東の御三家 PENTACON auto 50mm F1.8 | シネレンズとオールドレンズで遊ぶ!

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カメラマンヨッピーのブログ。シネレンズやオールドレンズなどのマニュアルフォーカスレンズをミラーレスカメラに装着して遊び、試写を載せていきます。カメラ界でまことしやかに語られているうわさも再考察していきます。

東の御三家2本目はPENTACON 50mmF1.8。エルネマン塔の刻印からも分かるようにペンタコン人民公社製の標準レンズである。

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東西ドイツのカールツアイスは商標をめぐって1950年代に法廷闘争を繰り広げるが、西のカールツアイス、カールツアイス・オプトン社のものとなる。その後コンタックス名も使えなくなったため、ペンタプリズムのコンタックスと言う意味で『ペンタコン』というブランドネームを使うようになる。西のツアイスがコンタックスの後継CONTAXⅡa,CONTAXⅢaなどのレンジファインダーを主力においていたのに対し、ContaxSやContaxDなどの一眼レフカメラを主力にしていた東のコンタックスらしいネームである。このころの東ドイツのカメラメーカーは統合を繰り返しながらよく言えばいいとこ取り、悪く言えばごった煮といった風になっていた。そのためペンタプリズムのコンタックスにメイヤーオプティックのオレストンがペンタコンと言う名で付きそのシンボルマークがエルネマン塔と言うちぐはぐなことになってしまっていた。ちなみにエルネマン塔とはかつてのエルネマン社のシンボルマークの塔で同社には後にゾナーやビオゴンを発明することになるルードビッヒ・ベルテレ博士も在籍していた。1920年代にカールツアイス社主導で行われたドイツのカメラメーカーの統合・再編事業によってエルネマン社もツアイス・イコン社となる。この統合によりツアイス・イコン社の一員となったベルテレがエルネマン時代に発明したエルノスターをさらに改良し10年の歳月を費やしゾナーを発明、改良した。このゾナーがライカに対抗して作られたコンタックスのフラッグシップレンズになっていくのであるが、今回は省略させていただく。で、本題に戻るが、このPENTACONと言うレンズメイヤー・オプティック社のオレストンのコピーだといわれている。ちなみにメイヤーオプティックはフーゴ・メイヤーのことで、パウル・ルドルフ博士のキノプラズマートなどを生産していた一流メーカーである。このメイヤー社が戦後東ドイツ傘下でVBEゲルリッツ精密光学工場となりやがてPENTACONに吸収される。このくだりは私の敬愛するM42 MOUNT SPIRALのMULTI CORTING PENTACON auto 50/1.8(M42) & Meyer-Optik Goerlitz ORESTON 50/1.8(M42) の項で詳細に紹介されている。非常に明確で分かりやすいブログなのでぜひご一読いただければと思う。
そういった経緯でPENTACONネームになったこのレンズであるが、一番の魅力は最短撮影距離だと僕は思う。F1.8という明るさを持ちながら0.33mという最短撮影距離は非常に汎用性が高い。外観のゼブラ柄も悪くない。銘版のエルネマン塔も少しうれしくなる。肝心の写りは?
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ドイツレンズらしい空気感のレンズですね。
ドイツのレンズには解像度より画面の総合力を重視する伝統があるきがします。このレンズも決して解像度は高くないのですが、多少のピンボケやブレなどはものともしない画面の力強さがあります。線の細い日本のレンズとは対照的です。
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ボケは1930年代のレンズに雰囲気が似ている。特に最短側では収差の補正に無理が来るのか、クラシックレンズのようなボケを生じる。このレンズのボケが少しうるさいという話しもあるが、これもクラシックレンズによくある話しである。シュナイダーのクセノンやライカのズミタールなどに近い気がする。ただしコーティングのおかげで発色やコントラストに問題はない。
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これはこれで非常に雰囲気があって僕はいい写りだと思う。ピント部分が少し甘く見えるのは絞りが開放であるためだと思われる。少し絞り込むと解消する。
ただしこのレンズは絞りがあまりにも正確な六角形なためボケがカクカクに見える。
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ボケ味がうるさいといわれるのはこういったことも影響していると思う。
しかしこのレンズは遊びで使うには本当に面白いレンズであると思う。高価なクラシックレンズに近い写りが相場で言うと数千円で手に入るのである。コーティングはしっかりしているので、撮影もラフにできる。なんといっても0.33mという最短撮影距離は魅力的である。外観もゼブラでかっこいい。
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名門の由緒正しいレンズではないですが、歴史に翻弄されたこういうレンズも心くすぐるものがあります。