30年以上日経MJを購読している。以前は日経流通新聞と呼ばれていた。

 

約2年前、2020年9月7日のMJの1面はコンビニについての特集だった。コンビニで24時間営業の強制があった場合、独占禁止法違反になりうるという見解を公正取引委員会が示したことをうけた特集だ。

 

その総括的記事(↓赤枠)に心を打たれた!当時の編集長鈴木哲也氏によるものだった。

 

 

 

抜粋すると・・・

 

流通業界に名を残した大物経営者2人(堤清二氏・鈴木敏文氏)がコンビニエンスストア創業にどう関わったのか。半世紀前のエピソードを振り返ると、今回の問題を考えるヒントが見えてくる。

 

(中略)

 

現在のファミリーマートの発祥となるコンビニ実験店をセブンより早い1973年に創業したものの、大資本がコンビニを増やすと零細商店をつぶすことになると(堤氏は)ためらった。

 

(中略)

 

ファミリーマートの出遅れはいまのコンビニ業界の勢力図につながった。経営者としての勝者が鈴木敏文氏であるのは明らかだ。徹底した合理主義の鈴木氏とは対照的に、文学者でもあった堤氏の青い理想が妨げになった。ただし不思議と未来を見通す目があった堤氏が「コンビニ事業と零細商店の共存共栄」というスローガンに感じた違和感は、いまのコンビニ問題を暗示している。

 

(後略)

 

 

日本社会におけるコンビニの功罪について、本質だけをえぐり取ったような鋭い主張に強く共感した。すぐに日経新聞大分支局に電話して、「すばらしい記事です!感動しました!」と伝えた。

 

実はこの縁で現支局長の松尾さんと交流が始まり、ついに、先週9/1に「あこがれの記者」である鈴木哲也さんと初対面、意見交換できる機会をセットしてもらいました。約4時間、密度の濃い時間を共有できました。

 

進む人口減(人手不足)、SDGsに代表される価値観の変貌、コロナと店舗運営、原材料の高騰など取り巻く環境が変化する中、「流通業は非常におもしろい局面にきた!」が私の感想です。お客様である消費者は、会社の表面でなく裏側を見ている。サスティナビリティへの本気度を重要視し、今だけ金だけ自分だけの会社への蔑視をはじめた。こうした現状分析の中、当社の信条を示したのが「令和の商人道」です。

 

※ちなみに「令和の商人度」のタイトルは松尾支局長の命名です。

 

 

 

令和の商人道でコミットした行動規範をこの1年半、実直に行動してきました。具体的には、品切れ容認であり、廃棄ロスの公表(撲滅)であり、脱プラスチックの先駆的アプローチであり、地域社会の一部としての店舗づくり(会話のあるお店づくり)などです。商品的には、手づくり×国産×米油=ポッポ宣言の100%実行を行ってきました。

 

鈴木哲也氏は「セゾン・堤清二が見た未来」という単行本を 2018 年に著しています。かつて流通業界の寵児だったものの、バブル崩壊の打撃をうけて事業から身を引いた堤清二氏を、なぜ今取り上げたのか?

 

 

本から一部を紹介すると・・・

 

・堤氏が示したかったのは、数字だけで人間の幸福や楽しみ、よろこびを評価する価値観に対する明確なアンチテーゼである。

 

・堤氏はチェーンオペレーションとは距離を置こうとしてきた。標準化した店舗を大量に展開してコストを引き下げるチェーンオペレーションは、企業の論理を優先したものであり、地域の消費文化や店舗の創意工夫を軽視することになりかねない。こんな懸念を抱いていた。

 

 

そして、堤氏を以下のように再評価しています。

 

 

・もしかすると堤氏は30年、40年先の未来から、昭和の日本にタイムワープをした異色の経営者だったかもしれない。

 

 

全く同感です。

 

全国の商店街が崩壊し、全国津々浦々にまで、コンビニをはじめとするチェーンストアだらけになった日本。確かに便利になり、生活必需品は安く手に入るようになったものの、失ったものも大きい。

 

旅先の地方都市の繁華街をパシャッとスマホで撮影して友だちに送っても、そこが東北なのか?九州なのかさえ判別できないのが、今の日本です。チェーンストアとともに地域文化は失われてしまいました。

 

鈴木哲也氏は、当社の取り組みについて「(大分からあげの)未来を見据えた取り組みは、流通・飲食業のありかたを考えるうえで、とても意義深いものだと思います」と評価してくれました。

 

「あこがれの記者」からの最高の褒め言葉を胸に、令和の商人道をこれからも前進させていきたいと思います。