その日の仕事をそれぞれ終えた蓮とキョーコ。

時刻は夜21時ーーー。

夕食は仕事先で終えてきた二人は、
蓮のマンションで、コーヒーの用意をしていた。


「最上さん、今日はお弁当ありがとう。
美味しかったよ。」


そう言いながら、暖かいコーヒーにミルクと砂糖を入れたものを、キョーコの前に置く蓮。


「……ありがとうございます。」


心なしか緊張をしながら、コーヒーを受け取るキョーコ。


「クスッ、まさか、あの時の俺の言葉を、
最上さんに言われるとは………ね?」


「すみません…。」


「いや、いいんだけど…。


男相手に、あんな言葉ーーー

簡単に言っちゃダメだよ……?」


蓮は、優しく窘めた。


「…………他の男性(ヒト)には、言いませんよ……?」


キョーコは、コーヒーのカップを両手で包みながら、蓮を見上げた。


「っ……。

なら、いいんだけど…。」


キョーコの言葉と仕草に、思わず蓮は息をのむーーー。


「それで……?


あんな台詞で、今日の俺の時間と身体を拘束したんだから、

だいたいの察しはつくけどーーー。」




「はいーーー。



ラブシーンの………、


手解きをお願いしますーーー。」




キョーコは、静かに頭を下げたーーー。





* * * * * * * * * *





リビングのソファーに並んで、台本を確認する二人ーーー。


キョーコがあるページを開いて……、


「ここから、お願いします……。」


と、蓮に台本を差し出すとーーー


「ーーーえっ?

これも……?」


少し困惑する蓮。


「……………はい。」


瞳には少し不安を映しながらも、はっきりとした意思を持って答えるキョーコ。


「分かったーーー。」


キョーコの右側に座る蓮は、目を閉じてイメージを描くーーー。



ソファーに置かれたキョーコの右手に、
蓮は左手をそっと重ね、
ゆっくりとキョーコへと顔を近づけるーーー。




ーーーチュッ




軽く触れるだけのキスをしーーー



「………これで、いい?」


「ーーーはい。

ありがとうございます………。」


キョーコは、少し頬を染めて頷いた。





「じゃあ、最上さん……。


この先のシーンの練習は、

俺の寝室に移るけど、

………本当にいいの?」


その言葉に、ドキッとしたキョーコ。

顔を上げて、一瞬蓮と目を見合わせる。

決意を固めて、小さく頷いたーーー。


「はい………。


お願いしますーーー。」




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