私は濡れ衣を着せられ、ドラッグディーラーになっていた。しかも、日本史上最悪の、警察黙認の他の団体から命を狙われるほどの。

始め、いや、中盤、私はグラマーな飯干恵子でよかった。死んだ親父とゲームをしていた。

ゲーム、そう、パズルをしていたしかもそれは立体で、高さ4メートルはあったかな。柄合わせで、色んな動植物が隠れているのだけど、パズルのピースは人間(おっさん)にペンキ塗ってあるの、だ。
親父がめちゃくちゃな配置にしたもんだから、態勢がキツいのかハタマタ図柄が気に入らないのか、実体パズルのおっさん達は苦悶の表情、汗を押し出しペンキの表面。
ただのパズルではない、さらに別の理由それは、福留さんがパズルの前で尾崎豊の曲を熱唱。尾崎本人もTシャツの袖を捲って伴唱。

パズルの両側にはやぐらが立っていて、音響も照明も申し分ない。が、問題はパズルのおっさん達だ。
スポットライトでさらに暑そう、毛穴の悲鳴が聞こえてきそう。
親父も何でまた、樹の下半身のおっさんにシマウマの上半身のおっさんくっつけるかなぁ~。かわいそうだよ!

そうだった!あたしゃディーラーよ。追われる身よ。いやんなっちゃうよ。もう、飯干じゃいられない。

逃げなくちゃ。

スーツの男二人、部屋のドア、バーン開けてお決まりの感じで押し入り。私もまた、お決まりの感じで窓、ガラガラー開けて飛び降り。気付けば三階だったけどものすごくちゅういして着地成功、全速力で走って逃げた。
なんて、脚が重たいんだろう。
奴らはセダンで追って来る。

川が見えた。土手に渥美清とがじろう。ああ、大好きな二人なのに、さようなら。ドボン。
潜水し、グイグイ濁った水を掻く。ザブン。
振り向くとさっきのセダンがいるよ、濁った水の向こう。
信じられない、彼らがシュノーケルつけて銃を構えてる。のを確認と同時に、びゅるびゅるうねって弾が飛んで来た。
疲れたから、当たってもいいやって思ったけど、やっぱり濡れ衣だから死にたくないやでなるべく川底を、できるだけはやく泳いだ。

向こうに、川底の路地の入り口が、さらに濁った水を噴き出している。追っ手は迫っている。行くしかないね、こーゆー場面では。



(中略)



「あんたが撃てよ。」
「いや、我々は雇われただけであってこの女に個人的恨みは何もない。キミは恨んでいるんだろ?キミがトドメを刺すのがスジだろう。」
「わかった。…じゃあ、お前やれ。」
と、ロン毛眼鏡を小突いた。
「え…俺はあんたにずっと、この女のせいだって聞かされてただけでよぅ。初対面だぜ?やっちまったら寝覚めが悪いし、俺、返り血浴びたりすんのも嫌だぜ。これからバイトなんだ。」
「じゃあ、こうしよう!みんなで埋めちまおうぜ。このままさ。」

濡れ衣を着せた張本人の男は、私を殺して口封じはしたいものの、罪悪感からトドメを刺せないのだった。
「じゃあ、そうしようか。」
“みんな”が、さっき掘った砂を手に手に私にかける。
「こんな浅い穴で、パラパラ砂かけられて死ねるか、ボケ!」
このお焼香殺人とでも言うべき殺人方で、いつ結末が来るのか。
私はいつまでも死ねずに、イライラしているのだった。

通勤電車待ちの退屈そうな人達が、プラットホームからこちらを見ている。


おしまい