母が亡くなって、四十九日の頃。
「無宗教で、花を手向ける式がいい」と言い遺したから、特に、何をするわけでもない。ちょうど京都出張があったので、その前日、京都好きでよく通っていた母と一緒のつもりで、ひとり、京都を廻ってきた。
上賀茂神社、圓通寺、大徳寺へ。
葵祭を行う、京都最古の神社。曲水の宴を催す清流。「神気が宿る」という岩に触れると、その手触りに、なぜか涙が出た。まるで夏のような暑さ、晴れてよかった。。
遥か比叡山を望む借景庭園。10数年ぶりに来たら、周りがすっかり住宅地になっていて驚く。昔は田畑だったよなぁ…母の代わりに連れて来た“うさぽん”と一緒に、しばらくの間、お庭を眺めていた。
今回は、絵画や仏様より、庭園を見たかった。そして、枯山水の庭園がたくさん見られる大徳寺へ。
なんとなしに、特別公開中だという塔頭に伺った。
こんもりとした苔が、一面に、緩やかに広がる苔庭。紫陽花、山茶花、楓…小ぶりな四季の樹木があちこちに。木漏れ日の光に、明るみ、翳る、苔の緑の濃淡がうつくしい。
この日は法事があったそうで、和尚様が御朱印を授けていらっしゃった。
母もたくさん御朱印を集めていたけど、「一緒に持って行く」と、そのほとんどを柩に納めてしまったから…
せっかく京都に来られたし、記念になるかしら。生まれて初めて、御朱印をいただくことにした。御朱印とは、御寺の名前を書いていただくものだと思っていたけれど。
書いていただいたお言葉に、心底、驚いた。
初対面で、何もお話ししていないのに。
どうしてお分かりなのですか…と問うて、応えてくださった和尚様のお言葉に、また、涙が止まらなかった。
母さん……会いたいよ、恋しいよ。
こんなに気持ちの良い、秋の一日。一緒に歩けたのなら、どんなに楽しかっただろう。
何かに導かれるような一日だった。……やっぱり、母さん。ずっとずっと、私と一緒にいるんだね。
さっそく、この日のことを父に話した。「母さんの良い供養になったと思う」 と、父。 …うん、そうなら良いねえ。
やはり、母を想うと、哀しくて、淋しくて、恋しくて… 時に、涙することもある。
和尚様は、御朱印帳の表紙に、「道すがら」と、書いてくださった。
母はきっと、これからも、この私が「良く生きること」を、何よりも望んでいるだろう。
私の人生は、「この旅」は、これからも続く。
このBlogはこれで終わります。読んでくださって、本当にありがとうございました。