秋がもうそこまで来てるんだよ
と言わんばかりの
少し冷やされた夜風に深呼吸。



空を見上げていたら
流れる雲のあいだから
ゆったりと、ゆっくりと月が顔を出し
空が黄色く照らされていった



「月はそこにあったのか」
ポロリと口をついた自分のその言葉に





「あぁ、そういうことだよね」

と答え合わせが出来たような、そんな夜。








雲に隠れていた月は
私の目には見えなかっただけで
ずっとそこにいたし

いなくなった訳でも
消えてしまっていた訳でもなかった


ただ、雲が厚くて見えなかっただけ
こちらからあなたが見えなかっただけ
もしくは私は気付くことが出来なかっただけ



例えば私は
何か考え事をしていたのかもしれないし
他のことに気を取られていたのかもしれない
もしくは月を眺める余裕が心になかったのかもしれない
 



でも ずっとそこにあった
変わらずそこにあったのだ、ということ。




不幸そうに見えていたあの人も
実はしあわせだったのかもしれないし

自分のせいで苦労をかけている
と思っていたあの人も

もしかすると、頼りにされていた事に喜びを感じてくれていたのかもしれない


心配ばかりしていた親は
もしかすると、お前を心から愛しているよ
という思いをあれで伝えていたのかもしれない




実はずっと、しあわせはそこにあったのかも
実はずっと、愛されていたのかも
実はずっと、自由だったのかも
実はずっと、問題なんて存在していなかったのかも
実はずっと、応援されていたのかも
実はずっと、私は価値があったのかも
実はずっと、信じられて信頼されていたのかも



あぁ、そこにあったのか。

そう、そこにずっと変わらずあったのだよ



見えていないから無い訳じゃなくて
言われていないから無い訳じゃなくて



ずっと私が気付けなかっただけ。





そうよ、今更わかったの?
ちょっとふっくらした上弦のお月様は
そんな風に笑いかけたように見えました。