「舞いあがれ！」 第125回
第26週「私たちの翼」
空に橋を架けた鳥の名前「かささぎ」
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舞） こうやって…ここで、手ぇ離す。
分かった？ フフフフ。やってみ。
せ～の…ほい！
（家の前で紙飛行機を飛ばす歩）
舞） お～！ 飛んだ！ 上手やなぁ。
（紙飛行機を拾う貴司）
貴司） ただいま。
舞） お帰り。
（貴司に駆け寄る舞）
（舞を抱きしめる貴司）
歩） パパ！
（駆け寄る歩）
貴司） 歩。
舞） お帰り。
（歩を抱き上げる貴司）
貴司） ただいま。
おっきくなったなぁ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜ABIKILU＞
（動画撮影を始める舞たち）
堂島） 皆さん、準備はいいですか？
一同） はい！
舞） ほんならいきますよ…。
よ～い…スタート！
♪（カチンコの音）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（動画）
2020年7月 東大阪
舞） 「クルマが、空を飛ぶ！
ＳFのような世界を、実現しようとして
いる会社があります。大学のサークル
仲間2人で始めた小さな会社は、今や、
3億円もの資金を集める、注目企業と
なりました」。
刈谷） あちらが、試作中の機体です。
今年中に、人を乗せて、
空を飛ぶ予定です。
舞） 「そもそも、
空飛ぶクルマとは何なのか？」。
玉本） 垂直離着陸が可能で、
カジュアルに空を飛べる乗り物です。
舞） 「垂直離着陸というのは…」。
日下部） このように垂直に離陸して、
垂直に、着陸するってことですね。
刈谷） そのため、滑走路が必要なく、
あらゆる、場所と、場所を、つなぐ
ことができます。
渥美） 電気で動くので、経済的で、静か、
二酸化炭素を排出しないので、地球に
も優しい乗り物なんですよ。
西浦） ドローンを飛ばす要領で、
運転できます。
舞） 「そこで、気になるのが、
空飛ぶクルマの安全性ですが…」。
荒金） 「あらゆるエラーを想定しながら
数百回に及ぶ試験飛行を重ね、
安全に飛べる機体を目指します」。
（うめづで動画を見る章たち）
章） これこれ、
うちのチタン合金ボルトや。
古田） ちょ…場所変わって。
ああこれ。
雪乃） えっ、飛行機の部品
やらへんのとちゃうの？
章） いや社長がな、
今回の試作機の部品は、
うちの機械でもできる加工やから、
挑戦してもええよって。
雪乃） へえ～！
章） ほんでこれからは、本格的に
空飛ぶクルマに関われるように、
必要な資格も取ろ思て、頑張って
るとこです。
梅津） ほんだら、IWAKURAが
飛行機の部品作んねやなぁ。
章） はい。
（拍手）
男性） うっとこのカーボン！
曽根） どれやどれや！
男性） 見えへん。
御園） 見えません。
雪乃） 離れ！ 密になってる！
梅津） あかんあかん！
離れて離れて、離れて。
雪乃） ホンマにもう油断も隙も
あれへんでもう。
（動画）
刈谷） 「では、最後に…」
雪乃） 舞ちゃんや。
（動画）
刈谷） 「私たちABIKILUの目指す
未来を、執行役員の岩倉から、
ご紹介します」。
梅津） ちょちょちょちょ…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（動画）
舞） 「私たちの描く未来は、
空飛ぶクルマが、人を運びます。
例えば、離島から離島へ、そして…
山から山へ。会いたい人に会えない。
行きたい場所に行けない。
今の私たちは、その悲しさ、悔しさを、
よ～く知っています。だからこそ、
この空飛ぶクルマは、誰でも乗れる
ものにしたいと、考えています。
いつか、夢はかなう、このクルマが、
空を飛ぶ日が来ると、私たちは、
信じています」。
＜岩倉家＞
貴司） ママやで。
（動画）
舞） 「よろしくお願いします！」。
一同） 「よろしくお願いします！」
めぐみ） 立派ねえ。
祥子） ほんなこって。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜ABIKILU＞
電・刈谷） ではご連絡お待ちして
おります。失礼いたします。
玉本） えらい長電話やったな。
刈谷） ああ。動画を見た、ベンチャー
キャピタルからたい。「是非会ってみ
たい。その結果次第では、1億クラス
の出資も考える」って！
玉本） ホンマか！
刈谷） ああ！
舞） あの、皆さん。マスコミ向けの
有人フライトの日程が決まりました。
11月6日です！
荒金） よ～し、
いい風が吹いてきたようだ。
刈谷） ああ、いよいよたい。
ラストスパートかけよう！
玉本） そやな、気合い入れてこ！
一同） はい！
男性） よっしゃ～！
男性） よっしゃ～やるぞ！
アビキュラ２号飛ばすぜ～。
風間） この機体にまた一歩
近づきましたね。
舞） はい。
風間） でもこれ何でかささぎ
なんですか？
舞） 織姫とひこ星を引き合わせる
ために、空に橋を架けた、鳥の
名前です。
風間） へえ～。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
2026年
貴司） 「それから、６年」。
（アパートで、貴司の随筆を読む八木）
貴司） 「妻はテストパイロットとして、
飛行試験を繰り返し、仲間たちと
空飛ぶクルマの改良を重ねた。
やがて厳しい基準をクリアすると、
その機体はとうとう、日本の空を
飛び始めたのだ」。
「深海の星を知らない魚（うお）のため
カササギがこぼした流れ星」。
（窓の向こうの青空に、微笑む八木）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（がらんとしたABIKILUの作業場に、
一枚のポスター。「空飛ぶクルマ
『かささぎ』ついに実用化へ
2027.1．31 五島列島で運行開始」）
舞） 刈谷さん、来てはったんですね。
刈谷） おう、岩倉。来年、五島で、
かささぎの運用が始まる。
初フライトの操縦は、
岩倉に任すったい。
舞） はい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜IWAKURA＞
章） お疲れさんでした。
めぐみ） ありがとう。
章） 会長、ひと言お願いします。
めぐみ） 今後、会社は、
結城社長にお任せします。
長い間、ホンマに、
ありがとうございました。
一同） ありがとうございました。
めぐみ） 私は五島で、
母と暮らすことになりますが、
今後も、IWAKURAには関わって
いくつもりです。困ったことがあっ
たら、いつでも相談して下さいね。
一同） はい。
めぐみ） 結城社長。
章） はい。
めぐみ） 皆さん。
一同） はい。
めぐみ） IWAKURAを、よろしゅう、
お願いいたします。
（頭を下げるめぐみ、頭を下げる一同）
（花束を手に、舞と悠人が来る）
舞） お母ちゃん。
めぐみ） （涙）
舞） ホンマに、お疲れさんでした。
（花束を渡す舞）
めぐみ） 何やのあんたら。
悠人） おふくろすごいわ。
めぐみ） ありがとう。
一同） お疲れさまでした！
（拍手）
めぐみ） ありがとう。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
電・祥子） もしもし、さくら、
元気しちょっとね。
電・さくら） およ。元気しちょるよ。
うちもむっちゃんも。
電・祥子） そうね。年ん明けたら、
五島に行くけんね。
電・さくら） およおよ。待ち遠しかね。
電・祥子） 長崎から、
フェリーで行くけん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜みじょカフェ＞
修） たまには釣り以外のことば
しようで？ 3人で星ば見に行く
とかさ。
小田） やだよ、
釣りしに来てるんだもん。
修） ああつれなかね～。
さくら） 電話、祥子さんからやった。
小此木） おっ、ばんば、元気か？
さくら） およ。
若葉） 小田さん、小此木さん、
お待たせしました。
男性） よっしゃ。
（客を案内する若葉）
小田） ごちそうさまでした。
小此木） 行ってきます！
さくら・修） 行ってらっしゃい！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
2027年
（汽笛）
舞） きれいやなぁ。
歩） うん。
（祥子の車椅子を押す舞）
舞） ばんば、五島やで。
祥子） およ。
一太） 舞！
舞） ああ、一太君！
祥子） ああ…。
さくら） 祥子さん、会いたかったぁ。
祥子） 私もたい。
木戸） 祥子さん、お帰り。
祥子） ただいま。
やっと帰ってこられた。
木戸） よかった。
一太） 祥子ばんば、こいが進たい。
祥子） ばえー！
こんまか頃の一太そっくりたい。
信吾） 久しぶりの、島暮らしやね。
めぐみ） およ。
母ちゃんも、私もね。
信吾） 心配なか。
島もざぁまに便利になったとぞ。
めぐみ） およおよ。
百花） 歩ちゃん、
進と仲良くしたってな。
歩） うん。
（進に手を振る歩）
（手を振り返す進）
（笑い声）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（フェリー乗り場に停まった、
空飛ぶクルマ「かささぎ」）
（「祝 かささぎ就航ぎばって飛ぼうで！」
の横断幕を持った人々）
女性） 本格的な運用が待たれていた、
空飛ぶクルマ、かささぎ。本日から
五島の空を飛びます。島と島をつな
ぎ、住民の皆さんの、新しい足とな
るのです。
2027年。
空飛ぶクルマ、かささぎが、五島の
空を飛ぶ日がやって来ました。
舞） Knot section check and clear.
（機体の確認をしている舞）
舞） Front propeller check.
Front motor check.
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（機体の中で、計器類の
チェックをしている刈谷）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
めぐみ） 飛び出すとこば見届けたら
めぐみ丸で追いかけるけん。
祥子） およ。若葉によろしく。
めぐみ） およおよ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
舞ちゃんは、祥子さんと、
離島へ往診に向かうお医者
さんを乗せて飛びます。
医師） 刈谷さん。
刈谷） ああ、どうも。
医師） あれで飛んでいければ、
離島に暮らす人たちのケアも
丁寧に行えます。
本当に助かります。
刈谷） お役に立ててうれしいです。
よろしくお願いします。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（進を見る歩）
歩） うちのお母さん、かっこいいやろ？
進） およ！ かっこよかね。
歩） 私もな、将来パイロットになんねん。
宇宙船のパイロット。
進） ばえー！ すごか～！
歩） フフフフ…やろ？
進） およ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
無事にパリから戻った貴司。よかったよかった。
空飛ぶクルマのアピール動画からの、貴司が
書いた随筆でその後を紹介する展開も良き～。
今回の、「わかるやつだけわかればいい」的な
ポイントは、みじょカフェにいた釣り客が、前に
ばんばが遅刻した時の釣り客だったことと、山
田が結婚して、藤沢の名字になっていたこと。
ネットでは「テロップ婚？」と言われていたけど。
舞の娘と一太の息子が、かつて自分たちの子
供の役を演じた子役ちゃんだったのは、嬉しい
キャスティング。「進」と「歩」で「進歩」になる
というのも素敵。視聴者が、子供の頃から見守
ってきた甲斐があるというか…ホント良き良き。
貴司の随筆「トビウオの記」、八木さんが見て
いたページを、書き起こしてみました。良き～。
町工場が集う、東大阪市の摘路町（つむじまち）
という町。つむじ風は舞風とも呼ばれ、落ち葉
が舞い上がる風景を、きっと昔の人たちも見て
いたのだろう。古くから風に恵まれた土地だっ
たのだ。かつてはグライダーの聖地で、義父は
物心がつく頃、よく祖父に連れられ生駒山上遊
園地へ遊びに行った時、近くの滑空場から飛び
立つグライダーを見ていた、という話を最近義
母からよく聞かされる。空飛ぶクルマが義父の
記憶を呼び覚ましたのだろう。グライダーを見
て育った義父はいつか飛行機を作りたいと願
い、その娘である妻が空飛ぶクルマ作りに携
わっている。妻は航空大学の寮に入るまで家
屋に隣接したネジ工場の音を聞きながら育っ
た。鋼の線材を運ぶリフト、朝から時には夜中
までけたたましく唸りを上げる機械たち。日毎
夜毎小さなネジたちが生まれていく。何十年も
続く営み、何千億ものネジたちは世界中に旅
立って、窓やドアや車や飛行機や様々な部品
たちをつなげては、そこにじっとうずくまってい
る。いつでも空の一部なのに見えない星たちの
ように。人々の人生の歩みをじっと見守ってい
る。そんなネジたちの音に囲まれて育った妻が、
今はまるで妻がネジであるかのように、空飛ぶ
クルマの仲間たちをつなげていったのだ。更な
る飛行試験に向けた資金を集める為、アビキル
が作ったPR動画から妻の言葉を一部紹介する。
「会いたい人に会えない、行きたい場所に行け
ない。今のわたしたちは、その悲しさ、悔しさを
よく知っています。だからこそこの『空飛ぶクル
マ』は誰にでも乗れるものにしたいと考えてい
ます。いつか夢は叶う、このクルマが空を飛ぶ
日が来ると、私たちは信じています」。
織姫と彦星を引き合わせるために空に橋をか
けた鳥のように、人々をつなげ夢。動画を見た
多くの人たちが空飛ぶクルマ「かささぎ」に賛
同し、つながっていった。妻はテストパイロット
として飛行試験を繰り返し、仲間たちと空飛ぶ
クルマの改良を重ねた。やがて厳しい募集を
クリアすると、その機体はとうとう、日本の空を
飛び始めたのだ。
深海の星を知らない魚（うお）のため
カササギがこぼした流れ星
リアルでも、貴司の短歌が読めそうですよ♪
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