流産手術が終わってからも悪夢は続いた。


神は乗り越えられない試練は与えないってよく言うけど、本当にイジワルな試練。


なんと、流産手術中に別の部屋の赤ちゃんが誕生していたということを後からしった。
私が赤ちゃんをなくした、すぐ横の部屋では赤ちゃんがこの世に産まれ幸せで溢れてる。

  


そこまでは仕方のないことだと頭で理解できた。

命は巡る。


産まれる命があれば、なくす命も。


でもね。 




その赤ちゃんのお母さんのお母さん…つまり赤ちゃんのおばあちゃんに、部屋の前でバッタリと会ってしまった。


「あら?もしかして〇〇(下の名前)さん!?」
「!?」

なんでこの人、私の名前を知ってるの?
訝しんで無言でいるわたし。


「ほら、娘と同じクラスだったでしょう!〇〇中学の!覚えてないかしら!
懐かしいわーお母さんとPTAやってたのよ!」
「…?」


ベラベラと喋り続けるおばあちゃんはどうやら、私と同中の娘がいるお母さん。
孫が生まれたハイテンションで、さらに私を見かけて懐かしがったりしていた。





「〇〇(私)さんはいつ産んだの?」




ドカーン!




頭を殴られたような言葉の衝撃。



話の切れ目を狙って逃げようとしていた私に、いきなり爆弾を落とすおばあさん。




「私は…」




なんで

なんでこんな目に…


喉の奥が冷たくて、手も冷たくて、なんだか黒い感情のまま、言葉をぶつけた。



「私は、違います!!」



それしか言えなかった…。




そのままトイレに走りこんで泣いた。



情けなくて、悔しくて、つらくて。





なんでわたしだけこんな目に合うの?




私と同じ年の、同じ中学の、同じ地区に住むあの子は赤ちゃんが産まれて…
私は…。




隣の部屋は、友達も呼び込んで大賑わいだった。



たまらずその日の午後に部屋を変えてもらった。





私が何をしたのだろう。
こんな、惨めな思いをしなければならないほどの罪を犯しただろうか。
今まで、真っ当に正直に生きてきた私にこんな試練を課すほど、私の罪は重いの?





神様なんていない。



誰かが言った言葉を思い出して理解した。