学んできた天草での塩作りの話。 | ~豚飼いと天ぷらカーと子育て~ 桜の山農場のブログ

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地域循環による豚飼い、無農薬有機農法による米作り、可能なエネルギーの自給、、を模索する日々のブログです。
生活の中で思い感じたこと、作ったものや息子の成長記録などを刻んでいけたらと思います。


天草の塩屋さんは、こんな海際の山裾にあります。



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知らないと素通りしてしまいそうですが、陣さんの天ぷらカーの横に小道があり。



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車一台分の小道の奥には、塩を炊くための廃材が丁寧に積み重ねられておりまして。


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その奥に、松本さんがセルフビルドされた素敵な丸太小屋に塩釜があり、ここで塩は作られていました。





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塩焚小屋のすぐ先には、素晴らしく綺麗な海が広がっています。




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引き潮の時にポンプをセットして海水をくみ上げる準備をします。



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ポンプで砂を吸わないように、波に吸い口が踊らされないように石で固定して、塩が満ちてから3時間かけて海水をくみ上げるそうです。




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汲み上げた海水は、これまた松本さんがセルフビルドされた貯水タンクに入ります。





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そして濃縮とあう作業。
これまたセルフビルドされた矢倉に海水をポンプアップし、循環させながら少しずつ海水を濃縮します。




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海水の塩分濃度は3%、太陽と海風の力を借りながら理想は10%まで海水を濃くするそうです。



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この水場には、松本さんが海から拾ってきたサンゴがゴロゴロ。

サンゴは炭と同じように多孔質で、水を浄化する作用があるからだそうです。




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三層ある海水タンクには、汲み上げたての海水や濃縮された海水が大量に入っています。


濃縮中に大雨に降られると、雨水で時には海水よりも薄まってしまう事もあるそうで、塩屋さんは百姓以上に雨雲の動きを常に意識してなくてはならないそうです。

そう、例え深夜でも雨音がしたらスグにポンプのスイッチを止めに駆けつけなければならないとか。


想像以上に大変なお仕事です。




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3%の海水が、手間暇かけて10%まで濃縮されると、ようやく釜に投入されます。

*写真は試し炊きなので、汲み上げたばかりの3%の海水ですが。



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二層目は本焚きの余熱で加温しながらさらに濃縮させるための釜です。


この、濃い濃度の海水が常にぬるま湯状態で365日常に溜まってる二層目の釜が、もの凄く痛むのだそうですが。



じゃあ、ステンレスにすれば良いじゃないかと我々は思うのですが、ステンレスだとお値段がとても高くなる割に、2倍も3倍も長持ちするかと言われると、やっぱりそれなりに痛むし、費用対効果としてやはり鉄釜の選択となったそうです。

それ程に、塩の力は凄まじいのでしょう。



塩の影響を受けない一番理想の釜は銅釜なんだとか。




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10%に頑張って濃縮された海水を焚いていくと、
まず、海水濃度が17~23%でカルシウムが結晶してくるそうです。

このカルシウムは取り除くのですが、結晶化したカルシウムが沈んだところで、それを釜の外の落としに落としてからスコップで取り出すのだと思います。



その後、27%から29%まで塩が結晶化するそうです。

結晶化には二段階あるそうで、カルシウムでも、塩化カルシウムと硫化カルシウムで結晶化するタイミングが違うとか。
膜の張り方とかで、カルシウムの結晶化が終わったことを判断する、、?

塩も塩化ナトリウムと硫化ナトリウムで結晶化するのが違うそう。
塩の膜が出てきだしたら塩の結晶化もおしまい。


そして、投入した海水の1/8くらいのニガリが液体として残り、それらを落としに集めてまとめて木樽へ移して釜焚き終了。


ちなみに、焚き終えたらスグに次の海水を落として、塩釜はいつも火があり稼働してるんだとか。


塩屋さんの仕事は、中々に過酷でした。





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塩釜を焚いてる間、つまり一年中、四六時中塩小屋には海水の蒸気がモクモクしてるそうで、塩屋さんに置いてある あらゆるものは塩害で錆びてゆきます。



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それは、建築材も例外ではなく、釜の上の梁なども長い時間、海水の蒸気にあたりだいぶ傷んでました。


でも、その蒸気を吸ってる人間はとっても元気になるんだとか^_^





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そんな経緯で手間暇かけて結晶化した塩は、ニガリと一緒に2~3日寝かすそうです。


ここで、塩にしっかりニガリ(マグネシウム)を馴染ませることが大事なんだとおっしゃってました。



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最後に、ニガリを切る仕上げの箱に移してこれまた3~4日置いて、ようやく出荷前の塩となるそうです。



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こちらが完成した松本さんの想いのこもった『私たちの体は小さな海  天草の塩』



松本さんのような昔ながらの塩作りをされてる方はとても貴重な存在で、我々がスーパーなどでいつも購入してる塩はイオン交換膜という、ナトリウムだけを取り出して作る塩作りなんだそうですが、そうやって作られた塩にはミネラルやマグネシウムなどは含まれていないそうです。



現代の食生活は、減塩という事が当たり前のように言われてますが、良い塩に食べ過ぎはないと聞きました。


色々難しい言葉でも説明できる話なんでしょうが、この一連の塩作りを知ってしまうと、理屈を通り越してしまう説得力があるような気がしました。









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海水の貯水タンクの横には、天日小屋があります。




この小屋では、焚かずに塩が作られていました。


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ビニールハウスよりもとっても素敵なこの建物の中で海水を濃縮していき、最終的に塩を結晶化させるのです。



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ここでも、木材の腐食が顕著です。

塩ってホントにスゴイですね。


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これが結晶化した天日塩。

釜焚きよりも結晶化がゆっくりなので塩の結晶が大きく、食べた時に柔らかな塩味が特徴なのだとか。


これは釜焚きでも同じ理屈らしく、なるべくゆっくりと結晶化させるとジャリジャリとした、高火力で一気に結晶化させるとサラサラの細かな結晶の塩となるそうです。


解体した塩釜には、カルシウムの結晶が底に沢山付いてましたが、あのカルシウムが熱の伝わりを柔らかくしてくれて、ゆっくりとした結晶化が進むから具合が良いと言う趣旨のことを話されていたと記憶してます。

あと、カルシウムが付着するおかげでシールドとしての役割もして、鉄の釜が塩の影響を受けにくくもなるので、直接焚いてる釜の方が痛みそうなのに長持ちしてたのはその為なのだとか。


塩作りの話、聞けば聞くほど面白い世界でした。



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塩作りの歴史は、昔は全国あちこちの塩田で濃縮して焚いて作られてた時代から、専売公社と言って、いまのタバコのように国が一括して製造、販売していたそうです。

その時にいわゆる昔ながらの塩作りはほとんど途絶えて、イオン交換膜一辺倒になったとか。




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いや、塩というものはただ味を付けるためのしょっぱいだけの物ではなく、海のミネラルを身体に供給するための一番大切な食材であり、イオン交換膜と比べたら効率は悪いかもしれないけれども、昔ながらの作り方で作られた塩が、本来あるべき形の塩なんだと、家族単位で製造可能な小さな、でも持続可能な塩作りの技術を取り戻した先駆者の松本さん。

そんな塩作りの技術を伝えたいと、町の鉄工所ではなくて 自分らしく自由に生きろと日々発信してる廃材天国の陣さんに、あえて塩釜作りをお願いした松本さん。

そして、陶芸家であり廃材建築家で何でも屋だけど、しかし鉄関係や溶接のプロではないのに、鉄板を切り貼りして作る塩釜作りの話しを引き受けた陣さん。


今回の仕事は、そんな2人の生き方から実現しました。 
ちょっとホントに、酒の席でその話聞いた時は感動しちゃったもんね。



松本さんは、海に生かされてることを伝えれる小さな塩屋が各地にいたならば、そこの海を少しでも綺麗に繋いでいける事ができるとおっしゃってました。
綺麗な海を繋いでいくために、塩作りを伝えたいと。

その考え方、生き方に強く感銘を受け、僕もいつか自分の暮らしの塩の自給をして、塩と海の大切さを伝えていける人間になりたいなと強く決意した、尊い学びの報告でした。


今後、必ず我が家で塩作りの施設を建設していきたいと思ってますので、綺麗な海を守るアクションに賛同していただける方は、ぜひに一緒に塩作りの場を作りましょう!