ところで女王様は、常々、
「この世には、驚くほど
自分の言動に対する客観性の欠落した人間がいるものだが、
これは一体どうしてなんだろう?」
という疑問を抱いていた。

自分の言葉や行動が他人にどんな気持ちを与えるか、
そんな言動を取る自分は相手の目にどう映るか、という事に一切無頓着というか、
わざと無頓着に振る舞っているのならともかく、まったく分かってない人が、
この世には意外と多く存在しているものである。

そういう人たちは、べつに頭がおかしいわけでもはないので、
きわめて普通に社会生活を営んでいるのだが、
やはり「なんか変な人」とか「無神経なヤツ」という印象を与えてしまうため、
周囲からそれとなく嫌われたり敬遠されたりしやすい。

だが本人は、自分がなぜ嫌われるのか皆目見当もつかないだろうし、
嫌われていることにすら気付かないのだ。

いや、もしも気付いたとしても
(たとえば、はっきりと嫌悪感を表明するような相手に
ぶつかってしまった場合)、
「あの人は自分を誤解している」とか
「あの人は自分に嫉妬しているのではないか」などと
的はずれな想定をしてしまい、
ますます相手の地雷を踏むことになる。

その「物わかりの悪さ」みたいなものは、
本人のIQなどとは全然関係ないらしく、
学歴が高かったり、アカデミックな職業に就いていても

こういう独特の愚鈍さを発揮する人はいるのである。

こういう人々は、もしやミラーニューロンの働きに問題があるのではないか、
と、女王様は考える。
「病気じゃないけど変な人」の謎は、
今後、脳の研究で解明されていくかもしれない。

(さすらいの女王385 中村うさぎ)

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久し振りに「週刊新潮」を読んでいたら、
先日購入したばかりでまだ目を通してもいない
「クオリア入門」(茂木健一郎)について中村うさぎさんが書いていたので
思わず読んでしまった。

まだクオリアについては語れないのだけれど、
ただ、この中村さんの解釈でいくと、少し恐ろしいような気がしてくるんだよね。

「物わかりの悪い人間」っていうのは確かにいるよ。
「どーしてこんな簡単なこともわかんないんだろう?
しかもその年になって!」みたいなね。
「人に嫌なことを言ったら嫌われる」というような
どこをどう叩いても間違えようもなく子供でも理解出来るようなことを、
なぜか理解していない人。
「理解していても言ってしまう」というわけでもなさそうで、
どうも理解出来ないらしい人。
こんな人が、確かに存在する。

ただ、私みたいに文系の人だと、
「何らかの原因があるんだろう」って考えるのね。
「育ってくる時のご家庭の環境」だとか「つきあっていた友達の種類」だとか、
なんらかの要因があって、
「考えてこなかったんだろう」って考えるの。

だから、要するに、人は全て同じで、
問題は「その人の関心がどこに何パーセントの割合で向いているか」
或いは、関心自体の量がどのぐらいなのか、
という事の違いだと思っている。

車に関心のある人もいれば、お洒落全般に関心のあるひともいる。
アニメなど特定分野にめちゃくちゃ飛びつく人もいれば、
金儲けだとかに関心があってイコール、ビジネスで成功する人もいる。
「いろんな事に広く関心を持つ人」もいれば、
逆に「ある特定分野以外の事には、殆ど何にも関心を払わない」学者タイプもいる。
そして、関心がある事に対して、人は一生懸命になるし敏感になるけれど、
関心のないことって、結構どーでもよかったりする。

だから、そういうものの違いなんじゃないの?
そう受け取るんだよね。

けど、これが、「脳の問題」になってしまうと、ちょっと怖くない?
だって、そしたら、「改善しようがない」んだもの。
いや、勿論、病気なら病気って分かった方がいいんだけれど。
したら「治療」出来るかも知れないし。
でも、逆に「病気」って納得されちゃって収まるところに収まっちゃってもねえ。

「生活環境の違い」とか「関心の置き場の違い」とか、
そういうことによって「分かってない」んだったら、簡単だよ。
「わからせてあげればいい」んだから。

今まで「人と波風たてたくないから言いたくない。」
「別に嫌われている人に『あんた嫌いよ』って言ってもしょうがないし」
「あの人を直してあげる必要はない。自分は去るのみ」
などとみなさんが思っているんだけれど、
そうするとますます意固地になるでしょ?
だから、誰かが分からせてあげて、矯正してあげればいいんだと思うの。

周りの反応を見たりとか、
親切に言ってくれる人の話を素直に聞いたりとかしていると、
「なるほど、こういう所が受け入れられないのか」って理解して、
今はとてもまともになったと自分では思っている。
大分普通になじんできたと思うの。

「物わかりの悪い人」「なんか嫌われている人」っていうのは、ちょっとかわいそう。
明確で分かりやすい
「理由」があるわけじゃないから
助けの手をさしのべようとする人も少ないだろうな。
子供とかならともかく、

「もうその年になったら自分の責任だろ」って思われるだろうし。
だから、チャンスがなかったりするんだよね。

けど、絶対、教えれば分かると思うんだ。

だって、そういう人には、得てして「普通の人よりは賢そう?な」人が多いし。
(だから尚更「どうして?」って不思議に思う)
というか、多分本人は自分の事を「他人よりも頭がいい」と思いこんでるんだろうな。
しばしばそういう言動も見られるし。
まあ、実際どうなのかはさておき。

脳みその問題で、独特の愚鈍さを発揮しているんだったら、
悪いけれど、専門家以外打つ手ないじゃん?
まあ、たまに、あんまりにも改善が見られなかったりすると、
「やっぱ、無理だわ」って思うことがあるから、
そういう考えに逃げ込めたら一番らくちんなんだけれどな。