新学期が始まって、また夏休み前と同じ教室。
隣の席の真っ黒に日焼けしたA君とは
夏休み中に一度だけ会った。

あれはとにかく暑かった日、
その日は町内の少年野球チームの試合の応援に
学校のグラウンドに来ていた。

相手チームに隣の席のA君がいた。
5番ファーストで出場していた彼の打席は
やっぱり少し気になった。

私はA君を応援していいのかな?
敵チームだからしちゃいけないのかな?

一打席目は三振、二打席目はフォアボール
特に目立った活躍はなかったけど
緑色のファーストミットが目に焼き付いた。

試合はまだ予選で90分を超えたイニングで
打ち切り。私達の町内チームが勝った。

終わって学校を出たところの道路で
A君のチームの人達とすれ違った。
全員くやしそうに顔をうつむけたまま
歩いていたけど、一瞬A君と目があった。

流れ出る汗を拭おうともしないまま
私を睨むように見たその目に驚いて
何も話しかけられなかったし、
A君もすぐまた顔を伏せ、歩いて行ってしまった。


9月になり教室で思い切って、隣の席のA君に
そのときのことを話しかけてみた。
「お休み中、1回会ったよね?」
彼は
「ああ、野球の試合のときね」
と別にどうってことない反応だった。



小学校5年の夏休み。
他にも出かけたり、遊んだりと
いろいろあったはずだけど
何故か今でも覚えてるのはこのことくらい。

毎年この時期になると思い出すので
書き留めてみました。


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