「がん」は日本人の死亡原因第1位で、
3人に1人がこの病気で亡くなるといわれている。
そんななか、「がん患者はがんで死ぬわけではない」という
驚きの発言が話題を呼んでいる。
発言の主は、緩和ケアの第一人者、
東口高志氏(藤田保健衛生大学医学部教授)だ。
東口氏は、がん患者のために医療改革の必要性を訴え続けているという。
「がん患者はがんによって亡くなると思われるでしょうが、
実はがん患者の死因の8割になんらかの感染症が
関連している可能性があります。
そうした感染症はがんによって引き起こされたものではありません。
その多くは、不適切な栄養管理による栄養不足が原因と考えられます。
栄養不足で免疫力が低下し、健康な人なら何ともない弱い細菌
に感染し、回復できずに亡くなるのです。
がん患者が亡くなる本当の原因が栄養不足であるという
現実を治療に役立てることができれば、
がん患者はもっと長生きできるはずです」
こうしたがん医療現場の問題点を明らかにした
東口氏の著書『「がん」では死なない「がん患者」』(光文社新書)が
注目されたことで、「がん患者の死因」を巡って議論が巻き起こっている。
東口氏の主張は、自らが現場で調査した結果に基づいている。
東口氏は、2003年に余命1か月程度と思われる患者108人を調査した。
その結果、がんとは関係なく栄養不足に陥っている人が82.4%もいることが判明した。
そして、その大半は感染症などで亡くなったという。
同様の問題が米国の調査でも指摘されている。
2009年に米国で出版されたがん患者に関する医学論文集
『Medical Care of Cancer Patients(がん患者の医学的ケア)』で、
ヘンリー・フォード病院のヤキール・ムシカト医師は、こう述べている。
〈がん患者の20%以上は、悪性腫瘍というよりも
栄養失調の影響をより強く受ける形で死亡している〉
つまりがんそのものではなく、栄養不足で
体調不良になる「栄養失調」で亡くなるのだ。前出・東口氏が語る。
「私の2003年の調査ではサンプル数が少ないという
反論があることは承知しています。
ですが、当時末期と診断され、私たちの診療科に
いらっしゃった患者さんの大半は、がんの進行というよりも、
むしろ栄養不足による全身衰弱に陥っていました。
そんな実態があったからこそ、私は当時の栄養軽視の医療に大きな疑問を抱くようになったのです。
治療のために入院した患者が栄養不足になってしまう
現状は世界共通の問題です。日本でも、絶対に見過ごしてはならない」
入院中の患者が栄養不足になっていると初めて指摘したのは、
1974年に米国で発表された「病室の骸骨」という論文だ。
それまで栄養不足は主に食糧問題が深刻な発展途上国や、
戦争などに伴って起こると考えられていた。
そのため、先進国の病院で、栄養不足が高率で起こっているという内容は医学界に衝撃を与えたという。
http://news.livedoor.com/article/detail/11588679/
※週刊ポスト2016年6月10日号