「ご飯やパン、麺など炭水化物に多く含まれる糖質の
摂取量を減らす食事法「糖質制限」が、
がん治療にも効果が見られたという臨床研究データが発表された。
がん細胞は炭水化物から合成されるブドウ糖を栄養源と
しているので、それを断つことでがんの進行を抑制できないか
という考え方から、多摩南部地域病院外科医の古川健司氏
(医学博士)が行なった研究だった。
部分奏効や進行制御も含めた病勢コントロール率
(治療効果のあった患者割合)は実に83%に達したという。
しかし、ブドウ糖はがん細胞だけでなく、
人間の生命維持活動を支える重要なエネルギー源だ。
それを制限することで健康維持のリスクはないのか。
「正常細胞はブドウ糖の供給が途絶えても、
緊急用の代替エネルギーを皮下脂肪から作り出すことができる。
それがケトン体という酸性の代謝物質で、
糖質制限によるがん治療のカギとなる」(古川氏)
「ケトン体とはアセト酢酸、アセトン、β―ヒドロキシ酪酸という
3つの物質の総称をいい、正常細胞はケトン体を
エネルギー源にできるが、がん細胞の栄養源にはならない。
そのため、がん細胞だけを“兵糧攻め”できるという理屈である。
古川氏が続ける。」
(銀座東京クリニックより)
「ケトン体には細胞を酸化させ、細胞のがん化を促す
活性酸素を除去する働きがあることが確認されているほか、
機能不全に陥ったがん抑制遺伝子p53を正常化し、
がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導するなど、
ケトン体自体に抗がん作用があることが解明されています」
(大阪大学より)
「さらにケトン体には損傷した細胞の修復機能を担い、
老化と寿命を制御する「長寿遺伝子」を起動させる働きが
あることも明らかになってきたという。
古川氏の行なう糖質制限による食事療法の名称は
「がん免疫栄養ケトン食療法(以下、ケトン食療法)」といい、
がん治療に特化した糖質制限である。
厚生労働省が作成した「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
によれば、成人男性(30歳以上)の1日に必要な総エネルギー量は
2650キロカロリーと試算され、その約60%を糖質で摂取することが
推奨されている。
重度ではない糖尿病患者の糖質制限では、糖質の摂取量を
総エネルギーのうち30%程度にまで抑えるが、
古川氏のケトン食療法はそれを限りなくゼロに近づける。
臨床研究では、1日の糖質摂取量を20グラム以下とする
「糖質95%カット」を実践した患者もいる」。
「具体的な量を示すとそのストイックさがわかる。
ご飯一膳(160グラム)で約60グラムの糖質摂取量なので、
3分の1膳以下。それ以上の糖質は摂れない。
では、ケトン食療法でどのような改善例があったのか見ていこう。
60歳のA子さんは末期がんを根治したケースだ。
2012年4月、直腸がんの切除手術を受けたA子さんは
術後ステージIII、再発可能性は20%と診断され、
2014年12月に多発性肺転移と肝転移が発覚した。
その後、古川氏の研究に参加し、抗がん剤とケトン食療法を
始めたところ、3か月後に肺に転移したがん細胞が縮小した。
手術が可能なサイズまで小さくなったため、2015年4月に
左肺の部分切除手術を行なった。古川氏が言う。
「手術後、これまでの抗がん剤治療は行なわず、
ケトン食療法のみを継続したところ、肝臓に転移していた
腫瘍も小さくなりました。
同年9月にその腫瘍の切除手術を行ない完治に至りました。
A子さんのケースはがん細胞の増殖を抑えただけでなく、
多発転移まで防いだ。栄養源を失ったがん細胞は移動もできなくなるようです」
ケトン食療法が、がん治療に効果がある研究事例は
海外でも報告されている。銀座東京クリニック院長の福田一典氏が解説する。
「最初にエネルギー源をケトン体とする糖質制限食が
がん治療に良いと言われ始めたのは1995年頃です。
アメリカで脳腫瘍を患った女児2人に8週間にわたって
糖質制限食を実施したところ、7日後からがん細胞による
ブドウ糖の取り込みが20%低下。
女児の1人に腫瘍の縮小など著しい改善と
長期間の延命効果が認められたのです。
他にも、アメリカでは根治不能とされた進行がん患者10人を
対象とした臨床研究で、26~28日間にわたって糖質制限食を
実施したところ、全体の半数の5人にがん細胞の縮小などの
効果が確認されたケースが報告されています」
古川氏の臨床研究で用いられているケトン食療法は、
主食の炭水化物の大幅カットに加えて、もう一つ特徴がある。
それはタンパク質とがんの進行・炎症を抑えるEPA
(エイコサペンタエン酸)の摂取を強化している点だ。
それらは食材と調理法によって摂取量を厳密に管理されている。」
魚油に多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)や
エイコサペンタエン酸(EPA)のような
オメガ3系不飽和脂肪酸を多く摂取すると、
炎症やアレルギーを抑え、血栓の形成や動脈硬化や
がん細胞の発育を抑える作用があります
なので兵糧攻めにするのです
http://getnews.jp/archives/1561011