「認知症」がこのところクローズアップされています。わたしの曽祖父も、祖父母も著しい認知症の症状は出ずに亡くなったようですし(いっしょに暮していたわけではないので、伝聞ですが)、いまも身近にはいないけれど、親も自分も(!)もしや…というかんじはいつもあったりして…
妊娠・出産と同じく、いたずらに怖がったり、あふれている情報に右往左往するのではなく、少しずつ知ることからはじめたいと思います。絵本でも認知症をテーマにしたものがあるので、4冊まとめてご案内します。どれもつとめている図書館で貸出されて知ったものです。


hoshi*『おもいではチョコレートのにおい』バーバラ・マクガイア 作・絵 杉本詠美 訳
おもいではチョコレートのにおい/アールアイシー出版

2007年6月発行
ママ、おじいちゃん、犬1匹と暮らしている男の子・ベンの視点から描かれるおじいちゃん。すごく背が高くて昔、ジャンボ機のパイロットをしていたという。女王陛下がお茶においでになるから、と夜の庭でラベンダーをつみ、焼いたケーキにチョコレートでトッピングをする。おじいちゃんといっしょに作業をしているベンはたのしくなる。夜が明けてママはびっくり。笑顔と涙がなんともいえない。
こんなかんじのおはなしが前半、後半は「アルツハイマー病を知ろう」と、アルツハイマー病はどんな病気か、アルツハイマー病になるとどうなるか、詳細が写真とイラスト入りで小学生くらいの子ども(ベンと同年代)にもわかるように描かれている良書。現在は品切れのようですが、こういう本こそ復刊していつでも手に入るようになってほしい。作者は南アフリカ共和国に生まれ、現在はオーストラリアに暮らしている。

hoshi*『おもいでをなくした おばあちゃん』ジャーク・ドレーセン 作 アンヌ・ベスターダイン 絵
おもいでをなくした おばあちゃん/朝日学生新聞社

2011年3月発行
こちらはベルギーの絵本。ペトラがママといっしょに老人ホームにいるおばあちゃんに会いに行く。娘、孫のことをすっかり忘れたおばあちゃん。ホームでのおばあちゃんの様子や会話が詳しく描かれている。自分の娘と、6歳で亡くなった妹を取りちがえている。でも自分が娘に歌った「歌」は覚えている…悲しみだけじゃなく、ママとペトラがおばあちゃんのこと、老いることを受け止める感性がとても素敵。最後はこんなふうに終わります。

「わたしに子どもができて、ママが、わたしの名前もわからないほど 年をとったらね」
と ペトラが言いました。
「ママの前で その子にあの歌をうたわせるからね」
ママは思わずペトラを だきよせました。
「そうしたら、草原の上で いっしょに おどるわ」
ママは そう言って ほほえみました。


hoshi*『あたしのいもうとちゃん』尾崎美紀 作 尾崎曜子 絵
あたしのいもうとちゃん/ひさかたチャイルド

1997年5月発行
階段から落ちて入院、手術をしたのをきっかけに孫のふうちゃんのことをわからなくなってしまったおばあちゃん。妹を欲しかったふうちゃんと、ふうちゃんを姉だと思うおばあちゃん。ふうちゃんを語り部にして描かれている。ショックを受けて、でも受け入れて、めでたしめでたし、となっている。ふうちゃんの妹が73歳だってことは、ないしょ、ってね。せつないけれどあたたかい。すべてカラーで背景や細部までもが力強く描かれた絵がとてもいい。

hoshi*『おばあちゃん』谷川俊太郎 文 三輪滋 絵
おばあちゃん (1982年) (シリーズ・ちいさなつぶやき)/ばるん舎

1982年発行(不明)

孫の男の子の目線から祖母の認知症と家族介護を描いていて、谷川俊太郎さんの詩は英文も併記されている。
うちのおばあちゃんは あかちゃんみたい。
いつもねどこに ねています。

おむつをしています。
ごはんも ひとりでは たべられない。


シュール印象のある三輪滋さんの絵がたまらない。1982年といえば、いまほど介護についていまほど報道などはされていない時期?家庭で介護するしかなかった、というケースが多かったのではないかと想像します。

ぼくは もしかすると おばあちゃんは 
うちゅうじんに なったんじゃないかと おもいます。


男の子の観察力はすごい。さらにつづくことばは

うちゅうじんといっしょに くらすのは むずかしい。
うちゅうじんは にんげんそっくりでも
にんげんとは どこかちがうから。


…ズバリ本質を突いている。こちらもいまこそ復刊してほしい絵本。


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