私がスイーツデコを始めたきっかけ。


もう15年以上も前になる。
私は当時流行っていた北青山の大バコのクラブで働いていた。

ラウンジのカウンターに並ぶハイチェアー。
そのいちばん隅にずっと座ってるヒトがいる。

「ねぇ。あのヒトだれ?」と中のバーテンに聞く声に棘があったのは
彼が当時付き合っていた彼氏だったから。
そして彼女がとてもキレイだったから。

「ああ。ゆかりちゃん。ランちゃんが今狙ってるbabyだよ。」
ランちゃんとは、彼と一緒のカウンターでバーテンをしてるオーストラリア人。
これまで・・・そして、おそらくこの先もランちゃん以上の“プレイボーイ”に出会うことはないだろう。

「うまくいきそうなの?」
「うーーーん。どうかな。厳しそうだよ。」

ふーん。残念ね。あと2回週末を過ぎたら彼女の顔も見なくなるのかな。
そんな風に思いながら、黒く長いストレートヘアが印象的な美人の横顔を遠くから眺めてた。


ところがしばらくして、ひょんなところから改めて彼女を紹介されることとなる。

「オリエちゃん。俺の彼女。ユカ。」

同じ店の別のスタッフが彼女を落としたのだ。
ランちゃんの怒りっぷりはめちゃくちゃで、もう理不尽なことこのうえなくて笑っちゃったけど、
こうして晴れて“同僚の彼女”として“身内”になったユカ。

この出会いがあって、今の私がいる。



ユカの親友は私の親友だ。

だが何故か私たちはお互いを“親友”と呼び合っていない。

一軒家をシェアして一緒に住んでいたし、
一緒に働いていたし、
そう呼んでもおかしくないくらい何でも話して、
長い時間を一緒に過ごしていたのに。

同僚の彼女
彼氏の上司の彼女
ルームメイト
先生
インストラクター

“親友”と紹介するよりも先に互いを説明しやすいカタガキがあったからかもしれない。
細かい事がどーでもいいO型どうし、
互いの呼び方なんてどーでもよかったんだよね。

そんな私たちだったからルームメイト生活も、抜群の協調性でモメることなく
毎日が楽しくて良い思い出。

でも何よりもその生活が私にくれた大きな変化は
昼間働くようになったことだ。

オフィスワーク経験がない上に、学校でパソコンを習ってない世代の私は
憧れながらも昼間の会社勤めなんてできないんだろう、そんな風に決め込んでしまっていた。

女バーテンなんてかっこいい!とか言ってもらいながらも
このまま朝寝て暗くなってから起き出す、夜の世界しか知らずに歳をとって行くのかななんて鬱鬱と悩んでたりもして、
朝早くから毎朝同じ電車にのって通勤するOLさんに憧れてたりするもんだ。

そんな私の背中を押してくれたのがユカだ。

ExcelとWordくらい使えるように、本を買ってきて自分で勉強するんだよ。
面接で「できます!」って言っちゃうんだよ。
で、出来るように必死で勉強するの。

めちゃくちゃな事言ってるようだけど、
目的をもって転職をしてきた彼女の言葉に説得力がないわけがなく
私はついに10年続けたバーテンから、憧れのOLさんとなったのだ。


ユカほど目的にむかってガンガン進む努力家もなかなかいない。

地元で美容部員をしていた彼女は
東京で生活するために独学でシステムエンジニアになる。

DJもバーテンもしてきた。
彼女がプレイすると一気にダンスフロアが熱くなる。
彼女が手を挙げると、オーディエンスが一斉に手を挙げて歓声がのぼる。
その様を、まるで教祖ね、なんて友だちとからかっていたっけ。

韓流スターにハマれば半年後には韓国語で読み書きすらできるようになる。

そしてスイーツデコ。


娘を産んでシングルマザーになって東京に戻ってきた私が
彼女と再会した時は、もうすでにスイーツデコではかなり有名になっていたユカ。

今、仕事でね、こんなのやってるんだよ。
そういって盛りに盛ったデコ電を見せてくれた。

「原宿で服屋をやってるときはさー、
店のカウンターでホイップの練習とかしてたのに、
いまや先生だもんね」
と、私たちの親友が誇らしげに笑う。

ふーーん。また面白い事やってんね。
相変わらずユカのアンテナの感度はいいねぇ!
なんて言う私にユカが言った。

「オリエちゃんもウチで働きなよ。」

シングルマザーになって、事務職でずっと子供を養っていくの?
自分で起業して、育児と仕事と、時間を上手に使えるようにしようよ。
オリエちゃん器用だし、話せるし、インストラクターに向いてるよ。

こうして再びユカに背中を押された。




みんなが進む道を指し示して導く存在になりたい。

ユカがそんなこと言った時は
へぇ、それはまた大きなことを!なんて茶化して笑ってたけど、
今、こうしてユカの築いた世界で、それを発展させようと頑張ってる自分がいる。

私に限らず、彼女が作ったドルチェデコはいまだに
趣味から起業させたい女性の力になる、というコンセプトで動いていて
そこには沢山の生徒さんが夢をもって通っている。


感謝してもしきれない。

ユカ、ありがとうね。

ゆっくり元気になってね。

また、会いに行くよ。


Happy Birthday Yuka !!!! 


Love from Orie & Ronnah 

31 Jan 2013