Vガンダム考察 カテジナ・ルース アンチヒロインの肖像 -2ページ目

Vガンダム考察 カテジナ・ルース アンチヒロインの肖像

人が闘争本能のままに生きるのは進化のためにしている事
それは悪ではないのだから

ふたりの間に愛はあったか?あったと思う
もちろん愛なんていうと綺麗に聞こえ過ぎるけど
依存、執着、欲求、本能、それもまた愛の形
でも二人の愛は未熟過ぎた ウッソに理想を押し付けられて怒ってたけど
そんなカテジナも理想をクロノクルに押し付けていた
(ウッソはルペに私の夢!とか言われて迷惑がってました 因果は巡る…)

しかしここでも発揮されるのがクロノクルの優しさ
恋人の求める理想に応えようと頑張ります(カテジナいわく「変ろうと必死」)
野心や冷酷さを見せるようになったけど、ムリしてるっぽい感が否めない
結局のところ「姉さん、マリア姉さん、助けてよ…マリア姉さん」ゴン!
でカテジナに振り回されただけのシスコンとかヘタレなイメージが定着
それでも二人は常に一緒に居たし、最終決戦で司令という立場にありながら
リグ・コンティオで出撃したのもカテジナに応えての事

一方「クロノクル、来い!!!」と恋人を犬扱いとか言われるカテジナだけど
「勝った方を愛してあげる」なんて言ってるくせにちゃっかりクロノクルに加勢する
クロノクルがウッソに敗れて死んだあと 勝ったウッソをブっ刺すわ
味方の投降無線も関係なしでウッソを追い詰める
ウッソ─「カテジナさん…そこまでやるんですか」

狂気と憎悪の狭間にあってもクロノクルの名前を呟くカテジナ
カテジナ─「クロノクル、白いヤツをたむけにしてやる」
二人の間にはちゃんと絆があって愛があった(そう思わないと悲し過ぎる)

「クロノクルという巣を見つけた」
カテジナの言う「巣」には二つの側面があると思う
依存、親が子を育てる場所 それと同時に、女性でいうなら卵巣、男性なら精巣、
性を象徴するものでもある

ウッソと同じくカテジナも実の親との満たされない関係(コンプレックス)が
異性との関係に影響を及ぼしていた

ウッソが求める母性、カテジナに求めた理想の女性像
カテジナはそれを拒絶してクロノクルを選ぶ
カテジナもまた異性に対して父性を求めていたのだと思う
シスコンとかヘタレと言われるクロノクルだが、
カテジナが「巣」と言うからには、カテジナの求める父性に応えていた事になる
そう考えると主人公の敵役としてはヘタレだったクロノクルも
カテジナにとっては求めるものに応えてくれる(応えようと頑張ってくれる)
イイ男だったということなんだろう、と思う
(子は親を超えるものだから、カテジナもクロノクルを超えてラスボスとなったのかも・・・というのは深読みし過ぎ?)

カテジナ─「クロノクルという巣を見つけたんだ!なのにお前とシャクティはそれを笑った!チビのくせに!!」
カテジナ─「クロノクルはあたしに優しかったんだ!!」
このウッソとのやり取りにおけるカテジナの言動は、狂気に蝕まれていく中で
普段は本音を見せないカテジナが生の本音を吐露したもの、と思える
印象としては言ってる事がとにかく子供っぽい
この台詞を、見ため子供なキャラが言えば違和感がないが
カテジナみたいな見ためエロスなキャラが言うと、やたら生々しく聞こえてしまう

カテジナというキャラクターは、大人っぽい外見と軍人として気丈に振る舞う姿
(みたままの姿)によって惑わされてしまうが
一番、内にあるカテジナの芯の部分 その姿
(真の姿)は父を求める少女であったのではないかと思うのだ

コニーがゴトラタンと対峙した時、「女だと!!!」と言い放つ
しかし女と言うにはカテジナは未熟だ
ルペやファラが女の本能のままに戦い敗れた人なら
カテジナは(ルペやタシロに小娘呼ばわりされていた様に)やはり小娘レベル
小娘の本能に従い戦場に立ち、小娘の本能のままに戦い敗れた人である

8章につづく
何の力も持たない自分を変えるための、強化人間というプログラム

第26話で初めてMSに乗って登場してから第48話までのカテジナについて
荒っぽくなった(本来の性格がやや強めに出ている)程度で、
狂気じみていると言うほどの様子はない

:ウッソを追いかけるのに夢中なルペ・シノに対して
「攻撃はリーンホースJr.を誘い出してからです」と苦言を呈している

:ウッソの母を盾にして戦うゴズ・バールに
「やってはいけない作戦というものがあります」と止めている

:姉マリアの戦死を聞き、出撃しようとするクロノクルを冷静に制止している

:利用価値のあるシャクティをカガチに渡してしまっていいのか?
 とクロノクルに進言している

軍人として、パイロットとして
カテジナは冷静に戦況を見極め、的確な判断を見せている

(同じ強化人間でも、ファラは宇宙漂流の影響で精神的に不安定だったため
強化人間の負の部分が強く出てしまっているが
カテジナについては不安定な部分が最小限に抑えられていると考えられる)

しかし、49話の登場シーンからカテジナの様子が変わっている
ゴトラタンに乗り戦場に現れたカテジナには狂気じみたものが感じられる
それ以前のカテジナとは何かが確実に違う…
そして最終話に向け、狂気は加速していく…

最終決戦に入りカテジナがそれまでにはなかった狂気を見せ
徐々に支配されていくのは何故なのか?
答えはエンジェル・ハイロゥにあるのではないだろうか?
エンジェル・ハイロゥは巨大サイコミュ兵器である

例えばサイコミュ・システムによる人格転換と言えば、ロザミアやフォゥ(Z)がいる

<フォゥの場合>・・・普段は安定した様子を見せているが、サイコガンダム(サイコミュ・システム搭載・強化人間専用MA)に乗ると、
サイコミュ・システムの精神干渉波の影響によって人格が変わる

<ロザミアの場合>・・・元々情緒不安定であったが、サイコガンダムMk-IIのサイコミュ・システムが潜在意識に影響を及ぼしており、さらなる精神崩壊を招いた

ゴトラタンにサイコミュは搭載されていないが
強化人間であるカテジナが戦場に出た事でエンジェル・ハイロゥの精神干渉波の
影響を受け、狂気に支配されていったと考えれば説明がつく

何も出来ないお嬢さんである自分に嫌気がさした17歳の女の子の変身願望
だけど危険過ぎた強化人間という選択

強化人間プログラムによってカテジナは望み通りに新しい自分を手に入れた 
ニュータイプとして覚醒し、エースパイロットとして専用機に乗る新しい自分
しかしそれと引きかえに払う代償までは想像していなかったのだろう

7章につづく
自分より小さなウッソが信念(ただ皆を守りたいから戦う)を持ち
非凡な才能と力を持っている事への嫉妬心

カテジナ自身がなによりも嫌う「何も出来ないお嬢さん」である自分を理想化して
「何も出来ないお嬢さん」である事を求めてくるウッソへの嫌悪感
カテジナ─「男の子のロマンスに、何であたしが付き合わなければならないの!!」

しかし変ろうとする自分の前にウッソが現れては
「あなたはウーイッグのカテジナさんでしょう?」、「カテジナさんおかしいですよ!」
と全否定してくるのだ 嫌悪感が憎悪に変わるのも無理はない
カテジナ─「いちいちこれみよがしに強くなって現れる!可愛くないのよ!!」

カテジナ─「お前とシャクティはそれを笑った!」
特別な才能を持たない自分への劣等感から来る被害妄想
ウッソとシャクティが天才タイプなら、カテジナはど根性タイプ
持って生まれた才能なんてなくたって私にも出来る!と突き進むも
その度にウッソとシャクティが目の前をちょろちょろする
「お嬢さんが何いきってんの~超ウケルwww」
てな感じにカテジナの目には映ったのだろう
天才タイプには負けたくないという、ど根性女の意地がある

ウッソ─「お前がカテジナさんを変えてしまった!」
クロノクル─「彼女の望んだ事だ!」
クロノクルは変りたいと望む自分を理解してくれた人 
MSに乗って人格が変わったと言われるカテジナだが
変わったのは人格ではない、元々カテジナはああいう性格
本来の自分をありのままに出せるように変ったというべきだろう

自分を否定せず受け入れてくれたクロノクルをカテジナは「巣」と表現する
「巣」とは依存であり、自分を育ててくれる場所

カテジナ─「クロノクルは私に優しかったんだ!」
でもカテジナが求めたのは優しい王子様に守られてお姫様扱いされる事じゃない
ただ優しい人を好きになって、ついて行っただけならMSに乗って戦う必要はない
シャクティ同様、守られる側にいて自分の手は汚さないヒロインでいればいいのだ
(そうであるなら、ウーイッグのお嬢さんはお嬢さんらしくしてればいいと言う、ウッソやオデロと同じなのだから)

カテジナが求めたのは、ウーイッグのお嬢さんからの脱却である
信念なんてないけどマリア主義を気取ってみたり
MSに乗って戦い、世界を女の手に取り戻すなんてかっこいい!てな感じである
(ザンスカールが目指す母なる社会、新しい世界を見てみたいという気持ちはあったのだと思う)←最初のうちは


6章につづく
カテジナはヒロイン枠でありながら、それを拒絶し主人公に挑む
(主人公のライバルポジションにシフトチェンジ)という異例のキャラクターである
男子が求めるヒロイン像「主人公(男)に助けられ、守られているお姫さま」を演じる事を拒み、敵となりラスボスへと昇りつめる

カテジナが拒んだ典型的なヒロイン像を体現しているのがシャクティ

シャクティはリガ・ミリティアにおいて戦闘に一切関わろうとしない 
マケドニア兵との銃撃戦の中、戦うオデロに銃を手渡すスージィに
「戦争の手伝いはやめなさい」と言うのである
守られる側にいて自分の手は汚さない それが当然であるかの様に
女王の娘とわかってからは自分が戦いを止められると思いこみ暴走するも
結局ウッソに助けられるだけ
サイキッカーという力を持ちながら、その力で戦う事はしない

ヒロインとは本来こうあるべき(自らの手は汚さずヒーローに守られる存在である)と
体現して見せているのがシャクティというキャラクターである

ゲリラという組織においてシャクティは足手まといでしかない
しかしリガ・ミリティアの人達はシャクティに気をつかい配慮する
何故ならエースパイロットを左右する存在だから、シャクティに暴走されたら
エースパイロットが使い物にならなくなる それでは困るのだ

ザンスカールでのカテジナも最初は似た様な立場、クロノクルの女
だがカテジナはMSに乗り戦場に出る

ルペやアジスに「クロノクルの女が」「お嬢さんが」と下に見られながらも
見返してやる!の根性で「なかなかやるじゃん」てな感じで評価を獲得していく
そして着実に戦果をあげ、自身がエースパイロットとなる

ヒロイン像を拒絶し、粉々に打ち砕く事こそカテジナ・ルースというキャラクターの真髄
カテジナを悪い女としか思えない人は理想像を打ち砕かれて泣いているウッソと同じ
「甘ちゃんぼうや」なのである

まあ、初恋の相手である優しそうなお姉さんが顔を歪めて殺しにくるのだから
そんなホラーな展開、子供心にはさぞ戦慄が走った事でしょう
(しかし対極するヒロインでありながら、シャクティもカテジナ同様に悪女として嫌われているっていうのが面白い、二人とも自分の望みを優先し、周囲を顧みないところはある意味そっくり)

5章につづく
カテジナ・ルースを紐解くうえで非常に重要な事
カテジナ・ルースは強化人間だったか否か

強化人間となっていたかそうでなかったかで話は全然変わってしまう
せめてそこだけでも明確に示してくれていれば、こうも迷わずに済んだのに…
私個人としては強化人間というワードが正しいかどうかはともかくとして
(何らかの強化プログラムを受けていた)強化人間であると考える方が自然だと思う
どの様な強化が行われたのかは推測不可能だが
期間はザンスカール入国以降~継続的に行われているものと考えられる

短期間で高いMS操縦技術を身につけている&ニュータイプとして覚醒している
・・・リガ・ミリティア同行時、オデロやウォレンと共に地上砲火を手伝うカテジナだが
撃つのが遅くオデロ達を苛つかせている
天性のニュータイプであったと考えるのは、やはり不自然

ファラの存在とエンジェル・ハイロゥ
・・・ファラの専用機であるザンネックとゲンガオゾは、サイコミュを搭載したMSである事からファラが強化人間である事は確定的
またエンジェル・ハイロゥは、そのものが巨大サイコミュ兵器である
ザンスカールがサイコミュ&強化人間といった技術を持っていた事が確定出来る

専用機ゴトラタン
・・・新米パイロットにいきなり専用機
戦果をあげていたとはいえ、まだまだ経験の浅いカテジナに専用機が与えらた理由も、強化プログラムを受けたうえでの事と考えれば納得出来る
(サイコミュの搭載はないが、過去作品においてニュータイプもしくは強化人間であっても必ずサイコミュを搭載したMSに乗っているわけではない)

ガンダムにおいてこの手のタイプは強化人間と相場が決まってるじゃん
・・・(非常に個人的な見解)

ならば何故カテジナ・ルースは強化人間となったのか?
ただカテジナの全てを「強化人間だったから」で片づけてしまうのは違う

4章につづく