[追記あり] 『元の声が "人間だと分かっている" からこそ面白い・・・・ 』 | 音楽三昧 ・・・ Perfumeとcapsuleの世界

[追記あり] 『元の声が "人間だと分かっている" からこそ面白い・・・・ 』

今日の首都圏はかなり寒く、今シーズン一番の寒さに感じる。



さてその今日は待ちに待った"アレ" の発売日だ。早速入手してきた。










"御大のお二方" が並んで写っている壮観な写真が表紙である『サウンド&レコーディング・マガジン 2014年2月号』だ。この御大のお二方のインタビュー記事も相当面白かったが、やはりオレにとっての目玉は、この企画だ(笑)。













"中田ヤスタカ氏自身が尊敬するアーティストたちとの対談する"という「連続対談企画」の第8回目だ。それで今回は中田氏と古くから由縁がある、"スタジオジブリ" のお二方との対談となった。対談の相手は西村義明氏と "スタジオジブリの顔" もいえるあの鈴木敏夫氏だ。



中田氏と言えばスタジオジブリとのコラボレート作品がいくつかあることは、既にご存知の方も多いと思う。2004年のハウス食品のCM(CAPSULEの楽曲『レトロメモリー』)を皮切りに、百瀬義之氏とコラボレートしたショート・フィルムの『SF三部作』を作り上げた(ちなみに中田氏は音楽と作品イメージを担当し、楽曲はCAPSULEの『space station No.9』、『空飛ぶ都市計画』、『ポータブル空港』となっている)。







それで今回の対談は鈴木氏の "ひとり舞台" のような様相を呈していたが(笑)、「創作する、表現するということは、いったいどういうことなのか」ということを改めて考えさせられ、非常に勉強になった。






とりあえず感じたことを少し書きたいと思う。








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鈴木 : 中田くんは世間に受ける音楽を作るよね。ボーカロイドが出る前にボーカロイドをやっていたような。」



西村 : 新しかったですよね。」



中田 : みんなは曲ができた後にライブをやったりテレビに出たりっていうことを配慮しながら作っていたと思うんですが、僕はそこまで考えていなくて、曲がカッコ良ければいいって感じで作っていたので。」




鈴木 : 人間の声から人間味を失わせる作業をやっている印象が僕にはあるんですよね。



中田 : 元の声が人間だと分かっているからこそ面白いと思っていて。多分、これを人間以外が聴いても面白くないと思う(笑)。あの不自然さというか、ある種の気持ち悪さが面白さにつながる瞬間があるんです。

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このインタビューでは他の部分でも鈴木氏が音楽にも造詣が深いことを伺わせているが、やはり中田氏の表現したいことを的確に捉えていると感じる。そして中田氏が語った、この話が興味深いと思った。






「元の声が人間だと分かっているからこそ面白いと思っていて・・・・ 」






Perfumeを筆頭とした"Auto Tune" など用いたエフェクト処理を行ったボーカルの響きを聴くと、短絡的な方々は "これだったらボーカロイドを使えばいいじゃん" と考えてしまうかもしれない(苦笑)。しかし・・・・ その考えは浅はかすぎる(苦笑)。




そうなのだ。重要なことは、人間の歌唱した音声素材から "あえて人間味を感じさせる要素を削っていく" というのが中田氏の得意とする手法なのだ。そしてその狙いとしては、




"歌唱における人間の感情表現などの表面上の、ある意味、装飾にも似た分かりやすい部分をあえて削ることで、むしろ核となる『伝えたいこと』だけを純粋に取り出すことで、より『その本質』が鮮明になるのではないか・・・"





とその響きから、オレはそのようなことを感じるのだ。要するに歌唱者の感情をより純粋に、よりダイレクトにリスナーに届けために、あえて "人間味の要素"を削る・・・・ 中田氏のアプローチはそういうことなのだと思った。







次にこの部分は非常に考えさせられた。





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中田 : 今の子供たちが今の道具についてどういう気持ちになるか想像できないですね。全部がライブラリー化されているから何でも取り出せるんですけど、懐かしくもないものを取り出してどう思うんだろう。」


鈴木 : ちょっとかわいそうだよね。あと、今のピクサーの映画とかね。あそこって『トイ・ストーリー』とか毎回3Dで作っているでしょ。で、キャラクターに芝居させるときに、"ご飯を食べるときはこういう動き" っていうライブラリーがあって、新しい映画を作るときもそこから選ぶだけなのね。そうすると、新しい表現じゃなくて、評論家のように "こういうシーンにはこの食べ方がいい" という形になっていく。あれは第二世代の考え方だよね。それが一般化したときから、ピクサーの作品ってちょっと違う気がしていて、最初はもっと面白かったんだけどなあ。」

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なるほど・・・・ 今までは創造的に生み出されていた表現演出が、既にテンプレート化されているという話だ。しかしこれは当然アニメーションだけの話ではない。元々音楽はそのテンプレート化はかなり昔から始まっているのだ。




その辺については過去に中田氏もこのように語っている。









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中田 : 僕は"カウンター" が好きなんですよね、きっと。でも、世間的にデジタル独特のひずみが "アリ" になると、それがプラグインとしてリリースされると思うんです。その時点でだいぶつまらなくなっちゃいますよね。


中田 : 例えばデジタル上でピークが振り切れているときのビット数を選べたりして音作りが簡単にできるプラグインが出るとするじゃないですか。そうすると便利だとは思うんですけど、それありきで曲を作ると、多分おとなしい曲になってしまう。

中田 : だって、もうツールが用意されているから、自分が暴れる必要が無いわけですよ。だから常識を気にしないでバカになれるところが、このジャンル(エレクトロ)の楽しい部分ですよね。勢いだと思いますよ。」



                                  『サウンド&レコーディング・マガジン 2008年12月号』より

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要するに新しいものを生み出すためには、既存のもの、与えられたものだけを有り難がって、それを待っているだけの受動的なアプローチでは、結局新しいものは何も生まれてこない。

新しいものの創造は "能動的に攻め姿勢" で取り組まないとダメだ、ということを鈴木氏も中田氏も言いたいのだろうと思った。







さらに中田氏は創造と表現方法について次のように語っている。







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ライター : 音楽/アニメーション共にツールの進化によって、その作り方も大きく変わってきたと思いますが、その辺に関してはいかがでしょう?」



中田 : いずれにせよ作っているのは人間ってことですよね。よく勘違いされるんですけど、コンピューターを使うと魔法みたいに自動的に曲ができると思っている人が多い。そうじゃないってことはこの場を借りて言わせてもらいたいです(笑)。」


鈴木 : 当たり前だよね。道具が変わっただけ。」



中田 : コンピューターで曲を作るのは、僕としては "ピタゴラスイッチ" みたいな装置を作っている感覚なんです。スイッチを押せばあとはどんどん自動で進んでいくけど、そもそもそれを作ったのは人間で、コンピューターはそれを再現する道具なんですよね。

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この場を借りて言っても・・・・  『サウンド&レコーディング・マガジン』の読者は重々わかっていると思う(苦笑)。したがって、オレはこの部分をあえてエントリーとして取り上げたいと思った(笑)。




これに関連した話はこのBLOGの過去エントリーである『先入観を超えて・・・ その先にあるリテラシー (2012年10月25日)』において、







○はたして、生演奏と比較するとコンピューターで作った音楽では、制作者の伝えたいことが伝わり難くなるのだろうか

○はたして、手書きの文章と比較すると、コンピューターやワープロで書いた文章は書き手の伝えたいことが伝わり難くなるのだろうか








という事に対して、「コンピューターで作り上げた表現でも、伝えたいことは十分伝わる」というオレのなりの考察を書いてある。ご興味がある方々はぜひお読み頂ければと思う。










さて話を戻して、鈴木氏はコンピューターでのアニメ制作は「鉛筆がコンピューターになっただけ」としながらも、問題点を挙げていることが興味深い。







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鈴木 : アニメーションでも同じことが起こっているんだよ。コンピューターがあれば勝手に絵を描いてくれるんでしょってみんな思っているけど、実際は鉛筆がコンピューターになっただけだから、やっぱり人間が描かないといけない。」


鈴木 : だけど何ていうのかな、コンピューターってすぐに確認できるでしょう? だからさっきのピクサーみたいに選ぶ作業が当たり前になってしまう。昔の人は完成形を頭の中に描いて、"これしか無い! " っていうものに向かって作るわけですよ。でもすぐには確認できないから、頭の中でいろいろシュミレーションしてみる。そうするとそこに強い意志がわいて、一つ作ったらそれで完成になる。」


鈴木 : ところが今は、いろいろと作っておいてその中から選ぶということが多い。僕らの世界で言うと、例えば映画のポスターを作ろうとなったときに、デザインする人がいろんなレイアウトを持ってきて "ここの中から選んでください" って言うのよ。あれが頭に来るんだよね(笑)。」



西村 : 鈴木さんはいつもそうですよね。」




鈴木 : 1つを一生懸命作るのと、最初から5つ作るのでは全然違うものになる。創作意欲って何かって問題になるのよ。





中田 : 僕も最近同じような体験をしました。きゃりーぱみゅぱみゅのアルバム・タイトルを考えていたときに、僕が候補を3つくらいきゃりー見せたら、"う~ん" って感じでスルーされたんですよ。その後2週間くらいずっと考えていて、ニューヨークできゃりーのライブを見ているときにひらめいたのが "なんだこれくしょん" だった。これを伝えたら一発でOKが出ました。」




鈴木 : それを言いたかったんです。本来そうあるべきだろうっていう。」




中田 : どっちにしようかなって悩んでいるものは実は大したことなくて、逆に "これしか無い!" っていうときの強さってありますね。




鈴木 : 何かを決めるのは早くやっておいて、ちゃんと作る方に時間をかけたほうがいい。決める方に時間をかけるなんてくだらないよね。」

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なるほど・・・・ 鈴木氏・中田氏の言うとおりだ。 確かに一つの完成形を導き出す過程の中での取捨選択は、制作の当然の工程だろう。しかし複数の完成形を用意しておいて選ぶという考え方は、新しいものを生み出すものとしては、





"覚悟がまだまだ 1ミリも 足りないね・・・・"






って感じだろうか(笑)。この辺についても過去に中田氏もこのように語っている。








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中田 :  やっぱりミックスするんなら、完成品をちゃんと作りましょうよ、と言いたい。"この曲はマスタリング前なのでまだ完成じゃないんです"っていうセリフはあっちゃいけないと思うんです。



中田 :  ミックス・エンジニアはマスタリングに遠慮しなくていいし、自信を持ってほしいですね。特にマスタリング用の余白は考えないようにしてほしい ・・・・マスタリング用に"ボーカル1dB上げバージョン"とか作るなっていう(笑)。完璧なバランスっていうのがエンジニアの中には絶対あるはずなので。




ライター : 一般のレコーディングの場合、ミックス・エンジニアとマスタリング・エンジニアのほかにプロデューサーやディレクターも居て、いろんな人の意見の中で落としどころを見つけなければいけない難しさもあるんでしょうけどね。」



中田 : まぁそうなのですけど、そんな弱気でいいのかと(笑)。料理屋で味薄めと濃いめの2種類をセーフティーで用意するのと同じ感覚だと思うんですよ。"これだ!" っていうバランスがあるなら、それで勝負してほしいですよね。


                                  『サウンド&レコーディング・マガジン 2010年4月号』より

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もう仰るとおりで(笑顔)。こういう部分でも鈴木氏と中田氏は相通じるものがあるんだろう。しかし中田氏であれば "これしか無い!" という心意気を響きに込めていることで、それがリスナーやオーディエンスに確実に伝わっている。




そうでなければ音楽プロデューサーの蔦谷好位置氏が、中田氏の生み出す響きをこのようには表現しないだろう。








音楽三昧 ・・・ Perfumeとcapsuleの世界



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※中田サウンドの特徴を問われて



蔦谷:  (中田サウンドは)一音一音の説得力が全然違いますよね。他の人と。どうやってやっている(サウンドメイクをしている)のかなっていう・・・・」



千原: 何が違うんですか?」



蔦谷: やっぱり気持ちが強いんだと思うんですよ。


蔦谷: 『流行っているからコレやろう!!』 とかじゃなくて、『これだろう!!』 って出してきている感じがするんですよね。


蔦谷: それで他の人が真似してもそういう音にならないし、他の人の真似をしようとしている感じも無いんですよ。独自の路線を行っている感じ。それでPerfume自体がそういう感じに見えるんですね。それはすべて彼のサウンドから始まっているんですね。」


                                      『音楽ヒミツ情報機関 MI6(2013年9月19日放送)』より

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さて今月号の『サウンド&レコーディング・マガジン』は、このエントリーで取り上げなかった内容の部分も "創作する、表現する" という事に対する考え方を再確認するうえで非常に勉強になった。




ご興味がある方は、ぜひご購入してお読み頂くことを強くオススメしたいと思う。















<○追記・16日pm21:41>



いゃ・・・・ ジブリ関連にお詳しい方々は既にご存知なのかもしれないが、オレにとっては、この話は意外な展開だったので非常に驚いた。

ご参考までにご紹介したい。






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ライター : 高畑監督は、音楽にも造詣が深い方なのですか?」




鈴木 : 良い曲を聴くとすぐに五線譜に起こす人なんですよ。音楽的な理論も詳しいからね。」



西村 : ヨナ抜き音階とか。」



中田 : 『かぐや姫の物語』の「わらべ唄」も高畑監督が作曲しているんですよね。あの「わらべ唄」はすごいところに音符が行くんですよ。独特なメロディだから、誰が作ったんだろうと思ってクレジット見たら高畑監督だった。」



鈴木 : あれなんかもコンピューターを使って作曲したらしい。78歳のくせにコンピューターに詳しいんだよね、高畑さん。楽器の音色まで決めちゃって、歌は初音ミク(笑)。全部自分でやっちゃう人なのね。」

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へぇー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!






高畑監督は音楽の素養がかなりあるんだなぁ。しかも78歳でDAWを使いこなして作曲。しかも『初音ミク』まで使いこなすとは(笑)。




これには・・・・ 恐れ入った・・・・・(笑顔)。











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