たまには、ワイン屋らしく。『お気に入りの一本』
フォグラール


  それは、まだピンコおばあちゃんがまだやんちゃだった頃のお話―。

2000年の秋、流れ者だったまだ25歳のピンコおばあちゃんは、あるレストランにたどり着いた。ランチタイム。

 当時乗っていたペダル付き原付CIAOでピエモンテ州クーネオ県にあるバルバレスコの地区にあるトレイゾ村。海抜確か700mくらいの非常に高い丘の上に昔の小学校の校舎をレストランにしたミシュラン☆付きのお店がある。

RISTORANTE LA CIAU DEL TORNAVENTO。鍵の形をした風見鶏(鍵なら鳥じゃないけど)という意味のお店。そのマークがお店のマークになっている。勿論今も存在する。というか、当時よりより素敵なお店になっている。


 その日は、一人少しよそ行きの格好でそのお店に訪れた。様は悪いが、当時からよく一人でレストランは食べに行っていたので躊躇はなかったが、この日はここに雇ってもらいたいという目的で下見を兼ねてランチしにきたのである。

 入り口から入ると、広いホールに誰も出てきてくれず暫くしてお皿を自ら持って歩いているシェフが「いらっしゃい!」と変な店である。それもそのはず、その日は天気が良かったので皆テラスに出て食事をしていたのである。そこで、アルドコンテルノのブッシアネッラを一本注文。昼だったので軽めで。食事はこの地方のクラッシックなタイプフルコースで頼んだ。(あとあと聞くと、厨房からこの姿を見ていた日本人コックさん達は、一人でこの僻地に来た私にぶったまげ、一人で飲み食いする量に更にドギモ抜かれていたらしい。)食事をした後、ワインリストの凄さにばっかり夢中になって、即働かせて欲しいと交渉してみた。その時すでに3人日本人コックさんが厨房にいた。ただホールは初めての事だったが「かわいいじゃん」と女オーナーとその友人達は二つ返事で歓迎してくれた。

 喜んで満面の笑みを浮かべるこの女の子。まさかこの瞬間後ろで地獄行きトロッコのブレーキが解除されている事など露知らず・・・。     つづく。