事や。
昭一） すいません。
医師） くれぐれも、無理はさせんように。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
明美） 麻田さんからや。
靴の修理しに進駐軍とこ行くやろ？
そこでもらったんやて。
すみれ） 何が入ってるんやろね。
明美） おっ…。
すみれ） わあ…。
明美） すごいな…。
これは、コンビーフの缶詰や。
クラッカー。
すみれ） あっ、お砂糖に、キャラメル？
ああ…！
明美） 果物をくれる時もあるんやて。
今度は、バナナ持ってくる言うてたわ。
君枝） すごいね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
すみれ） う～ん、おいしい。
君枝） すみれちゃん。
すみれ） ん？
君枝） 女学校の頃のお弁当、覚えてる？
梅干し一つの、日の丸弁当。
あの頃は、日本が勝つって信じてた。
そやから、気が張ってたのかな。
生まれた時、私は未熟児で、へその
緒が、首に巻きついてたの。あの時、
死んでもおかしくなかったって…。
でも、なんとか生きて…。助けてもら
った命やから、大切に頑張りたいっ
て…。戦争が終わって、日本が負け
て、私は、本当に抜け殻になってし
まった。けどね、すみれちゃんに、希
望をもらったのよ。一緒にやろうって
言ってくれて、とってもとってもうれし
かった。だから、応えたかった。役に
立ちたくて…。でも、頑張り過ぎて…。
昨日、昭一さんと話したの。仕事は、
辞めてほしいって言われた。私は、
昭一さんにも感謝してる。こんな私と
結婚してくれて、母親にまでしてくれ
て…。だから…。ごめんね。もう、戻
らない。
すみれ） 頑張って、早う元気になってね。
君枝） うん。
すみれ） 行こか。またね、君ちゃん。
君枝） ありがとう。またね。
明美） これでええの？
君枝） え？
明美） ほんまに、これでええの？
すみれの思い、
そして、明美ちゃんの言葉が、
君枝ちゃんの心に、
深く、響いたのでした。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ドラマは、ドラマの中で起こる事件、出来事が楽
しみだったり、登場人物のキャラが楽しみだった
り、もちろん、その両方のバランスがいいのが一
番面白いのだけれど…。事件派は、「とと姉ちゃ
ん」のような、出来事至上主義のドラマ、人物派
は、「てるてる家族」のように、それぞれのキャラ
をじっくり描くドラマを好むような気がするこの頃。
君枝ちゃんの恋愛や、生まれた時の事が語られ、
彼女の人となりが描かれた今回、ちょっと面白く
なってきたと思う私はやっぱり人物派だなぁと…。
中心となるキャラの背景が見えてくると、感情移
入もしやすくなるし、応援してあげたくもなる。そ
れは明美ちゃんも同じ。君枝の恋バナに、最初
は軽くツッコんでいたのが、最後は羨ましいと乙
女心をダダ漏れさせる明美ちゃんの可愛い事！
思わず、麻田さんとすみれが微笑ましそうに顔
を見合わせるところもよかった。今までも、庶民
代表、すみれたちに現実を教える担当の明美
ちゃんが頼もしくて好きだったけど、どんどん素
直になっていく明美ちゃんの人間臭いキャラが
更に魅力的に見えてきた。いつか、明美ちゃん
にも素敵な恋バナが用意されていますように！
君枝ちゃんのように、いつか「信じられないほど
幸せです」と笑顔で言う明美ちゃんが見たいよ。
麻田さんが進駐軍からもらってきたというものは、
今でいうミリタリー飯というものなのかな？ もぐ
もぐと食べる３人娘が子リスのようで可愛かった。
仕事を続けられないという君枝を思いやり、何も
言わず、「また来るね」と帰っていくすみれ。つい
つい「これでええの？」と、声をかけてしまう明美。
それぞれのつきあいの長さの違い、キャラの違
いが出ているというか。みんな違ってみんないい
状態で、四つ葉のクローバーになっていきそうな
予感が…。とりあえず試練の時ではあるけれど。
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