これからおとなになる若い人に、そして子どもの自分を抱えて生きるすべての人に向けて書かれた吉本ばななさんの書き下ろし新刊『おとなになるってどんなこと?』をご案内します。ちくま書房から発行されている若い人(YA・ヤングアダルト)向けの「ちくまプリマー新書」の一冊です。
おとなになるってどんなこと? (ちくまプリマ―新書)/筑摩書房

2015年7月発行

自分の人生は自分のもの!
と思えるように

《目次》

まえがき
第1問 おとなになるってどんなこと?
第2問 勉強しなくちゃダメ?
第3問 友だちって何?
第4問 普通ってどういうこと?
第5問 死んだらどうなるんだろう?
第6問 年をとるのはいいこと?
第7問 生きることに意味があるの?
第8問 がんばるって何?
インタビュー 将来を考える

目次にある8つの問い。若い人にとっては自分ひとりで考えてもはっきりしたことはよくわからない、というのが実情だと思います。この本で吉本ばななさんが自身の体験を交えて答えています。どれも一般論ではなく自身の体験から出たことばです。

若い頃の体験に加えて「今のわたしならこうする(こう言う)んだけれど」と書かれているところにものすごく共感しました。それはつまり当時の自分といまの自分はちがう、ということ。「人は変わる」というのはわたし自身の実感としてまったくもって強くあるのです。子どもの成長を見ていても思います。ただ、根本にある部分は変わらない。これもまたもうひとつの実感です。

吉本さんはこんなふうに言っています。
人間は、小さい頃から実はそんなに変わらないものなのです。だから人生はいいものなんだけれどね!(13p)

いったん大人になってから、あらゆる場面でもっとも必要とされるのが子ども時代の感覚なんです。それだけが人生を進むための羅針盤なのです。(14p)


「どの職業でもどの年齢でも変わりません」というのが吉本さんならではの深さです。

いろいろな形の友情、年を取ってどんどん楽になり、自分の人生を創造していく感覚、何のために自分は生まれてきたのか。そして自分の将来やりたいことの探し方、自殺が近づいてきたと思ったらどうすればいいか…ぜひとも読んで確かめてください。

これまで体験と人間観察から導かれたメッセージには、説得力があるし嘘もない。必ずや響くところがあるでしょう。どこがどんなふうに自分に響いたか。友人たちとそんな語り合いができたらいいですね。

わたしはその通り、と思うところは多々あれど、う~んと考えてしまったのは、ある程度の年齢になると人間は得意なことに逃げるようになる。そうすると得意なことがだめになっていくというところ(117p)。「得意なことを伸ばせ、深めろ」とよく言われますが、吉本さんが言っているのはそのことではありません。上手くいかないことを得意なことで解消するというサイクルに陥ってしまう、どんどん逃げて得意なことに依存するようになる、という危うさのことです。

吉本さんが大人になったと感じた瞬間、吉本さんが考える自立とは…このあたりも必見です。
あっという間に読めて、この豊かさ。なんとも素晴らしい本です。
「まえがき」の中で、吉本さんはこの本のことをこんなふうに伝えています。
 今からたくさんすぎるほどの言葉を本文で伝えていきますけれど、たったひとつ言いたいことは、
「大人になんかならなくっていい、ただ自分になっていってください」
 ということです。それがみなさんがこの世に生まれてきた目的なのです。
 どうか、それをふまえて読んでみてください。
 今はまだむつかしく思えるところがあっても、いつか思い出してください。きっとこの本は遠い将来までみなさんの力になれると思います。
 気持ちがぶれてしまったときや自分でも自分が信じられないほどに落ち込んでしまったとき、この本を手にとりしばらく読み返せばいつのまにか自分の内面が調律できる、もとの軸に戻れる。
 そういうお守りみたいな本が作りたかったです。
 おまじないをいっぱいかけて、ほんとうにお守りを創るように創った本です。

右矢印おとなになるってどんなこと?スペシャルページ
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