双蝶々曲輪日記[ふたつちょうちょうくるわにっき]どんな芝居? | さきじゅびより【文楽の太夫(声優)が文楽や歌舞伎、上方の事を解説します】by 豊竹咲寿太夫

 双蝶々曲輪日記


ふたつちょうちょうくるわにっき



国立劇場Instagram 2021年9月8日より




作者 : 竹田出雲・三好松洛・並木千柳


初演 : 寛永2年(1749年) 7月24日 竹本座


角書 : 「関取の濡髪/名取の放駒」




メインの登場人物である濡髪長五郎放駒長吉のふたりの「長」を外題の「蝶々」とあらわしています。





長五郎は実際に存在した人物で、史実の長五郎も相撲取りでした。


荒石長五郎と名乗っていましたが、喧嘩口論を好む性格で、濡れた和紙は刃を通しにくいことから、常に額に濡紙を当てていたそうです。


そのことより「濡紙の長五郎」と呼ばれていました。



この「濡紙」から、芝居では「濡髪」となったのです。

*武摂双蝶秘録より


史実の長五郎も難波裏で人殺しをしてしまい、八幡に身を隠しましたが、あえなく捕えられました。





この長五郎を題材とした芝居は「双蝶々曲輪日記」が初めてではなく、享保10年(1725年)に豊竹座で上演された「昔米万石通(むかしごめまんごくどおし)」があります。


この昔米万石通と、近松門左衛門作の山崎与次兵衛をモデルとすると言われている*「寿門松(ねびきのかどまつ)」に影響を受けて、この芝居は作られたとみられます。

*淀屋辰五郎がモデルという説もあります。




全九段。



第一 : 浮む瀬の段


第二 : 相撲の段


第三 : 揚屋の段


第四 : 大宝寺の段


第五 : 難波裏の段


第六 : 橋本の段


第七 : 道行菜種の乱咲


第八 : 八幡の段


第九 : 観心寺の段



現在専ら上演されるのは第八の「八幡里引窓の段」で、全てを通しで頻繁に上演していたのは大正年間まで遡ります。


今では第二「相撲場の段」▶︎第四「大宝寺町米屋の段」▶︎第五「難波裏喧嘩の段」▶︎第六「橋本の段」▶︎第八「八幡里引窓の段」となります。




初演時は「夏祭浪花鑑」との類似点の多さに不評だったようですが、後々徐々に人気を博す演目となっていきました。





初演時の配役



第一 : 浮む瀬

土佐太夫 義助


第二 : 相撲

錦太夫 両助


第三 : 揚屋

千賀太夫 藤蔵


第四 : 大宝寺

上総太夫 弥七


第五 : 難波裏

信濃太夫 義助


第六 : 橋本

大隅掾 両助


第七 : 菜種の乱咲

大隅掾 長門太夫 信濃太夫 土佐太夫 藤蔵


第八 : 八幡

政太夫 藤蔵


第九 : 観心寺

錦太夫 長門太夫 弥七



与五郎 文吾

吾妻 伊平次

与兵衛 門三郎

長五郎 文三郎

長吉 才治

治部右衛門 門三郎








 





 

 

 

 



とよたけ・さきじゅだゆう:人形浄瑠璃文楽
 太夫
国立文楽劇場・国立劇場での隔月2週間から3週間の文楽
公演に主に出演。


その他、公演・イラスト(書籍掲載)・筆文字(書籍タイトルなど)・雑誌ゲスト・エッセイ連載など
オリジナルLINEスタンプ販売中

 

 

 


豊竹咲寿太夫
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