フランケンシュタインの恋
第７話
抱きしめたい
生放送で大パニック
怪物） 先生…。僕の体はどうなってるん
ですか？ 教えてください。
鶴丸） 君の体は、
無数の菌を保持している。
怪物） 菌？
鶴丸） 今もこの世にある無数の菌を、取り
込み続けている。人間にとって無害
な菌も有害な菌も、君は、保持する
ことが可能だ。君の体はそういった
菌を細胞に取り込み、心の在り方と
結びついてその感情の高まりから
外に放出する機能を備えている。君
の遺伝子は、深志研太郎博士が発
見した菌の遺伝子によってそのよう
に組み替えられたのだ。これは君の
自尊心、あるいは、虚栄心から生ま
れたキノコだろう。君の、心には、
これから、プライドや嫉妬やねたみ
やさげすみ、あらゆるものが入り混
じるだろう。人と生きるとはそうい
うことだ。そしてそういううもの
が、君の体の中で、こういうものを
生み出して行く。君は、そのことを
ちゃんと、知っておくべきだ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
怪物） 僕は…自分のことが心配です。
継実） ん？
怪物） 津軽さんと一緒にいるのが、怖い
です。津軽さんといたら、またああ
いうことが起きてしまうかもしれま
せん。ごめんなさい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
天草） え？ だけど、どうして研さんは、
そんな菌を持ちながら無事に
生きてるんですか？
鶴丸） 彼は、一度死んだからだ。
天草） は？
鶴丸） 120年前に一度死んで、
そして、蘇った。
天草） こんな時に何言ってるんですか！
鶴丸） 彼が、ラジオで言ったことは全部、
本当のことだ。
天草） そんなこと誰も信じませんよ。
え？ ウソでしょ。
鶴丸） 誰も信じない。だから公表できな
い。いたずらに好奇の目にさらせ
ば、どんな菌が、放たれないとも
限らない。
天草） 真面目に言ってるんですか？
継実） 本当なんです。でも、彼の心は
人間そのものなんです。人間以
上に優しいんです。彼の心が傷
つかなければ、彼は何もしません。
天草） それで見張ってるんですか？
あなたがそばにいれば、
彼は傷つかないんですか？
それ本気で言ってるんだったら
津軽さんは傲慢ですよ。
鶴丸） 傲慢なのは私だ。
彼の作り出す菌には、無限の
可能性があると私は考えてる。
天草） だから
秘密にしてたってことですか？
鶴丸） だがこの世には、
使ってはならない科学もあるんだ。
天草） ちょっと待ってくださいよ。
話についていけません。
鶴丸） 君達ラジオが扱ってるのは、人間の
心だろ？ 私は、心も、科学だと思っ
てる。どうか私欲で、彼の心を、使
うことはよしてくれ。彼を見世物に
しないでくれ。君の心を信じて、
心から、そう願う。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
継実） 私は深志さんのプライドを
傷つけたんです。
稲庭） え？
継実） 何があっても怒るななんて、
プライドを捨てろって言ってる
ようなもんですよね。
稲庭） 仕方ないよ。研さんは普通の
人間じゃないんだから。
これでよく分かったでしょ？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
怪物） また天草さんから、ラジオに
出るようにと言われました。
継実） えっ？
怪物） 天草さんは、続けるべきだと
言いました。だけど…。
継実） 迷ってるんですか？
怪物） 僕は、ラジオに出て、
いいんでしょうか？
継実） ラジオが、好きなんでしょ？
怪物） 津軽さんに出会うまで、僕には
ラジオしかありませんでした。僕
のように不安で、それでも人を求
めて、ラジオを聴いてる人がたく
さんいることを知りました。僕は、
その人たちを応援したいんです。
誰かが喜んでくれたら、僕は津軽
さんと一緒にいる喜びを、感じる
ことができるんです。だけど…。
また津軽さんを裏切るのが、怖
いんです。
継実） 裏切ったりなんかしてませんよ、
一度も。ラジオの中のあなたは、
とても素敵でした。ちゃんと、自分
らしく生きているんだなって思いま
した。私は、あなたに何かしてあ
げられるって、うぬぼれていただけ
かもしれません。あなたは、自分で
何かできる人です。自分で何かし
ないと、人と生きていることにはな
らないんです。そのことを忘れてま
した。
怪物） 僕は、ラジオに出て、
いいんですか？
継実） ラジオが好きなら、いいと思いま
す。私はあなたを応援するだけで
す。忘れないでください。私は、
あなたの一番のファンです。
誰よりも応援しています。
怪物） ごめんなさい。
今のは、何でしょうか？
継実） フフッ。抱擁です。
怪物） 何ですか？ この、感情は。
継実） 欲望？ ですかね。
怪物） 何ですか？ それは。
継実） こういうことです。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
怪物） 稲庭先輩、今まで、ごめんなさい。
たくさん助けてもらったのに。
たくさん教えてくれたのに…。
ごめんなさい。
人間の世界で生きて行くために
これを飲んで、菌を殺します！
稲庭） 待てって！ 違うんだよ！
そうじゃないんだって！
そうじゃないんだよ。
ラジオに出したのは俺なんだ！
研さんをラジオに出したのは…
俺なんだ。津軽さんから研さんを
引き離すために俺がラジオに出
したんだ。研さんが何か事件を
起こせば、津軽さんは冷静にな
れると思った。恋なんかしない…。
恋なんかできないと思ったんだよ！
だから俺が天草さんに会って、
研さんは怪物だと売り込んだんだ。
今日のことだって、俺はどこかで
こうなることを望んでたんだ。
研さん…。
人間じゃないのは、俺なんだよ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
怪物が放出させる菌は、食べられるキノコに
なることもあれば、人間を死に至らせる未知
の菌となることもある。いい感情も悪い感情
も、彼の中から新たな菌が生まれるきっかけ
となる。菌には良いも悪いも本当はなくて、
人間を基準にするから、人間にとって、良い
菌、悪い菌と判断されてしまうだけ。怪物を
「怪物」と呼ぶのは、人間だけなんだよね。
人間って、人間らしいって、
どういう事なんだろう。
考えれば考えるほど、
段々分からなくなってくる。
ドラマのために作られた歌じゃないのに、
主題歌となった「棒人間」の歌詞が心に
響く。こんなにも歌がしっくりくるドラマ
ができるなんて。卵が先か鶏が先か…。
ホント面白いね、人間は…。
どうせこんなことになるのなら
はじめから僕の姿形を
人間とは遥かほど遠いものに
してくれりゃよかったのに
（RADWIMPS「棒人間」より）
植物なら、植物らしい見た目にしてくれた
らよかったのにね…。怪物を作り出した
博士は…人間。人間とはかくも罪深い生
き物だと…つくづく思うドラマなのでした。
「棒人間」の歌詞はこちらで見られます。↓
「フランケンシュタインの恋」関連ブログ↓
ランキングに参加しています。
ポチっとしていただけると、嬉しいです♪
にほんブログ村
にほんブログ村
 |
ドラマ「フランケンシュタインの恋」オリジナル・サウンドトラック
2,700円 Amazon |
 |
しあわせの詩(初回生産限定盤)(DVD付)
1,800円 Amazon |